第十六話「洞窟階層」
六階層。
まだ何も設定されていない、広い空間。
ここをどう変えるかで、今後の防衛力が大きく変わる。
「まずは、どんな階層にするかだな」
「あの、タケシ様。一つ思うことがあるんですけど」
「なんだ?」
ミルが少し真剣な顔で言った。
「一階層から五階層までは、それぞれ違う環境にしましたよね」
「ああ」
「ですが、これからもっとたくさんの階層を作るのであれば、五階層ごとにテーマを分けた方がいいと思います」
「五階層ごとに?」
「はい。例えば、一階層から五階層までは序盤階層。六階層から九階層までは洞窟系。十階層はボス部屋、というようにです」
「なるほどな」
確かに、これから階層が増えるなら、ある程度まとまりを作った方が管理しやすい。
冒険者側からしても、階層ごとに環境が変わるより、一定区間でテーマがある方が油断を誘いやすいかもしれない。
「どうされますか?」
「ミルの言う通りにする」
「ありがとうございます!」
「なら、六階層から九階層までは同じ系統の階層にするか」
「はい!」
「十階層は?」
「十階層はボス部屋にするつもりだ」
「なるほど」
十階層は区切りとしてちょうどいい。
そこには普通の魔物ではなく、強い階層ボスを置きたい。
「でも問題は、六階層から九階層をどんな環境にするかだな」
「それでしたら、洞窟はどうでしょう?」
「洞窟か」
「はい。暗くて視界が悪く、魔物の奇襲にも向いています」
「いいな」
俺は頷いた。
「六階層から九階層は洞窟系でいく」
「はい!」
「じゃあ、まずは六階層を洞窟に改変するか」
俺は管理画面を開いた。
「階層改変、洞窟エリア作成」
『六階層を洞窟エリアへ改変します』
『800ポイント消費』
ゴゴゴゴゴ……!!
地面が揺れ、何もなかった空間が変化していく。
天井が低くなり、壁はごつごつした岩肌へ変わる。
薄暗い通路がいくつも伸び、奥から冷たい風が吹いてきた。
「おぉ……本当に洞窟だ」
「雰囲気がありますね」
ゼキナが周囲を見回しながら言う。
「ああ。かなりいい」
これなら冒険者の視界を奪いやすい。
待ち伏せにも向いている。
「後は魔物ですね。どんな魔物にしますか?」
「そうだな……」
洞窟に合う魔物。
暗闇で動けて、牙や爪で攻撃できるやつ。
「ケルベロスなんてどうだ?」
「ケルベロスですか!」
ミルの目が輝く。
「いいと思います。洞窟エリアなら、かなり相性がいいですね」
「なら買うか」
俺はショップでケルベロスを検索する。
表示されたのは、大型の三つ首の魔犬ではなく、洞窟用に調整された下位種だった。
「ケルベロスハウンドか」
「ケルベロスの下位種ですね。三つ首ではありませんが、嗅覚が鋭く、暗闇での戦闘が得意です」
「なるほど。六階層にはちょうどいいな」
「はい!」
「ケルベロスハウンド百体、購入」
『ケルベロスハウンド×100を購入しました』
『200ポイント消費』
黒い魔法陣がいくつも現れ、そこから黒い魔犬たちが姿を現した。
鋭い牙。
赤く光る目。
洞窟の暗闇に溶け込むような黒い毛並み。
「いいな」
「六階層の魔物としては十分ですね」
「よし、六階層へ配置する」
「魔物転移」
ケルベロスハウンドたちが一斉に消え、洞窟の奥へ散っていった。
「これで六階層は完成だな」
「はい!」
「では、次は何をされますか?」
「まだポイントはあるし、七階層を買うか」
「七階層ですね!」
「ああ。六階層から九階層まで洞窟系にするなら、今のうちに広げておきたい」
「承知しました」
俺は管理画面を操作した。
「七階層、購入」
『七階層を購入しました』
『2000ポイント消費』
ゴゴゴゴゴ……!!
再びダンジョン全体が震える。
新たな階層が生まれ、六階層のさらに奥に七階層への道が形成された。
「よし。七階層も購入完了だ」
「七階層の環境はまだ未設定ですね」
「ああ。それは明日以降にする」
俺はポイントを確認した。
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現在ポイント:3120pt
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「まだ三一二〇ポイントあるな」
思ったより余裕がある。
だが、無理に使い切る必要はない。
「タケシ様」
「なんだ、ミル」
ミルが少し恥ずかしそうに俺を見た。
「その……少しお腹が空いてしまって」
「マスター、私もです」
ゼキナも静かに言う。
「そういえば、今日はまだ何も食べてないな」
朝からステータス確認、六階層の改変、魔物購入、七階層購入。
気づけばかなり時間が経っていた。
「今日は豪華なものにするか」
「やったー!」
ミルが嬉しそうに飛び回る。
「ありがとうございます、マスター」
「二人は何が食べたい?」
「お肉です!」
「私も、それでお願いします」
「女の子なのに肉好きだな」
俺は苦笑しながら管理画面を開く。
「まあ、牛肉でいいか」
「ステーキ三人前、購入」
『ステーキ×3を購入しました』
『102ポイント消費』
テーブルの上に、湯気の立つステーキが並んだ。
「おぉ!」
「いい香りですね」
「よし、これを食ったら寝るぞ」
「はい!」
「承知しました」
俺たちは三人でステーキを食べた。
ミルは小さな体で嬉しそうに肉を頬張り、ゼキナはいつものように静かに、けれど満足そうに食べていた。
俺も肉を口に運ぶ。
柔らかくて、うまい。
異世界に来て魔王になった俺が、ダンジョンの中でステーキを食っている。
冷静に考えれば意味が分からない生活だ。
だが、もう慣れてきてしまった。
「明日は七階層だな」
「はい、タケシ様!」
「洞窟階層をさらに整えていきましょう」
「ああ」
六階層は洞窟エリア。
配置魔物はケルベロスハウンド。
七階層は購入済み。
そして十階層は、いずれボス部屋にする。
新帝ダンジョンは、また一段深くなった。
俺はそう思いながら、食事を終えるとベッドへ向かった。
「おやすみ」
「おやすみなさい、タケシ様!」
「おやすみなさい、マスター」
俺は静かに目を閉じた。
次に作る七階層を考えながら、深い眠りについた。
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開始時点:6120pt
六階層洞窟改変:-800pt
残り:5320pt
ケルベロスハウンド×100:-200pt
残り:5120pt
七階層購入:-2000pt
残り:3120pt
ステーキ×3:-102pt
残り:3018pt
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