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前の世界で運営者に消されたNPC姉妹が新しい世界で生きて行く  作者: あいか
序章 この世界で妹と再会するまで
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85話 模擬戦と暴走

皆様いつもありがとうございます。

途中で切るタイミングを失った結果長くなりました。

前から話している全体編集の際に短く分割をする予定です。

 地面に落ちた魔法剣改を近寄り拾うことにした。


「ふむ、何が原因だろうか、試してみよう」


 近寄る人達に危ないから離れるよう伝えると、地面に落ちた剣を拾い、私は徐に魔力を流した。その様子を見たシャーリーは「危ないです!」と言うが、私の身には特別な異変は起きていない、シャーリーと同じく、刀身が可視化された濃い魔力で満たされ、魔力の刃が形成される。飛ばないように握りしめて振り回すと、広い場所でできたこともあり、室内の感覚とは違い軽くまるでペンを振り回すように楽だと感じた。


「私で試した時は魔力の異常吸収は無かったの、シャーリーはいつ頃異変が起きたか覚えてる?」


 私がそう聞くと、シャーリーは「的を粉砕した時から変でした。正確には魔力の刃が的に触れた辺りからでしょうか」と答えた。それを聞き、もしかするとと言う考えから、試してみた方がいいと思い、シャーリーにお願いすると同じように的が用意された。


「考えが合ってるなら、重なる斬撃!」


 シャーリーと同じ技量を何もせず出すのは難しい為、なるべく同じように縦と横を同時に攻撃する剣技を使い的を切断した。シャーリーは元々私の事を知ってる為驚かないが、知らない者達は驚きの声をあげていた。


 私の予想通りに攻撃が当たった瞬間から身体の魔力を無理矢理吸い取られる現象が起き始める。その感覚から間違いないと確信すると腕から手にかけて意識を集中させ魔力の流れを無理矢理止めた。


「欠点というか何と言うかだけど、分かったよ。私が斬れ味を強くするために魔力増加と魔力効率を高める刻印が原因だね。攻撃が触れた瞬間に刀身に流れる魔力は一瞬弱まる、そこで更に強くしようと魔力を吸い上げ、剣の斬撃が終わるまで、時間にするなら一瞬の間に触れた時間分魔力をより奪う状態になってるの」


 魔力眼と自分自身に流れる魔力から私は間違いないと思い言葉にした。私の説明に皆が口を開けるような表情で何も言わない間が正直辛かったけど、すぐにシャーリーは「そ、それだと危なくて使えないです!」と言うが、すぐ後に「それならアニエスお嬢様は今どうやって…」と抑えている事が気になるようだ。


「腕から手に流れてる魔力を体内で抑えて、手から柄に流れないように操作してる状態だよ」


 魔力操作の応用だねと私が言うと、「聞いた事ない」、「出来ないと思う」等、悲しい言葉が聞こえてしまう。少し涙目になりかけつつ、「ちゃんと鍛錬すれば皆できるようになるんだよ…」と伝えた。実際、これが出来なければ、魔法武器にどうやって魔力を安定供給させるのだろうか、と疑問すら起きる。直感で魔力を送り振るうのは危なく、自ら調整する必要がある。魔法全般、発動を満たす魔力を送り、強さを変える事もできるが、それも話として伝わっていないのだろう。


「操作云々は一旦置いて、さっき私は魔力増加の話したけど、触れた分、正確には弱まった分を補う以上取り込むって事はその分威力が増すって事になるね」


「それはつまり、攻撃すればするだけ魔力をより吸われる代わり、強くなり続けると言う事でしょうか?」


 シャーリーがそう言うので、私は「その通りかな?」と言う。自信がないのはあくまで憶測、試してないからだ。


「限界に達すると魔法武器も魔力暴走が起きるのでは…」


「ミスリルを全体に使ってるのと、大きい魔石も組み込んでるから多分限界を越えることはないと思う。常に魔力を放出する仕組みじゃなければ怖いけどね」


 溜め込み続ければ危ないが、この武器は角のような場所から魔力を放出し続ける為、限界を迎える時は放出できない時しかあり得ないと思っている。皆もわかってくれたのか、ガヤガヤ聞こえて耳を澄ませるとミスリルという言葉に反応しているようだ。


「アニエスお嬢様、ミスリルは希少金属です…本来は他国からの取引のみなのですよ…」


 シャーリーがこっそり私に聞こえるよう伝えた事で意味を理解した。前も貴重と聞いていたけど、そもそも錬金で作るのが普通で、天然を取ろうとするなら魔力の濃い場所に長年晒されないと難しく、現実的には岩竜などを倒すしかないと思う。何れにしても私と皆の考えのズレを理解すると、「間違えです!ミスリルではなく、鋼です!」と大きな声で訂正して、シャーリーにこれで大丈夫と伝えた。


「さっき伝えた事を検証したいけど、危ないから人払いってできるかな?」


 鍛錬中に申し訳ないと思いつつ、確認しなければシャーリーの言うような魔力暴走を起こす可能性も僅かに存在する。このまま行ってもいいけど、何かするたびにガヤガヤと声が聞こえる可能性を考えれば人払いが良さそうに思えたのだ。


 しかし、周りからは見させて欲しいという声が多く上がり、悩んだ私は「静かにする事、見たことは誰にも言わない事を約束いただければです。破ったら自害した方が良かったと思える悲運がその身に起きますけどいいですか?」とやる気はないけど脅しを含めた言葉を言う。一連の流れを見て、その可能性を想像したのか震える者も居たが、王国騎士団として逃げずに約束を守り、見届けたいとの事だった。少し予想外だったのはメイドも見させて欲しいと言った事だった。約束を守ってくれるなら問題ないので、皆の立ち位置を巻き込まないように離れた位置を支持して移動してもらう。


「後は相手か的か…召喚スクロールでドラゴンという手もあるけど、下級は簡単に終わるし…」


 振るう相手をどうしようと迷っていると、ふわふわ飛ぶマリーとラルフが一緒に近づいてきた。


「マリー返しにきたぞって、シャーリーこれは一体…アニエスお嬢様も何故?」


 朝から他の場所で、マリーの攻撃を盾で防ぐという防御特化の鍛錬を騎士団に行っていたようだ。それを終えたラルフがマリーと一緒にやってきた。元々、防御の後にマリーの硬さを利用した攻撃の鍛錬を行う予定だったようで、私は簡単にマリーとラルフへ説明をすると「そう言う事で、マリー宜しくね!」と伝えた。


「ちょっと待ちなさい!今の流れでどうして私が的役なのよ!」


 マリーは猛烈に抗議してくる為「マリーはとても丈夫でマリー以上は居ないの、凄いマリーにしか頼めないの、だからお願い!」と頼むと「仕方ないわね」と了承してくれた。マリーは褒めれば大抵許可してくれるからいつものように伝えたのだ。


「じゃあ、俺はもしもの時のために大盾で守れば良いんだな?」


 ラルフにそれを頼むつもりはなかったので、心配ないと伝えるも私の実験に良い記憶がないらしく、疑い深いまま「何かあれば大盾で守ってね」という話で纏まった。


「アニエス、私は耐えるだけでいいのかしら?」


「避けるつもりで動いて、反撃してもいいよ、即死系はなしね。私は攻撃魔法は使わず、補助魔法だけにするからね」


 最初は耐えるだけしてもらおうと思ったけど、ラルフが受け止めてくれる事や最近の王城幽閉で溜まるストレスを発散させる事を考えた結果、実戦形式で行う事を提案する。マリーも分かったと言い、禍々しい大剣は使わないと宣言した。


装備装着(エクイップ)!内包してる普通の剣や魔法は使うわよ、ちゃんと避けないと怪我じゃすまないから気をつけるのよ!」


 マリーは可愛い服から銀の鎧に装備を変更すると空間に穴を開けて腕を取り出した。大剣は使わないだけで本気な為、私に注意警告を行うと、シャーリーが横から「アニエスお嬢様に怪我させたらバラバラにしますから…」と殺気を含めてマリーに伝え、周囲を冷やすほどヒェッと感じる空気に変わったのだ。


「ま、まぁ、私の防御を貫ければだけどね!」


 とは言ったものの、腕輪をしている為、ダメージをある程度肩代わりできるマジックリングで耐えれるのだろうかという疑問がある。もしもの時はシールドやマジックシールド、ダメージコンバートで魔力で相殺するしかなさそうだ。


「アニエスお嬢様は防具は身につけないのですか?」


 シャーリーやラルフは見慣れているので違和感を感じていないが、騎士の一人は私の服装を見てそう言う。説明するのは大変だしと思うと「この服は特別な服なので大丈夫です!」と伝えた。


「アニエスからどうぞ」


「アビリティブースト、アジリティ!」


 余裕を見せるマリーに俊敏さを魔法で引き上げて、更に身体能力を魔力で底上げする。魔法剣改を握り、止めていた魔力の栓を外しググッと吸い取られる感覚を感じながらマジックソードと同じように構えた。


「加速斬撃!」


 速度を引き上げた状態で、高速剣技を発動させる。自身の素早さを剣の威力に足す事ができる為、高威力に変わり、離れていた間合いを瞬時に詰めて一閃を放つ。


ガキン!!


 本来聞こえそうもないような重い金属音が大きく鳴り響くと、後方へマリーは飛ばされた。今の一撃はかなり強いと思ったが、マリーの鎧は頑丈で、傷を付けて威力により吹き飛ばすのが限界のようだ。


「なんて重たい攻撃するのよ!私じゃなければ即死よ!」


 何やら怒っているようなマリーは叫びつつ、空中を高速で移動して、展開している腕を自由に操り、見た目から想像できない速さでフック攻撃を行う。速度を上げた状態の私はある程度、ゆっくり見えるので、余裕を持ち避けると、避ける先に四本の片手剣が浮き、タイミングをずらした斬撃が発生した。


 身体を無理矢理捻ると髪が切れるぐらい寸前の所で避けた。そのままペンより軽い魔法剣改を振るうと四本の剣を斬り刻む。おそらく鉄の剣だが、抵抗なく切断できる事から威力は増している。最初の加速斬撃と今の攻撃分で更に強く魔力が吸い取られ、少しふわっとする感覚を覚えた。


 お互い交互に攻撃をし合うような状況になり、私は次々と無属性の時に使える剣技を使い、それを避けるか受けるかで吹き飛んだり、少し鎧が欠けたりするマリーは闇属性の魔法や次々と空間の裂け目から武器を取り出し投擲したり、遠隔で操り、腕を含めた読みにくい攻撃を行う。それに対して危ない攻撃は避け、問題ないのはシールドやマジックシールドで防ぐと言う攻防が繰り広げられた。


「アニエス、そろそろ負けを認めてもいいのよ!」


「私はマリーを作った親同然、言うなら創世者!負けるわけにはいかないよ!」


 楽しい、命の取り合いという一連の出来事と違い、心の底から楽しめる模擬戦に感じる。マリーが本当に強くなっている事を認識しつつ、私の溜まっている戦闘欲を発散できる事が嬉しく思える。いつか全力全開の私とマリーは戦えるかもしれないと思えるほどだ。


「ふふっ、この高揚感、戦いの中にしかない気持ちの昂り、楽しい!」


 いつもなら口に出す事がないような言葉を気がつくと喋っていた。


「アニエスは本当に戦いが好きなのね」


 マリーはそう言うが、元々私の好きな事は戦闘なので今更だ。マリーを強化した事でこれほど楽しめるとは、魔力もいつも以上に引き出しやすく底を感じない、今なら極大魔法を使ったり、鎧を召喚しても大丈夫な気がする。だけど、それでは楽しい時間がすぐ終わってしまう為、少しでも長く楽しませてもらおうと思った。


 打ち合うたびに魔法剣改の強さが増すことを実感する。それは魔力を多く奪われることにつながる為、本来は避けなければならないが、今日は調子がいいらしく、魔力減少による気持ち悪さ等がまだ起きていない。速度を引き上げている私の行動に的確な攻撃と反射速度で避けられることで、更に魔力を体に流した。


「マリー、速度が落ち始めてるよ!あの魔法使わないの?」


 マリーが次々と取り出す剣を弾き落として、その勢いをマリーの体に叩き込む。魔力の放出が強まり威力も上がる魔法剣だが、マリーの体に傷がつく事はなく、重たい金属がぶつかるような音しか出なかった。


「防御が高すぎない?まぁ、その方が長く遊べるから私は好きだけどね」


 加速斬撃や踏み込み高速で魔法剣を動かし、クロスさせた斬撃を体に当ててマリーを吹き飛ばすと、マリーもやられっぱなしが嫌なのか、ついにバリアブルソードを発動させた。


「アニエス、うまく避けなさいよ!」


 マリーは片手だけではなく、両手に高密度の魔力で作られた純粋な魔法剣を形成させると、器用に横振りと縦振りを左右で分けて私に攻撃を行った。バリアブルソードと言う名は変幻自在の剣として付いた名前で、刀身の大きさも自由に変更可能、それだけではなく、宙を斬りつければ魔力でできた刃を飛ばす事も可能な万能型、その為扱いは難しいのだ。


 横振りは長く伸びた刃が飛んでくる為、避ける事は難しく、姿勢を低くして避けると縦振りを地面の上で転がり避けた。そのまま手と足に力を込め、強く飛びすれ違い様にマリーへ攻撃を行う。マリーは片手で防げないと思ったのか、両手の剣を使い私の魔法剣改を受け止めた。


 これほど楽しめるとは思っていなかった。

 楽しい、終わらせたく無い、だけど、負けるのも嫌だ。

 マリーがどれだけ耐えれるのか見てみたい。

 壊れても直してあげるから、試させてね。


 私は心の中で、そんな事を思っていた。


「楽しい!!最高だよ!!折角だし、魔法剣技を見せてあげるね!」


 魔法耐性がなければ武器が壊れて使えない、元々魔力を放出するような魔法剣は各個別剣技に変わる為、使い所が少なく、派手さ以外は誇れる点が少ない剣を使う魔法だ。


「アニエス!そんなに魔力を送ったら流石に危ないわよ!」


 マリーが何やら言っているが、危険性はない為、続行して魔力を剣に込める。杖で行う事を剣で行い、剣を媒介に魔法を使う。なかなか説明しにくい為、伝えるより、受けてもらった方がいいと思ったからだ。


「我が剣に宿るは浄化の力、闇を切り裂き魔を穿て!降り注ぐ光剣(シューティングソード)!」


 剣に貯めた魔力を使い杖の応用で空に放つ、空高くに放たれた魔力は周囲へ広がると、光を発しながら無差別に光る魔力の剣を空から降らせ始めた。


「大盾!皆を守って!!何考えてるのよ!アニエス、危ないわよ!他の人を巻き込む気なの!!」


 何故、マリーは怒っているのだろうか、楽しくないのかな。今も防ぐ事を想定しての攻撃で、威力を減らし追加効果も使っていないと言うのに、まだマリーには付き合ってもらうつもりだ。


「壊れたら直してあげるから安心してね?舞い飛べ、光剣!」


 空から降らせた事に怒っているならと横振りで宿した魔力から魔法でできた光剣を作り、マリーに向かって無数に飛ばした。マリーは大きな腕を使い防ぎ「冷静になりなさい!」と大振りの攻撃を行う。それを避けると剣による攻撃が行われ、私は避けずに左腕で受け止めた。


「ふむ、私のマジックリングで相殺しきれないのか…」


 魔力が上がった今、マジックリングの防御はどれほどだろうかと言う実験を行うが、肉まで到達せず、皮を切る程度だった。それにより、魔力が上がってもゲームの仕様通り完全無効とはいかないようだ。


「アニエス、何で腕で受けるのよ!傷つけるつもりなかったのに血が出てるわ、様子も変だし、もうやめましょ!」


「何言ってるの?実験の一つだよ?こんなに楽しい遊び、やめれるわけないでしょ!」


 私の攻撃を防いで反撃も行うマリー、相手が人ではない事で命の心配をせずに攻撃ができる喜び、楽しくてたまらない、魔法剣改が私の魔力を吸い取るたびに身体の奥から痺れるような感覚、魔力がこれほど引き出せるとは思ってなかったけど、戦いの中でしか分からないものだ。


 そんな状態で更に攻防を繰り返すと、何度も攻撃をしている事で、魔法剣改に吸われる魔力が強すなり、痛みが発生し始めた。


「ア、アニエス!大丈夫なの!?」


 急にマリーが動揺したように声を出すので「まだまだ!大丈夫だよ!」と言うと「血が鼻から出てるわよ…」と答えた。私は感覚がなく、片方の指で確かめると、確かに鼻から血が流れ地面にポタポタ落ちていく、止まらない鼻血が出ていた。


「アニエス、やめましょう!」


 マリーは気遣うように中止しようと言う。異常さにシャーリーも気がついたのか「アニエスお嬢様、おやめ下さい!」と声が聞こえるが、この楽しい戦いを終わらせたくないのが本音だ。ふと私はいつから戦っていたっけ?という気持ちが悪い感覚を感じたが、すぐに頭の中から疑問は消えるとそろそろ名残惜しいが終わらせようと思った。


「わかった、なら最後に全力をぶつけるよ!」


 無意識に制御している魔力の枷を外し、この一瞬でいいから私が失ったあの時の私をこの場に作り上げる。


 意識を集中させて、全ての感覚を研ぎ澄ます、時間感覚が引き延ばされ、無駄な処理を避ける為、今必要ない身体の処理は全て止める。一瞬の一撃に全てを込める。それだけでいい、昔の私を取り戻したい、無限に思える力を一瞬でいいから、全てを凌駕する力を使いたい、我儘な私だ!


「創世の光、終焉の闇、この一時は我が力の枷を外す、原初の力で虚無の彼方へ消え去れ!」


 際限なく身体から魔力が溢れる気分、痛みも含めて戦いの楽しさ、魔力が高まり魔法剣改に吸われ続けると角の場所から放出する魔力が増えた事で元々、少し大きな片手剣だった刀身も大剣より大きく形を変え、黒い魔力と白い魔力が一つの剣に宿る事で、反発した魔力が空間を歪めバチバチと爆ぜる音を発生させた。


 この感じ、身体から力が溢れて周囲を壊す、魔力だけで周囲の空間を支配する因果を捻じ曲げる力、全てを支配する根源の魔法だ。


「原初魔法、混沌…なっ!だ、ダメっ!!」


 私は何かの温かさを感じると同時に詠唱を終え、魔法名を呟くだけで発動する完成した根源を無理矢理押し留めるように魔法を途中で止めて、魔力の流れを捻じ曲げる。膨大な魔力が逆流した反動は激しい痛みと全身に魔力循環の乱れを起こし、至る所から血が噴き出る。それでも逃しきれない魔力は暴走するように私を中心として爆発を起こした。


 私自身も吹き飛び、耐え難い痛みの中、皆の心配をすると、無意識で発動したのか、シールドが張られシャーリー達はその中にいるようだ。マリーは爆発の直撃を受けたはず「後で直すから、ごめんね…」と呟くのが私の限界で、そのまま意識を手放した。


 私は一体…

 何が起きたの…

 違う、何をしたの…

 あれ?思い出せない…


『アニエスちゃん、貴方、世界を壊すつもり?自殺願望でもあるの?貴方も消えてなくなるし、世界に穴が空いて皆死んじゃうのよ?』


 真っ暗な世界で気がつき、困惑する私に天の声、神様の声が頭の中に響いたのだ。

 

 体が怠く痛い、夢の中だろうか、夢ぐらい痛みを感じたくないと思いながら、神様と言葉を交わすことにした。


「神様、お久しぶりです。私は…一体何が起きたのですか?」


 神様に聞く事ではないはずだが、自ら思い出せない欠落した記憶、直前としてはマリーと模擬戦を行う所から途切れている。神様は『時間の逆行?巻き戻し?何でもいいけど、アニエスちゃんは大変な事をしたのよ』と理解できないまま、神様は教えてくれた。


『アニエスちゃん、戦いに夢中になるのは人それぞれだから止めないけど、守ると誓った人達を自らの手で汚したら貴方、もう二度と立ち上がれなくなるわよ』


 神様はそう言うと思い出してみて、と私の頭の中に欠落した映像のような記憶が送られる。そこにいた私は嬉しそうな表情でマリーと模擬戦と言うより、まるで殺し合いをするかのようなギリギリの戦いをしていた。途中、何度かマリーが剣を引いた箇所があり、そのままだと私が大怪我をするからだ。私はそれを望むように問題ないと判断した箇所を犠牲に相手を倒すかのような動きをして、止めに入ろうとしたシャーリー達をシールドで物理的に囲み動けなくした状態のまま、周囲の空間を乱れさせる魔力で戦っていた。何度も何度もマリーが私を必死に呼ぶ声、私はそれを笑いながら戦う狂乱した姿、それを私は脳内で確認していた。


「何これ…私なの…」


 涙が流れて止まらない、私が私じゃないような感覚で動いている姿。夢を第三者として見るような状態だろうか、更に最終的に原初系統の攻撃を使おうとした所で身体の魔力が全て無くなり止まったようだ。


 それでも周囲の天候を狂わせ、雷撃を降らせながら、直した王城を壊す私、表情は嬉しいのか楽しいのか、ニヤニヤと笑っていた。


「違う…こんなの違う!!私じゃない!!何が起きたの!!」


 あの時の記憶が戻ると、私自身の身体がどう動き何をしたのか思い出した。しかし、その中で天候操作や広範囲の破壊行動を行った記憶もなく、シャーリー達にシールドで閉じ込めるような事もしていないはず、記憶が複数あるような気持ち悪い感覚を理解できなかった。


 身勝手な話だが、私の取り戻した記憶では最後の危険な魔法を発動させる瞬間、あれより前の記憶が自ら行った行動とは考えれなかった。


「何で、私、テストするだけだったのに、危険な事をしちゃったの」


 頭を両手で押さえて、涙を流しながら、自問自答する。

 時折感じる戦闘欲、戦いの最中、相手の命を奪おうと考えてしまう一瞬、あの時のような私じゃない私の感覚だった。


『アニエスちゃん、落ち着きなさい、今回は私が見ていたから止めたわ、本来は禁則行為だけど、ほんの少し時間を巻き戻して、戦闘直後に戻した上、アニエスちゃんの意識を奪ったわ』


 頭がぐちゃぐちゃになりそうな私に神様はそう言うのだ。


『今回時間干渉を行った事で、次は助けれないと思うから、気をつけなさい。私から一つ忠告をするなら、魔力を使いすぎない事ね。アニエスちゃんの魔力は二層式なの、本来は一層分の魔力が無くなれば魔力低下で意識障害を起こすのだけど、きっかけ次第で二層目の魔力栓が開くと、また今日みたいなことになるかもしれないわ、世界の時間を戻した上で起きた未来の記憶を知った以上、起きた後に記憶混濁と身体の同調で、少し痛みを感じるから罰として頑張りなさい』


 どう言う事?私の身体に知らない事があるのは間違いなく、神様は濁したが確実に知っている。それに会った時聞きたい事を考えていたはずも頭の中からその部分だけ抜けて思い出せない事も含め、気になり声に出したいが、現実に戻される覚醒感に負けてしまうのだった。


「アニエス!アニエス!!」


「マリー?あれ…私一体…何が起きたの?」

 

 私に近寄り叫んでいたマリー、シャーリーの顔が開いた視界に映り込んだ。


「アニエスと模擬戦をしようと話してたら急にふっと倒れたのよ!しかも鼻から血が沢山出て、止まらないまま意識が無くなるから皆大慌てよ!」


 マリーの話を聞き、断片的に記憶を思い出した。何かズレている感覚、身体中が重たく痛む、魔力の流れが鈍い、流れるだけで全身がズキンズキンと痛みを起こした。


「うっ!一体…何が…」


 痛みから声を漏らしてしまう。痛みで記憶が呼び起こされるようにズレている記憶がゆっくり戻る。割れそうな痛みと、魔力の疼きから私の声とは思えない叫び声を上げながら、地面の上で暴れるように足掻いた。


 皆は暴れる私の動きを止め、様々何かを言ったようだが、気に留める余裕はない、未来の起きるはずだった記憶、それを過去の私の記憶と合わさるのは、まるで頭の中を切り開き、かき混ぜられるように痛く気持ちが悪い感覚だ。


「はぁはぁ…も、もう大丈夫…何これ…こんな事って…マリー、シャーリー、私は魔法剣改はどうしたっけ…」


「アニエスお嬢様!もの凄く痛がり暴れて大丈夫なはずないです!魔法剣は一旦考えないで下さい…お嬢様に何かあると私は立ち直れなくなりますから…」


「ごめんね、シャーリー…」


 私が変な事を言った事でシャーリーは心配し、他の皆も同じく心配したように言葉に出した。これで私の記憶、正式には頭の中にある記憶と言うべきだろうか、その時と今のズレが認識できた。ぼやっとした言葉で魔力を使いすぎるなと言われた事は思い出せる。この時間のズレと言うべきか、私は一体何だ…


 考えるより全身の倦怠感と痛みから、私の身体は回復する為に意識が闇に飲み込まれたのだった

お読みいただき、ありがとうございます。

ブクマ、いいね等の評価ありがとうございます!やる気が更に高まる気持ちです!


長々と一つの出来事を書いてしまいましたので、次は簡略化される予定です。

魔法剣改は魔力で刀身を増やし大きくなる剣を想定して、通常時は普通の剣としても使え便利です。

アニエスは夢中になると暴走しやすいのかもしれません。

今回長くなりすぎ、少しでも内容が伝われば嬉しいと思ってます。

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