第二十三話「水魅の手料理」
「君たちが水魅か?」
「はい、ご主人様」
五人は揃って頭を下げた。
「そうか」
メイドにご主人様と呼ばれるのは、少しむず痒い。
だが、魔王らしくはある。
「まず、君たちに名前をつけたいんだが、いいか?」
「喜んで」
五人の表情が一気に明るくなった。
「だったら、左から順に……メリ、ビビ、セリ、サリ、エリ。どうだ?」
「あ、ありがとうございます!」
「名前をいただけるなんて……!」
「光栄です、ご主人様!」
五人は目に涙を浮かべるほど喜んでいた。
「ん?」
俺は少し戸惑う。
名前をつけただけで、こんなに喜ぶのか?
「ミル。名前をあげただけで、なんでこんなに喜んでるんだ?」
「この世界では、魔物に名前が与えられることはほとんどありません」
「そうなのか?」
「はい。名前をもらうということは、主に個として認められたという意味があります」
「なるほどな」
ゼキナも、俺が名前をつけた時にすごく喜んでいた。
つまり、魔物にとって名前は特別なものなのだ。
「とにかく、今日は召喚されたばかりだ。君たちには、まず色々教えていく」
「はい!」
俺は水魅たちに、このダンジョンの現状を説明した。
新帝ダンジョン。
俺が魔王であること。
ミルとゼキナが重要な仲間であること。
今は十階層まで完成していること。
そして、俺の目標。
ただのダンジョンの魔王ではなく、いずれ世界の魔王になること。
五人の水魅たちは、真剣な表情で聞いていた。
「なるほどです」
メリが代表するように口を開いた。
「それなら、私たちはご主人様の目標のために全力で働きます」
「ああ、そうしてくれると助かる」
俺は頷いた。
「それで、早速お願いがあるんだけど」
「はい。なんでしょうか?」
「ご飯を作ってくれないかな」
「もちろんです。ですが……」
メリは少し困ったように周囲を見回した。
「ここにはキッチンがありません」
「あ」
そうだった。
俺は今まで食事を全部ショップで購入していた。
料理なんてほとんどしてこなかった元大学生だから、キッチンのことなんて考えていなかった。
「ごめん。今すぐ買うよ」
俺は管理画面を開いた。
「キッチン購入」
『キッチンを購入しました』
『五〇〇ポイント消費』
玉座の間の横に、新しく扉が現れた。
中には広い調理場。
作業台、魔力式コンロ、水場、食器棚。
かなり本格的なキッチンだった。
「すごいな」
「これなら十分です」
メリたちは嬉しそうに中へ入っていく。
「材料も必要だよな」
「はい。何か作りたい料理はありますか?」
「カレーを作ってくれるかな?」
「カレーですね。承知しました」
俺はショップで材料を購入する。
『カレー料理セットを購入しました』
『一〇ポイント消費』
米、肉、野菜、スパイス。
必要な材料が一式現れた。
「では、すぐに作ります」
水魅たちは驚くほど手際がよかった。
メリが材料を確認し、ビビが野菜を洗う。
セリが包丁で切り、サリが鍋を準備する。
エリが水魔法で水量を調整し、火加減まで丁寧に見ていた。
「すごいな……」
料理というより、ひとつの連携魔法みたいだった。
しばらくすると、キッチンから懐かしい香りが漂ってきた。
カレーの匂いだ。
「ご主人様、できました」
テーブルの上に、湯気の立つカレーが並べられる。
「いただきます」
俺はスプーンを手に取り、カレーを口へ運んだ。
その瞬間。
思わず、手が止まった。
うまい。
ショップで買った料理もうまかった。
でも、これは違う。
誰かが作った料理の味だった。
温かくて、懐かしくて、なぜか少しだけ胸にくる。
前世で食べた、普通の飯を思い出した。
「ご主人様、どうですか?」
メリが不安そうに聞いてくる。
俺はすぐに答えた。
「最高においしいよ」
「ありがとうございます!」
五人の水魅たちは嬉しそうに笑った。
ミルも小さな体で一生懸命カレーを食べ、ゼキナも静かに頷いている。
「これは、毎日の飯が楽しみになるな」
「お任せください、ご主人様」
「ああ、頼りにしてる」
俺たちはカレーを食べ終えた。
十階層まで完成し、新しいメイドたちも加わった。
ダンジョンは、ただ敵を倒す場所ではなく、俺たちが暮らす場所としても形を整え始めている。
「今日はここまでにするか」
「はい、タケシ様!」
「承知しました、マスター」
「おやすみなさいませ、ご主人様」
メリ、ビビ、セリ、サリ、エリが綺麗に頭を下げる。
俺は少し照れながら頷いた。
「ああ、おやすみ」
こうして俺は、新しく仲間になった水魅たちの作ったカレーの余韻を感じながら、ゆっくりと眠りについた。
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第二十三話開始時点:11000pt
キッチン購入:-500pt
残り:10500pt
カレー料理セット購入:-10pt
残り:10490pt
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