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前の世界で運営者に消されたNPC姉妹が新しい世界で生きて行く  作者: あいか
序章 この世界で妹と再会するまで
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69話 広間の攻防

皆様いつもありがとうございます。

 

 少し時間が経つと周辺の熱さはおさまり、溶けた床は冷え固まると独特の空間を作り上げていた。

 

 「もう大丈夫かな?あの魔法は永続的じゃないから発動後は徐々に冷めてくから、美味しそうな見た目になったね」


 複数のバグが溶けて固まり作られた物、それをツンツンと突きながら皆にそう言った。


 「アニエスお嬢様、流石にその発言はおやめ下さい」


 私が虫の魔物だった物に対して言った事で、引いてるらしく、視線が痛く感じた。

 アルテアも、流石にそれ食べるのはちょっとどうかと思うよ。と言う私は冗談のつもりで言ったのだが、本気にされているようだ。


 「流石に冗談だよ!虫の見た目食べるわけないでしょ!」


 そう言うと、アニエスお嬢様なら。とか、アニエスちゃんは食べそう。とか言われ、私の事を皆がどう思っているのか、一度時間を作り確認した方が良いのかもしれないと思った。


 さて、どの方向へ向かおうかと考え言葉にした。本来なら進む先は決まっているが、扉の先が違う場所に繋がってる今、元々のルートを進んでも思った通りには進めないと思ったからだ。


 私は皆に意見を聞くため、玉座の間に繋がる通路を背にしていると、誰かいます!と言うシャーリーの声にパッと振り返った。


 「クソッ!俺の虫が倒されるなんてな!呼び出し応じないし、一定の場所に集まったと思ったら何でこんな事になってんだ!」


 溶け固まった死骸を見つめながら呟く男が居たのだ。

 先程辺りを見た時には居なかった男、どこから現れたか分からないが、見慣れない服を着た黒茶色の髪をしている。


「確実に今までいなかったよ!一瞬で現れたけど、ボクもよく分からなかった。アニエスちゃん普通の人間じゃないと思う!」

 

 急に現れ独り言を言う男に対して、アルテアは危険と判断し私に告げた。


 呟いた言葉を私は聞き漏らしてないので、城の人とは思えないが念の為、シャーリーに確認した。


 「あの服は軍事国家、テトラルキアの将校が着る軍服という物です!あり得ない…どうしてこんな所に…」


 今まで見た事ないほど驚く顔でシャーリーがそう言うとサーシャは、今すぐ取り押さえた方が良さそうですね。と剣を構えた。


 「ええ!この場にいて良い者ではないのは確か!捕まえて話を聞きます!ラルフ、アニエスお嬢様を守りなさい!」


 シャーリーもサーシャに同意するようにそう言うと魔法剣を構え飛び出した。

 続けてサーシャがフォローに向かい、ラルフは私の前にサッと身を動かす。

 対話を試みたかった私はシャーリーを止めたかったがその前に突撃してしまう。


 アルテアとラキアはあの男が何者か分からないようで、状況から察する事にしたようだ。


 シャーリーは捕まえ話を聞く為、致命傷を避けて攻撃する様に手足に対して魔法剣を振るが、男は軽々避けた。

 死角からサーシャはナイフによる投擲をするが、避けると一瞬体がブレたかのように消えシャーリーを蹴り飛ばし、次にサーシャも易々と蹴り飛ばした。


 「この国は野蛮な連中が多いじゃねぇか、俺の虫をこんな目に合わせやがって、死にテェのかクソどもガァ!!」


 怒りを顕に強めの口調で男はそう言った。

 聞き間違いでなければ、俺の虫と言うのは溶けた死骸の事つまりはバグの事を意味するのだろう。


 「何!貴方は何なの!!急に現れて…」


 敵という事は間違いないが、前に出会ったアルクやナイフ使いとも違う気配を感じる不気味な男に問いかけた。


 「なんだガキじゃねえかよ、今俺は非常にイラついてんだよ!俺の許可なく話しかけんじゃねぇぞ!!」


 先程より大きな声を出し、更に怒りを顕にした。


 「うぐっ、中々の蹴りですね…アニエスお嬢様、お下がり下さい…」


 シャーリーやサーシャが攻撃を仕掛けなくても対話で対処する事はこの男の言葉から無理だろう。

 

 「溶けて死ね!アシッドミスト起動!」


 男は軍服の内側から青い液体が入った瓶を取り出すと、そう言いつつ床に投げつけた。

 アシッドミストという言葉に該当する魔法は私の知識に存在しない、だが言葉の意味としてアシッド、つまり酸と判断して直ぐにシールドを発動した。

 魔法と分かればマジックシールドでも良かったが、魔法以外には対処力が低く、それならばと総合的な守る力を持つシールドを選んだのだ。

 シールドの耐久値を強硬にするか迷ったが、硬くすれば外側は見えなくなり、何をされるかわからない現状だと危険と感じ、視界確保ができる半透明の耐久値が少し低いシールドだ。


 シールドを展開と同時に割れた瓶から液体が広がり、すぐに蒸発すると霧が発生する。


 シールドの外側が霧に覆われると、ジュッという溶けるのか焼けるのか判断がつきにくい音が周囲から聞こえ始めた。


 「アニエスお嬢様、ありがとうございます。助かりましたが、これは一体…」


 シャーリーに続きサーシャも私に感謝を伝え、私はアシッドミスト、酸の霧を知っているかと皆に聞いた。

 アルテアとラキアは酸の事を知っていたが他は酸も知らず、酸を知る二人もアシッドミストという言葉は聞いたことがないと言った。


 「アシッドミストねぇ…ボク達が知らないだけで魔法として存在する可能性はあると思うけど、一定空間を侵食する魔法を簡単に使えないと思うんだよね」

 

 「知らない魔法という可能性は確かにありますが、私の目には魔力を感じ取れませんので、魔法であれば隠蔽効果がある高位魔法と推測致します」


 アルテアの言葉に続くように両目を光らせたラキアはそう言った。

 シールドを展開した後、周囲の霧を確認したが魔力は感じ取れないらしく、ツノによる探知でも分からないそうだ。


 「ラキア様の言う通り、おそらく魔法じゃないと思う。そうなるとどうやって作ったんだろ…瓶の液体…液体はあの時すぐに蒸発してた…」


 私の魔力眼より強いラキアの魔眼で見れない事、それは魔法ではなくなる為、起きた現象を呟きつつ状況を纏めた。

 頭の隅に何か引っかかる事があるのだが、思い出せず額に手を当てながら唸っていると、その仕草で頭痛を発生させたのではとシャーリーは心配した。


 「考えてただけだから大丈夫だよ。何か引っかかるけど、思い出せないの…」


 大丈夫と伝えるとシャーリーはホッとした表情を浮かべた。


 「少々気になる事があります。先程、あの者が手に持っていた瓶、中の液体は禁域の一部領域に発生している酸の湖と色が酷似しているのです」


 ラキアはそう言うと、酸の湖を簡単に説明した。

 異界にある禁域の森、その奥地に入ると溶ける湖、酸の湖があるようで、二人が酸の事を知っていたのもそれ故のようだ。

 不定期だが、酸の湖は周囲に霧を発生させて、その霧は木々や魔物を溶かしてしまう程強力と言うのだ。


 私は短期間の間でゲームの知識が通じない事は理解している為、ラキアからの話に驚く事はなかったが、それ程強力な酸を瓶に詰める事がこの世界でできるのだろうかと思いラキアに聞くと、私達では採取は如何なる方法でも出来ませんでした。と言う。


 この間も常に溶けるような音がする為、サーシャとラルフは心配なようで何回も大丈夫なのかと聞くのだった。

 その度に大丈夫だよと言うのだが、信じてないのか落ち着かないようだ。


 自然に消滅するかわからない霧、魔法なら解除もできる可能性があるのだが、現実は対応策が思いつかなかった。

 そうなればできる事は1つで精霊に力を貸してもらうしかないと思うと皆に提案するのだった。


 「現状で対策は思いつかないので、精霊の力を借りようと思うの。それで皆には精霊の事を他の人に話さないって約束して欲しいの、いいかな?」


 シャーリーや前もって話を聞いているラルフはすぐに承諾すると、サーシャは魔法教会の信仰する1つに精霊信仰があるようで、精霊をこの場で見れるなら何でもします!と興奮気味に承諾した。


 「ボクも特に言いふらす気はないから、秘密でって言うならそうするよ。ラキアもそれでいいよね?」


 皆に続く様にアルテアとラキアも承諾するが、二人の反応がこれまでと違う気がする。

 それとなく聞くと、ボク達にとって精霊は少し特殊なんだよ。とだけ言うとそれ以上は話さなかった。

 少し引っかかりを感じるが、今議論している場合でもないので精霊を呼び出す事にした。

 今この場に適するのは水の精霊、ウィンディーネしかいない。他の精霊と違い、水を用いた補助、回復、浄化を扱えるので、霧とはいっても元は液体である限り、ウィンディーネが一番だと思うからだ。


 創世の杖を取り出すと前方に浮かせた。

 シールドから杖を出せば全て解決するのではと思ったが、防衛機能を考えると危ないので考えを止める。

 私の取り出した杖をサーシャは何か感じるのか真剣に見続け、アルテアとラキアは驚きを隠せず、声に出した。


 「アニエスちゃん…その杖は一体何なの…膨大な、膨大どころじゃない力が溢れてる杖、人の身で持つのは危険な杖だよ…」


 「アニエス様、後程、私達にお知恵をお貸し下さい。私達はこの事を他言無用にしますので、どうか宜しくお願いします」


 焦りとその力を感じて後退りするアルテア、ラキアは知恵を貸してほしいと言うのだ。

 前に聞いた忌龍、黒龍に繋がる杖に近いので二人は理解したのだろうと思った。


 「創世の杖に宿る、我が契約精霊よ、呼び声に答え顕現せよ、水の精霊、ウィンディーネ!」


 創世の杖に付いている青い珠が光ると、ウィンディーネが現れた。


 『あらあら、随分久しぶりね。シルフやシェイドから聞いていたけど、本当に可愛いわね!!ああ!凍らせて持ち帰りたいわ!いえ、凍らせると見え方が変わるかもしれないわね…』


 「何というか、変わらないね…ウィンディーネ。シールド内部に聞こえる範囲で念話使って話してくれるかな?」


 呼び出すや否や私の周囲を飛び回り恐ろしい事を言いつつ、何やら自分の世界に入っているウィンディーネに私はそう言うのだった。

 シルフの服やトニトルスの服もウィンディーネが選んでいる。

 精霊は興味を持つ物、持たない物の差が大きいのだが、ウィンディーネはとにかく可愛い物に目がないのだ。

 

 『主様、お久しぶりですね。久しぶりにお呼び頂いたので、少しばかり興奮しました。どうかお許し願いますね』


 興奮気味というより、変態なソレと変わらない言動を言っていたウィンディーネだったが、落ち着いた言葉で話す上品なお姉さんに変わった。

 魔力眼が無ければ現界しない限り姿を見る事はできないので、頭の中に聞こえる声でサーシャは驚き、何処ですか!何処にいらっしゃるのですか!!と辺りを見ていた。

 シャーリーは慣れてるのか気にせず、ラルフは考える事をやめている感じがする。

 反応が違うのはアルテアとラキアで若干表情は固く、いつもの冗談を言う仕草もなく、二人は軽く頭を下げていた。


 『見た限り、何かお困りのご様子ですが、私に何を求めるのですか?』


 透き通るような声でウィンディーネはそう言うと、私はお願いを伝えた。

 精霊に命令するのではなく、あくまでお願い、どうするかは精霊に委ねられる。


 『主様が求めるはこの場の浄化、周囲を満たす霧を無力化すると言う事で宜しいですね』


 私のお願い、周囲にある酸の霧を消す事に対して、ウィンディーネはそれで良いかと確認するように言う為、私は少し引っかかり考えてしまう。

 何故、私の伝えた言葉を言い直したのだろうか、一部指示や命令を復唱して問題ないか確認する行為の存在は知っているが、この場合は同じ事を言うのだ。

 浄化と無力化は行う事として同じ可能性は高いが、何か違うように感じたのだ。


 「ウィンディーネ、私は酸の霧を消して欲しいのだけど、もしかして問題がある感じなのかな?」

 

 考えてもわからない時は聞く事とお父様から習っているので、ウィンディーネに確認すると、ウィンディーネは少し間を開けて話し始めた。


 『主人様の願い、酸の霧を消す事はシールドの内側から感じとる限り困難なのです。そもそも現在発生している霧は特殊なのです。魔霧の一種で魔法ではなく、自然現象に近いのです。つまり、自然現象がこの場で発生している事、その自然現象を消す事は難しく、原因の浄化を行い無力化するのが限界という事になりますね』


 魔霧はゲーム内の異界で発生する自然現象の1つで、魔力濃度が原因になったり、周囲の異常現象により発生する視界不良、魔力低下、継続ダメージ等様々な効果を発生させる霧の事となる。

 この酸の霧が魔霧の一種という事が信じられなかった。

 発生原因は確実にあの者が投げつけた瓶、その中にある液体のはずだからだ。

 自然現象は各精霊にとって自己現象に近く、それを消す行為は難しいのだ。


 「人の手によって起きた事が自然現象、意味的に変だけどウィンディーネが言う以上はそうなんだね。そうなると霧は細かく定義するなら水属性になるはずだから、無力化しても平気なの?」


 精霊と言えどもやる事全てが肯定されるわけではない、自然と同じ精霊が、自然現象に介入する事は他の精霊から怒りを買う恐れがあるのだ。


 『そうですね、大精霊として精霊規則を破るのは藪坂ではありませんが、主様の願いでもあります。何か起きる時は主様に精霊卿へ来て頂き、皆を納得させて下さいね』


 時間が過ぎても霧は収まる気配がないので、ウィンディーネの力を借りるしかない私のお願いで問題が起きるなら、私が精霊郷に向かい話をするつもりだ。

 そもそも今の体で行くと体が耐えれない気もするが考える時間も惜しくここで止まるわけにもいかない、勿論、私が守るよ!と胸を張り言うのだった。


 『ふふ、失礼しました。主様がそんな事まで言うとは思わなかったのでつい笑みが溢れてしまいました。私も期待に応えるとしましょう』

 

 (ふむ、姿は違うけど、思考は同じのはずだけど?やる気になってるしいいかな)


 『万物の命水よ、私の願いを叶え、荒ぶる水は姿を変え、静寂を齎し賜え。暴虐の渦、メイルストロム』


 精霊魔法、通常の魔法と異なり、強力な力を行使できる神に近い力だ。

 私が展開しているシールドの外側から水が溢れるとシールドを中心として渦が発生した。

 内側から見ると幻想的に見えるかもしれないが、本来はとても凶悪な精霊魔法となる。

 水による浄化と分解、渦に巻き込まれれば霊体だろうが関係なく、全ての元となる水の元素へと変わっていくのだ。


 「何という魔力、これも魔法なのですか…いや魔法と同列にしてはならない!到達できない力…」


 夢幻を見るかの如く、ラキアは少し大きめの声で言うのだった。

 実際に私がみても綺麗と思えるが、見続けるのは酔いそうで諦めた。

 事あるごとにテンションの上がるアルテアも言葉を言う事なく、若干口を開けながら見続けていた。


 「私やラルフは魔法に長けてませんが、とても凄い事は分かります。いつ見ても精霊は人より超越している事を感じますね」


 シャーリーはシルフやシェイドの精霊魔法を見てるので慣れつつあるが、それでも目にすると凄い力に驚くそうだ。

 シャーリーに一纏めとして魔法に長けないと言われた事でラルフは、おい!俺を含めるな!まぁ、外に出たら1秒も持たないだろうな。と口にした。


 魔法規模なら上級魔法以上は大きく派手だが、精霊魔法は使われる魔力の質が違うので、魔力を感じ取れたり、見ることが出来る者は震えてしまうだろう、たとえ見れない者でも起きる現象は人の常識を越える為、精霊信仰がいつの時代もあるのだ。


 『あっ…周囲にある気持ち悪い塊は主様の持ち物では無いですよね』


 唐突に驚いたようなウィンディーネの声が聞こえると私に外の塊、つまりは虫の溶けた死骸は持ち物かと聞いてきたのだ。

 倒した事で権利的には私だが、あの状態で魔石を取り出す事や利用方法は思いつかないウィンディーネには、倒した魔物だから気にしなくていいよ。と伝えると、良かったです。もし、大切な物と言われたら同じように作るのは大変そうに思えたので安心しましたね。と言うのだった。

 普通に考えれば持ち物と思わないのだが、私を皆なんだと思っているのか全て解決した後に確認しようと思う。


 

 ウィンディーネの精霊魔法の威力が高いこともあり、私のシールドも渦が収まると同時に粉々に割れて散ってしまった。

 シールドが割れてしまった事で、サーシャは少し不安なのかソワソワするが、現在広間の床は水が足の踝辺りまで満たされてるので私は、ウィンディーネの支配が続く限り、守りも攻撃も自在に扱えるから安心だよ。と伝えた。


 『外側の霧は水に変わり無力化しましたが、主様のシールドまで壊してしまいましたね。水はこの場に残し、攻撃と防御に回しますので、ご安心くださいね』


 私の言葉でサーシャは、本当ですか?信じてよいのですか?と言ったのだが、ウィンディーネの言葉を聞くと祈るような仕草で、信じてます。と言うのはどうかと思った。

 足元の水、ウィンディーネの魔力が宿り手足のように動くので応用力の高さに感謝すると霧が晴れた事、私達が生きている事で狼狽える男に話を聞こうと思う。


  「何故俺の指示なしで霧が晴れた!何故お前達は原型を留めて生きているんだ!竜も溶かす酸の霧、耐えれるはずがない!!」


 私達が話しかけるより前に男は、驚きと怒りを交えた感情を言葉に乗せてぶつけてきたのだ。

 

 「そろそろ聞きたい事があるんだけど、いいかな?」

 

お読みいただき、ありがとうございます。


一応、バグは食べれる魔物の一種です。

ウィンディーネは、自身の魔力が宿る水を作り、存在する限り、その水を自由に操れます。

都合の良い強力な酸なので、多分周囲の被害はほとんどないです。

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