第十二話 新装備の力
――次の日。
「ん……」
朝起きた俺は、ぐうっと背を伸ばした。
昨日はアルティアレギオンを購入し、四階層の毒沼エリアの性能も確認できた。
ポイズンオークも思っていた以上に機能していたし、新帝ダンジョンは順調に強くなっている。
「タケシ様!」
ミルが慌てた様子で飛んできた。
「どうした?」
「Bランク冒険者とCランク冒険者が来ています!」
「そうか」
俺はベッドから起き上がり、口元を少しだけ歪めた。
「だったら、昨日買った装備を試すいい機会だな」
アルティアレギオン。
身体能力上昇、魔力増強、魔法威力強化、そして一定以下の物理攻撃無効。
昨日はまだ本格的に試していない。
なら、ちょうどいい相手だ。
「冒険者は何階層にいる?」
「えっとですね……Cランク冒険者が三階層の途中、Bランク冒険者が四階層の入り口付近にいます」
「なるほどな」
Cランクは三階層。
Bランクは四階層。
なら、先に厄介そうな方から片付けるべきだ。
「どうされますか?」
「先にBランクから片付けるとしますか」
「はい!」
「ゼキナ、行くぞ」
「承知しました、マスター」
俺たちは迷宮内転移を使って四階層へ移動した。
◇◇◇
四階層。
紫色の毒霧が漂う毒沼エリア。
そこに、Bランク冒険者のパーティーがいた。
人数は三人。 前衛らしき男が二人と、後衛の魔法使いが一人。
全員、毒対策の魔法をかけているようだ。
「おい、そこの雑魚冒険者ども」
俺はわざと挑発するように冒険者に声をかけた。
冒険者たちは一斉にこちらを見る。
「なに? 四階層の雑魚魔物が喋った?」
「違う。こいつは四階層の魔物じゃない……魔王だ」
「なんで魔王の方から来てんのよ!」
「俺に聞くなよ」
冒険者たちは一瞬混乱していたが、すぐに武器を俺に向けて構えた。
「たぶん、俺らを片付けに来たんだろうな」
「正解だ」
俺は魔剣をゆっくりと抜いた。
その瞬間、アルティアレギオンが反応する。
鎧の胸元に埋め込まれた赤い魔石が淡く光り、俺の体の中を魔力が巡った。
昨日までとは違う。
体が軽い、魔力が体を駆け巡っているように感じる。
まるで体の中を流れる川が、太くなったような感覚だ。
「煉獄斬り」
俺は魔剣に炎を纏わせ、斬撃を放った。
轟ッ!!
炎の刃が毒霧を裂きながら冒険者たちへ飛ぶ。
「防げ!」
前衛の男が盾を構えた。
だが、遅い。
「あああああっ!?」
炎の斬撃は盾ごと冒険者たちを吹き飛ばした。
一撃。
それだけで、Bランク冒険者のパーティーは崩れ落ちた。
「……すごいなこの鎧」
俺自身も少し驚いていた。
前に戦ったBランク冒険者は、煉獄斬りを切り裂き、俺の肩に傷を負わせた。
だが今は違う。
アルティアレギオンの魔法強化と魔力増強のおかげで、攻撃の威力が明らかに上がっている。
「どうでしたか、魔法の鎧は?」
ミルが嬉しそうに俺に聞いてくる。
「ああ、予想以上だった」
「それはよかったです!」
ミルは満足そうに羽を揺らした、するとゼキナが一歩前に出る。
「マスター」
「どうした、ゼキナ」
「三階層のCランク冒険者は、私に任せていただけませんか?」
「Cランクをかできるのか?」
「はい」
ゼキナは静かに頷いた。
「実は、新しいスキルを試してみたくて」
「新しいスキルか」
「はい」
ゼキナはAランク魔物トーチャだ。
しかも魔物召喚スキルまで持っている。
そんなゼキナが試したいというスキルなら、かなり強力なものかもしれない。
「分かった。任せる」
「ありがとうございます、マスター」
俺たちは今度は三階層へ転移した。
◇◇◇
三階層。
通常戦闘階層。
そこではCランク冒険者たちが、オークの群れを突破しながら進んでいた。
「くそっ、オークが多いな!」
「でも四階層まで行けば、情報料としてかなり高く売れるはずだ!」
「油断するな!」
冒険者たちはまだこちらに気づいていない。
その前に、ゼキナが静かに前へ出た。
「冒険者さん」
「あ?」
冒険者の一人が振り返る。
その瞬間、ゼキナは冷たい声で言った。
「死んでもらいます」
「は? どういう――」
「スキル――黒葬」
ゼキナの足元に黒い魔法陣が広がった。
次の瞬間。
冒険者たちの周囲に、小さな黒い穴がいくつも生まれる。
それはまるで、小型のブラックホールのようだった。
「な、なんだこれ!?」
「体が……引っ張られる!」
「いやだ、やめ――」
冒険者たちは叫ぶ間もなく、黒い穴へ吸い込まれていく。
一瞬だった。
数秒後には、三階層にいた冒険者の姿はそこにはなかった。
「すごいスキルだな……」
俺は思わず呟いた。
「ありがとうございます、マスター」
ゼキナはいつも通り静かに頭を下げる。
だが、今のスキルは明らかに普通ではなかった。
Cランク冒険者たちをまとめて消し去る力。
さすがAランク魔物というべきか。
その直後、目の前に文字が浮かんだ。
『新帝ダンジョンの魔王タケシのレベルが10から16に上がりました』
『2000ポイントを入手しました』
「レベルが一気に上がったな」
俺は少し驚いた。
「俺が直接倒したのはBランクだけなのに」
するとミルが説明する。
「タケシ様はダンジョンの魔王です。だから、ダンジョン内の魔物や配下が冒険者を倒した場合でも、その力の一部がタケシ様に還元されます」
「なるほどな」
つまり俺自身が戦わなくても、ダンジョンが敵を倒せば成長できるということか。
「これはかなり便利だな」
「はい!」
現在のポイントを確認する。
昨日の残りポイントは1600
朝の地脈ポイントが四階層分で2000。
そして今、冒険者討伐で2000ポイントを得た。
現在ポイントは五六〇〇。
「それで、タケシ様。次はどうされますか?」
ミルが聞いてくる。
新装備の威力は試せた。
ゼキナの新スキルも確認できた。
なら、次にやることは決まっている。
「五階層を作る」
「五階層ですか!」
「ああ」
現在のポイントなら十分作れる。
「どんな階層にされますか? やはり毒エリアですか?」
「いや」
俺は首を振る。
「五階層は草原でいい」
「草原ですか?」
「ああ。ただし、いろんな魔物を召喚する」
毒沼エリアは四階層にある。
同じような階層ばかり作っても冒険者が慣れてしまえば意味がない。
五階層は広い草原にして、機動力の高い魔物を配置する。
「それなら、いい魔物がいますよ」
ミルが嬉しそうに言った。
「どんな魔物だ?」
「ウルフです!」
「ウルフか」
「はい。ウルフといっても、いろいろな種類がいます」
「例えば?」
「ホワイトウルフ、ダークウルフ、グレウルフなどですね」
「なるほどな」
ホワイトウルフ。
ダークウルフ。
グレウルフ。
どれも草原を走り回るには向いていそうだ。
「どうされますか?」
「全部買う」
「全部ですか?」
「ああ。五階層はウルフ系の階層にする」
俺は管理画面を開き、ショップでウルフ系魔物を検索した。
『ダークウルフ×50を購入しました』
『300ポイント消費』
『ホワイトウルフ×50を購入しました』
『250ポイント消費』
『グレウルフ×50を購入しました』
『300ポイント消費』
合計八五〇ポイント。
目の前に、黒い毛並みの狼、鋭い刃のような牙を持つ狼、群れを率いるような威圧感を放つ狼たちが次々と現れた。
「おぉ……」
合計百五十体。
かなりの数だ。
「これは迫力がありますね」
ゼキナが静かに言う。
「五階層にぴったりだな」
「はい!」
ミルも嬉しそうに頷く。
「では、五階層を作りますか?」
「ああ」
俺は管理画面を操作する。
「五階層、草原エリアで購入」
『五階層・草原エリアを購入しました』
『2000ポイント消費』
ゴゴゴゴゴ……!!
ダンジョン全体が揺れる。
しばらくして、モニターに新しい階層が映った。
広大な草原。
一階層よりも広く、ところどころに岩場や林がある。
ウルフたちが走り回るには、かなり良い環境だな。
「よし。ウルフたちを五階層へ転移させるか」
「はい!」
「魔物転移」
次の瞬間、ウルフたちの姿が消える。
モニターには、五階層の草原を駆け回るウルフの群れが映った。
「これはいいな」
五階層は、今までの階層とはかなり違う。
広い草原をウルフが集団で走り、冒険者を包囲する。
かなり厄介な階層になりそうだ。
「これで五階層も完成ですね!」
「ああ」
だが、まだやることはある。
「次はどうされますか?」
「冒険者に三階層と二階層の魔物がやられてるはずだ」
「はい。ゴブリンとオークに少し損耗があります」
「なら、それの補給を済ませる」
「では早速済ませましょう!」
俺は管理画面を開いた。
『ゴブリン×50を購入しました』
『100ポイント消費』
『オーク×50を購入しました』
『200ポイント消費』
購入したゴブリンとオークを、それぞれ二階層と三階層へ転移させる。
「魔物転移」
ゴブリンは二階層へ。
オークは三階層へ。
これで損耗分の補給も終わった。
「よし、これで今日やることは済んだな」
「はい!」
「五階層も完成しましたし、戦力も増えました」
ゼキナが静かに頷く。
俺は現在ポイントを確認した。
『現在ポイント:2450pt』
「まだ少し残ったな」
「明日になれば、五階層分の地脈ポイントが入ります」
「五階層だから、二五〇〇ポイントか」
「はい!」
つまり、明日の朝には四九五〇ポイント。
かなり余裕が出てくる。
「今日はもう終わりにするか」
「承知しました」
「お疲れ様です、タケシ様!」
俺は玉座に腰を下ろした。
アルティアレギオン。
ゼキナの新スキル、黒葬。
そして五階層のウルフ草原。
新帝ダンジョンは、また大きく成長した。
この調子なら、もっと深い階層も作れる。
もっと強い魔物も置ける。
そしていずれ――。
どんな冒険者が来ても、簡単には突破できないダンジョンにしてやる。
「明日は五階層の様子を見るか」
「はい!」
「承知しました、マスター」
俺はゆっくりと目を閉じ、新たな階層を得たダンジョンの中で静かに眠りについた。
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グレウルフ ー Eランク
五階層に配置された灰色の狼型魔物。素早く、群れで冒険者を囲む。
ホワイトウルフ ー Dランク
五階層に配置された白い狼型魔物。グレウルフより身体能力が高く、統率も取れる。
ダークウルフ ー Cランク
五階層に配置された黒い狼型魔物。影に紛れて動き、奇襲や追撃が得意。
タケシのレベル:16
階層数:5階層
残りポイント:2450pt
五階層:草原エリア
配置魔物:
・ダークウルフ×50
・ホワイトウルフ×50
・グレウルフ×50
第十二話終了時点:2450pt
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