86話 改良の相談
皆様いつもありがとうございます。
区切るタイミングを失い長くなってしまいました。
真っ暗な世界、いつものようにそこで私は意識が目覚めた。直近の記憶を辿り、あの後気を失ったのだと理解する。いつも以上にこの世界が有意義に感じられ、私は状況を整理する事にした。
魔法剣を改良して、謝りに向かいつつ、動作テストを行った。シャーリーに最初試してもらうと切れ味などは素晴らしく、丈夫さも問題なかった。しかし、物に触れた後の魔力吸収が強く、私も試してみることになり、丁度いいタイミングでマリーとラルフが戻ってきた為、マリーの丈夫さを考えれば、マリーが最適だろうと模擬戦形式で試すことにした。久しぶりに嫌な戦いではなく、発散できることから徐々に調子に乗った結果、私は力を使いすぎてしまった。ここからが私の記憶と実際に起きた事の違いがあり、私の中では楽しく戦っていたつもりが、実際は天候操作や広範囲攻撃を行い王都を攻撃してしまった。ここの認識は同じでその後、原初魔法を発動しそうになり、私は何故か理性を取り戻して止めるが遅く肉体に負荷をかけて辺りを魔力暴走の爆発に巻き込んだのだ。
神様が助けてくれて、出来事が起きない模擬戦前に戻し、私に起きた記憶を流す。それにより未来に起きた記憶を受け継いだ反動で痛みを受けることになった。その後、体力低下で意識を失ったのだろう、神様だから時間を戻せると考えればある程度は納得できるけど、本当にそうなのだろうか、現状を考えればその通りなのだが、私一人に何故そこまでしてくれるのだろうか、神様も特別に対処したような話し方だった。
記憶を受け継いだ反動も魔力が逆流した時に受けた体内を焼き焦がす痛みと頭がかき混ぜられるような痛みを同時に受けた事から、単純な時間の巻き戻しでは無いと思うのだ。
何れにしても神様のおかげで私は過ちを犯さずに済んだのは間違いなく、神様が最後に話していた魔力が二層ある事が懸念点となる。これまでに魔力切れで倒れることがあっても魔力を使いすぎた事で暴走した事はない。近い話では命のやり取りで勝手に身体が動いた事はあった。あの時も尋常じゃない魔力や魔法を使ったことから今回と無関係では無いと思う。
魔法剣から始まった騒動だが、早い段階で知れた事は良かったのかもしれない、後は魔法剣の改良を完成させつつ、同じように私自身、魔力制限を施した方が良さそうに思えるのだ。
「それにしてもあの時の感情を思い出すと怖い…私はマリーを壊していいと感じて近くにいたシャーリー達も気に留めない状態だった…私の考えと正反対の感情…一体何があるの」
考えても怖い、自問しても答えは出ない。私の中で私に語りかける存在も肝心な時は反応がなく、必要ない時に反応がある。知りたい探求心も真実を知る事が怖いと思ってしまうのだ。
「現実では騒動になってるよね…起きるの嫌だよ…」
確実に面倒な事が起きているだろうと、私は真っ暗な地面に寝転がり、ゴロゴロ転がる。正直意味のない行為だが、心が安らぐように感じる。
「リディア…リディア…私を勇気づけて…」
リディアに依存しているように感じるが、リディアは私の安らぎになっている。一緒にいると心がポカポカして楽しくなる。会えない時間が長いと不安になり、王都の騒動中は胸がザワザワしていた。学園に通うと寮生活のはずだから、会えない時間が増えてしまう。最初はリディアがマリエルの代わりとして接していたが、今は違う。リディアとマリエルどちらも私の中では大切だ。この話をし出すとシャーリー達も含まれる為、よくわからないけど、リディアは特別なのだ。
「よしっ!当面のやる事は決まったし、やる気出てきた!」
頬をパチンと叩き気合を入れる。実際は夢のような空間なので、起きた後にやる気を出す必要があり、あまり意味はない行為だ。
真っ暗な世界が徐々に薄れ、覚醒の兆しを感じると目を閉じて意識を現実に戻すのだった。
「ここは…王城の部屋かな?」
最近見慣れた天蓋が見えた事で、王城のベッドに寝かされていた事がわかった。身体の痛みは引き続き発生しているようで、起こそうと動かしたら全身に痛みを感じた。
「いっ!!無理…」
そのまま再度ベッドに身体を預けて頭の動く範囲で部屋の中を見ると、椅子にシャーリーが座ったまま目を閉じて寝ているのが分かった。その様子から私のそばにずっといた事を察すると、自分の行為に虚しさと悲しさを感じて自然と涙が出てしまった。
「私…ダメだね、一瞬でも皆を巻き込んでもいいと思ったなんて…」
神様の力で無かった出来事、しかし、私の記憶には残っている為、その行為を思い出すと悲しくなってしまうのだ。
「アニエスお嬢様…良かった!目が覚めたのですね!」
私は後悔から涙を流しているとシャーリーが起きて、若干寝ぼけた状態だったが、私の顔を見るとハッとした表情で近寄り「お身体はどうですか?」と気遣う言葉を言うのだ。
「シャーリーごめんね…私…ごめんね…」
最近一段と涙もろくなっている気がしつつ、シャーリーに謝り続けたをシャーリーは「どうされたのですか!」と私の謝罪の意味がわからない為、動揺していた。
「意味わからないよね…だけど謝りたかったの」
私はそう伝えると痛みを忘れて身体を起こそうとするが、激痛で呻き声を出してしまい、再度ベッドに身体を預けた。
「痛いの忘れてたよ…」
シャーリーは私の尋常じゃない痛みの様子から大至急、治療院の人を呼んでくると言う為、外傷ではない事と、治癒で回復する現象ではない事を伝えて落ち着かせた。
「本当にお身体は大丈夫なのですね?」
「私が一番よくわかるから大丈夫、筋肉痛みたいな感じかな?」
この痛みの原因は薄々わかっている。記憶を戻した時の頭に発生した痛みは既に感じない事から別の原因で、そうなれば考えられる可能性として未来の身体に発生した出来事が、今の私に起きているのだと思っている。正直考えられない事で、説明すらできない現象だが、そもそも時間を巻き戻した時点で既に超越した出来事だ。それから考えれば、この痛みの原因は些細な事だ。原初魔法を止めた際に身体へ魔力が無理矢理戻り、体内の魔力が乱れ傷ついているのだろう。外傷というより心傷に近く、肉体的な損傷なら感知する為、特別は心配していなかった。
「まだ深夜ですので、朝までお身体を休めて下さい」
「うん、そうするよ、シャーリーも疲れてるでしょ?ベッドで寝た方がいいよ」
シャーリーも部屋を与えられているはずが、私の知る限り、この部屋に戻ってくると先程のように椅子に座り寝ている。間違いなく身体の疲れは取れないと思いそう言うが、シャーリーは「いえ、私はアニエスお嬢様のお側にいると、疲れが取れますので気にしないで下さい」と意味不明な事を言うのだった。
シャーリーがそう言う為「おやすみ、シャーリー」と声をかけて目を閉じ朝まで眠ることにした。
窓がなくても朝を身体が感じるのか、自然と目が覚める。当然のようにシャーリーは起きていて「アニエスお嬢様、おはようございます」と先に声をかけられた。あの後、ずっと起きていたのではないだろうかと感じつつ、言っても否定する事を知っている為、朝の挨拶のみ伝える事にした。身体の調子を聞かれたので、ゆっくり起こすと痛みはまだ残っているが、激痛は無くなり、動かす事には問題ないと伝えた。
「えっとあの後って、どうなったの?」
「アニエスお嬢様が急に意識を失った後の話でしたら大変でした。いつもの無茶とは違い理由が分からない上、呼吸が荒く鼻血が止まりませんので、治癒を使える者を王城から手配したり致しました。原因不明と言うより身体は異常なしと言われてどうしたものかと、鼻血は少し経つと止まりましたが、意識は戻らない状態だったので、皆様に報告しようか迷ったほどです」
シャーリーの話を聞いて身体の状態が危なそうに聞こえたが、損傷箇所はない事を聞いて安心した。そして、お父様や国王陛下に報告する話を聞いて恐る恐る報告をしたのかと聞いとみると「本来はするべきですが、後でアニエスお嬢様が拗ねる可能性があった為、朝まで様子を見て身体に異常があるなら報告する予定でしたね」とまだしていない事で安心した。
「あっ、そうだった。魔法剣改はどうなったの?」
「改造した魔法剣でしたら、回収して部屋の隅に置いてありますよ」
他の人が使うと危ない武器なので、持ってきてくれた事に感謝を伝え、同時に改造ではなく改良と訂正をした。意味的には改造でも良かったが、私的には改良と表現したかっただけだ。
シャーリーに着替えを手伝ってもらい、朝食を食べに向かう。朝食をしっかり食べて身体に栄養補給をした後は、魔法剣の相談をする為、王城内の客室に向かった。シャーリーも今日一日は一緒に行動する事になり、二人で客室にいるはずのアルテアに会いに行く、魔族領の魔法道具や研究が進んでいる事から魔力制御の仕組みも何かあるのではと思ったからだ。
「シャーリー、変じゃないよね?大丈夫だよね?」
城内を歩いていると人がすれ違うたびに頭を下げてくれる。慣れる事が難しいと思っている一つだが、それよりも違う意味で止まってみられているのではと思ってしまうのだ。
「アニエスお嬢様、似合ってますので大丈夫ですよ!」
シャーリーは自身あるようにそう言うのだが、疑心暗鬼になる原因はシャーリーが気持ちを切り替える際の方法という事で、髪型を変えて服も拘りの服という防御力は皆無なデザイン重視を着させられた。髪型はツインテールにした結果、誰かわからない状態に近く、迷惑をかけてしまった罪悪感から受け入れたのだ。
客室がある方へ向かうと同じような部屋が並ぶ中、近くにメイドもいない為、確認ができなかったが、魔力眼を使うと異常な魔力が漏れる部屋を見つけて、ノックを行った。
「アルテア様いますか?アニエスです。少しお話できませんか?」
ノックを行い部屋の中にいるであろうアルテアに声をかけると「アニエスちゃん!遠慮せず中に入ってきてよ!」と元気な声が聞こえた。
失礼しますと言葉を言いつつ、中に入ると少し前に見た違和感があるアルテアが近くに待ち受けて、私に飛びつき抱きついてきたのだ。
「アルテア様!!く、苦しいです!」
「おっと、ごめんごめん、久しぶりでついね、アニエスちゃん全然会いにこないから寂しかったよ。それと、アルテアお姉ちゃんだよ?ってアニエスちゃんだよね?」
多忙という事で少し暴走気味になっているアルテアに飛びつかれてしまった。そして少し疑問に感じながら私の事を聞く為「えっ、そうですけど、何故」と返すと「全然雰囲気違ったし、今後もその方が可愛いからいいと思うよ」とニコッと笑い言われてしまった。そして怒涛の質問責めをされると最終的に何故会いにきてくれないのかという話題に変わった。魔王と言う事もあるが、一番は忙しく動いているで、今日は休みという事をシャーリーに調べてもらった事もあり、会いにきたのだ。
しかし、いきなり締め倒されるとは思わなかった。私がソファーに座るとアルテアは「美味しいお菓子手に入れたけど、食べるよね?」と言い反射的に「食べます!」と返したらシャーリーが「少しは遠慮してください」と言われてしまった。シャーリーはお返しにお茶を淹れてくると言って一度部屋から出ていくのだった。
「最近の話?ああ、王都の復旧具合の事なら問題ないよ。ラキアがよく分からないけど張り切って色々してるみたいだけどね」
こんな風に接していると特別感を感じないが、アルテアは魔族領を治める魔王で配下がかなり居る。今回の事後処理の際に王城の中庭に集まり指示を出していた時は、凛々しくカッコ可愛い魔王様と話題になったほどだ
ツノがあった方が私的には好きだが、国王陛下とお父様達から出来るだけ隠して欲しいと言われ隠している。この状態では翼もなく、普通の女の子にも見えるが、左右色が違う目や魔力が抑え込んでも流れ出る為、普通と違う事がわかるだろう。
「アニエスちゃん聞いてる?ぼーっとしてるけど大丈夫?」
「すみません、少し考え事をしてました。それにしても魔族領って建築関係も進んでいますね。あれだけ壊れていた王都が殆ど直ってますし、王城内もまるで何事もなかったように直しましたよね」
アルテアの事を考えていたので、上の空だったらしく、この事を話したらどうなるか予想しやすい事から話を逸らした。実際、私も驚くほど直りが早く、ゲームに存在したような高速建築のような勢いで、国王陛下も驚いていた。
「ボクが魔王の座に着いてからは少なくなったけど、魔族領は闘争が多いんだよね。そうなると巻き込む気がなくても建物や道が壊れたりするから直す事や作る事に関しては進んでるのかな?」
その話を聞き、新しく物を生み出すには一度壊した方が良いとどこかで聞いたような言葉を思い出した。そうなると私が魔法剣を改良したのも間違ってないのかもしれないと正当性を考えたのだ。
シャーリーが戻ってくると、高そうな金の装飾が付いたカップに特別の茶葉を使用したお茶を淹れてきた。アルテアは四角の箱を奥のテーブルから持ってくると「これが魔族領で新しく作られたお菓子」と言って私達の前に置いたのだ。
「四角の箱の中に小さな四角が沢山入ってますね。なんと言うお菓子ですか?」
最初に持ってきたのは鉄を使い作ったと推測できる箱、おそらく外部からの衝撃を緩和する為だと思う。蓋を開けると中には様々な色が付いている小さな四角の食べ物が一部を開けて並んでいたのだ。
「えっと、確か砂糖菓子と言うやつだね。色によって味が変わるから好きなだけ食べてね」
王国では甘味料は高く、お金を持つものは沢山使う事で財力を示したりする。実際はたくさん使えば不味く、邸で食べた時は甘すぎて驚いた。メイド長がお手製で作ったクッキーが私には丁度良い甘さな為、砂糖菓子と聞くと身構えてしまう。一画が空いている事と本人が美味しかったという事から既に味見を終えているようで、自信満々に美味しいと言うことからどれにしようかと五色ほどある為、迷ってしまった。
「アニエスお嬢様、はしたないですよ」
指を使い迷っているとシャーリーに指摘をされてしまう。アルテアは私をフォローするように「ボクもラキアに同じ事して怒られたよ」と笑顔で言うのだ。
食べる順番を迷っても仕方がないので、シャーリーに選んでもらいお皿に乗せてもらう。指で持ち上げると、クッキーより柔らかく少し力を入れるだけで崩れそうな変わったお菓子を口へ運ぶ、口の中に入れるとあっという間に溶けて無くなり、口の中いっぱいに丁度良い甘さと果物だろうか、独特の味が合わさりとても美味しかったのだ。
「ん〜♪おいひぃ〜♪」
つい美味しさが口から言葉として出てしまい、シャーリーに再度注意をされたが、このお菓子の謎が気になり、次の色を口の中に入れた。
「喜んでもらえて良かったよ。シャーリーちゃんも食べてね。」
度々、シャーリーの事をちゃん付けで呼ぶアルテアにシャーリーは恥ずかしそうな表情で呼び捨てにして下さいと言うのだが、アルテアは「ボクから見ると皆年下だからね」という理由からいつも呼ばれている。全員をそう呼ぶ事はなく、一定の人に対してつけている事からシャーリーの反応が楽しく弄っているのは間違いない、実際シャーリーは呼ばれるたびに顔を赤くして恥ずかしそうに答えるからだ。
五色全て味が違うとはどうやって作っているのか知りたくなる。聞いてみても「ボクが作ってるわけじゃないからね。お店で聞いても教えてもらえないと思うよ」と言われてしまった。不思議なお菓子にシャーリーの特別なお茶、これも茶葉が特別らしく香りが良いのと、甘いお菓子の後に飲むと爽やかな気分になり、優雅なひと時を過ごしたのだ。
「それで、アニエスちゃんはボクに用があるんだよね?」
満足して要件を忘れたまま帰りそうになる私にアルテアはそう言う。それを聞いた事で、危うく忘れかけていた目的を思い出した。見てほしい武器がある事を伝えると、次元収納から魔法剣改を取り出した。
「これは…普通の魔法武器に思えないね」
取り出した魔法剣改をテーブルの上に置くと、アルテアは両目を使い本質を見ながらそう言い、手に取っても良いかと聞いてきた。勿論大丈夫と伝えると握り持ち上げて、様々な角度で全体を見たのだ。
「魔法剣と言うより、魔力剣の方が正しいのかな?魔力の伝達が良すぎて並の魔法武器とは比べ物にならないね。それに刀身に浮かぶ魔法文字、ルーンかな?見た限り材質と重さが釣り合ってない、軽量化も組み込まれてるみたいだね」
私は使い方を伝えていないが、本質を見抜き魔力を流して刀身を大きくしたり、小さくしたりと魔力の放出を確かめていた。そして、魔法文字の事をルーンと口にした事で、私の知っているルーンと違い確認をする事にした。
次元収納から紙とペンを取り出して私の知るルーン文字を書いてみると、アルテアは「それは遥か昔に存在した文字だね。正確には神代文字だったかな、本にもほとんど載ってないけど、ラキアが研究してたから覚えてるよ。神代文字を元に安定させた文字をボク達はルーン文字と呼んでるんだ」と言う為、驚愕の話を聞いてしまった。
私の知るルーン文字が神代文字で、それを元に作り直したのが魔法剣改に浮かぶ現在のルーン文字、冷静に考えればゲームの世界と言うより、あの時代は今から考えればそう呼ばれていてもおかしくはない、一つ気になるのは神代文字、私が知っていたルーン文字を何故そのまま使わず、新たに置き換える必要があったのだろうか、とても気になり聞いてみると、ラキアが詳しいらしく、アルテアは神代文字が強すぎる為弱めて安定化させたのが今のルーン文字としか知らないと言うのだった。
私が欠陥的な箇所を言う前にアルテアが「この付与だと危険だね」と指摘をした。そのままアルテアは魔力を刀身に放出する仕組みに上限がない事、上限がない為、握り発動させ続けると使用者の魔力を吸い続ける事を見抜いたのだ。
「よく分かりましたね、今日伺った理由は魔力制御をどうするかという相談です」
物を攻撃していない状態でアルテアの魔力を吸っている為、刀身が大きく魔法剣改は震えだした。魔力眼を発動させると、放出する角に向かい魔法剣の表面を腕から魔力が伝っているように見えた。アルテアはもう片方の手を魔法剣改に翳すと私の魔力眼でも一瞬しか見えない黒い魔力、おそらく闇属性の魔法を当てると魔力の放出が止まった。それを確認するとテーブルの上に魔法剣改を置き、唸るように考え込んだのだ。
「ボクなりに考えてみたけど、思いつかないや、ラキアなら分かるかもだけど、魔族領に戻ってるんだよね。この出鱈目な武器はアニエスちゃんが作ったの?」
「私が改良しましたが、大元は元々存在する魔法武器ですね」
アルテアの問いに私がそう答えると再度唸って考え込んだ。
「ちょっと試しにボクの普通じゃない魔力を注いでみるけど、何か起きたらアニエスちゃん、皆を守ってね」
唐突にアルテアがそう言う為、私は何をする気なのと言おうとしたがそれよりも先に魔法剣改にアルテアが口にした普通じゃない魔力を注ぎ始めたようだ。
凄く真剣な顔をしてアルテアが言う通り、魔力眼を使っても辛うじてしか見えない淀んだ魔力、私は恐ろしさと初めてみたはずが、どこかで、淀み気持ちが悪い魔力を見た事がある気がした。それを考える前に何が起きてもいいように椅子から立ち上がり、シャーリーを庇うように前に立った
「うっ!!もう少しでわかるから…」
苦しそうな声と表情を見せるアルテア、魔法剣改に淀みが溜まり、放出されるはずの魔力は中で集まるように濃くなっていた。
変な感覚と共に皆の感覚で言うなら一瞬、私の感覚では十分な時間で魔法剣改から淀んだ魔力が刀身放出ではなく、爆ぜるように散る。音はせず、黒い魔力が魔法剣改から広がるように部屋を満たすと、すぐに白い光が魔法剣改から後を追うように同じく部屋を満たした。二つの光は対消滅するように消えて無くなると長いように感じた一瞬の出来事は何も起きなかったと思うほど、痕跡を残さずにアルテアが吹き飛ぶだけだった。
「アルテア様!!」
爆ぜた時に吹き飛び、部屋の壁にぶつかるアルテアに私は声をかけながら近寄る。シャーリーも一緒に近寄り、大丈夫かと確認をするとアルテアは「大丈夫だよ、擦り傷すらないから安心してね、ははっ!やっぱりそうなんだね」と嬉しさと悲しさが混ざるような表情で言うのだった。
「一体あれは何ですか?魔力も見づらかったですけど…」
私は何が起きたのかを聞いてみると、アルテアは「説明し難いんだけど、ボクの身体には皆が言う所の魔力と別に特別な魔力が流れてるんだ。使うには集中する必要があるのと、凄く疲れるから普通は使わない、さっき使った理由だけど、その魔法剣に似た力を感じたから共鳴するか確認したかったんだ」と説明をしてくれた。
つまり、普通と違う魔力の為、本来機能する刀身放出が行われず、中で溜まり飛び出したような感じだと思う。一応、聞いてみるとそんな感じと言ったので合っているはずだが、それにしてもあの魔力は何だろう。
「アニエスちゃんには驚く事が多いけど、まさかあの魔力が見えるとはね。さっき言った通り、普通の魔力とは違うから見える人は居なかったけど、何か秘密でもあるのかな?」
アルテアはそう言うと、私に近寄り、顔を近づける。紙一枚ぐらいの間しかなく、少し動けば顔と顔が重なるほど近づき、アルテアの甘い匂いを強く感じた。果物?花?甘く懐かしくも感じる安らぐ匂いに何故か、私は心臓の鼓動が早まり、硬直したように動けなくなったのだ。
「ごめんごめん、冗談だから!そんなに顔を赤くされるとボクが恥ずかしくなっちゃうよ!」
アルテアは笑いつつ離れたが、私のドキドキは収まるまで時間がかかった。椅子に座り直し「驚く事はやめて下さいね」と顔を膨らめて言うと冗談混じりに次からは宣言してからやる事にすると言われてしまった。
「今ので確信したけど、アニエスちゃんが行った魔法の付与は問題ないと思う。ボクの知る付与じゃない事は確かだけど、しっかり区別して発動してるから問題ないね」
アルテアは先ほど確認した理由の詳細を話してくれた。どうやら、私の施した刻印が魔力に対して過剰反応するか確認したようで、特別な魔力を送っても刀身に放出しない事から正常動作していると言う。そして、魔法剣を手に取った時に微弱だが、魔力が高まる感覚をした事から魔法刻印ではなく、魔法剣自体に何かあるのではと思ったようで、本来の魔力ではなく、特別な魔力を送ったと言う。結果は魔法剣の中で高まり、共鳴した事による魔力放出が発生して吹き飛んだらしく、私に黒い魔力と白い魔力が見えなかったかと聞いたのだ。
「一瞬でしたが魔法剣改から黒い魔力のようなものが溢れて部屋を覆いました。その後に白い魔力のようなものが同じく広がり混ざり合うと消えてなくなったように見えたのかな?一瞬ではっきり見えなかったので、少し曖昧ですね」
私は聞かれたら事にそう答えると、アルテアは「いやいや、しっかり見えてるよ。ボクも同じように見えたから間違いないかな、何が言いたいかと言うと魔法剣にボクの特別な魔力の元、原典の一部が使われてるって事だよ」と少し偉そうに言うのだ。
シャーリーは一瞬の感覚だったようで、魔力も見えなければ、気がついた時にアルテアが飛んで壁に当たっていたと答えた。
「適応がないと見えないし、感じないから変じゃない、むしろ見えないのが普通で一瞬の出来事と感じるのが当たり前なんだ」
魔法剣の素材は確かに謎だった。可能性が高いミスリルではなく、伝説級のオリハルコンでもなかった。並の素材で属性を宿す魔力に耐えれるはずもなく、普通ではない事は感じていたが、ここで原典の話が出てくるとは思わなかった。それと、聞いていいか分からない為口にはしないが、あの特別な魔力が原典の力とするなら、それを出せるアルテアは一体何者だろうか、そして、適応者は見て感じ取れるという事なら私は何故見えたのか、大元となる原典、あの超現象を起こした魔法道具、やはり気になるのだった。
お読みいただき、ありがとうございます。
ブクマ、いいね等の評価ありがとうございます!大変感謝してます!
角がなく、普通の服?を着ているアルテアは人と変わらない見た目です。
読みやすくしたいはずが長くなってしまいました。




