68話 扉の先
皆様、いつもありがとうございます。
遅れてしまい大変申し訳ございません。
一通り見終わるとシャーリー達が戻ってきて、来てもらえますか?と言われた。
え?どう言う事と聞いても説明より見たほうが早いと言われて見に行くことにした。
「えっと、扉開けたら何というか酷い光景が広がってるとかなの?」
「いえ、違います。まずは開けてみて下さい」
一応血の海を見る可能性を考えて心構えをするとゆっくり開けた。
王城内の騎士団が在中する場所、そう聞いている場所だ。
本部の扱いらしいが、王都内に様々な拠点があるらしいので、ここに全員集まってるという事はないとも聞いた。
だが、開いた先の光景は聞いたような話とは違い、広い部屋、というより美術品が飾られている価値の高そうな物が集まっていたのだ。
「騎士団って美術品集めてたりするって事なのかな…」
「アニエスお嬢様、目の前に見えてるのは応接間の隣に位置する国王様が各国から集めた美術品を飾る部屋ですね。中に入ってラルフと確かめたので間違いありません」
シャーリーの話を聞いて見取り図を思い出すと、確かその場所は玉座の間に近かったはずだ。
「部屋が変わってるって事なの…」
中に入り辺りを見渡すが、騎士がこの様な場所に在中はできないだろう。
「んー、ラキアどうなってるのか調べれるかな?」
一通り見たアルテアはラキアに指示すると、少々お待ち下さい。と言って部屋の中を見渡したり、部屋の外に出て扉を開け閉めしたりを行った。
「ありえねぇ事が起きすぎて、俺の頭じゃあ理解できねぇよ」
ラルフはため息混じりに言うとシャーリーが、気を抜きすぎです。先程の光景忘れたのですか?と言って注意していた。
アルテアとサーシャは仲良く絵画や骨董品を見て回っている。
直ぐに部屋から出て先に進んでも良かったが、ラキアが調べてる事や扉の先が変わってる事、これ自体を知る必要はある為無駄な時間ではないだろう。
「皆様、お待たせしました。あくまで簡易的な確認ですが、ある程度は調べ終わりました」
ラキアがそう言って話し始めた。
「現状を確認した結果、この部屋の扉、正確には本来の部屋に繋がる扉と言った方が良いでしょうね。魔力により扉の先を捻じ曲げて本来とは異なる場所へ繋げているようです」
(魔力で扉の先を捻じ曲げる?どう言う事?転移魔法のような事なの?)
ラキアの話を聞いた皆は驚きながらも実際に体験した事で納得するのだった。
アルテアは独り言の様に、うーん。だからなのかな?と言い終わると、納得したかも。と言って一人頷くとラキアを見つめて言った。
「ラキアの事だから一帯を調べてるんだよね?」
「はい、いつもの様にある程度は調べ済みです。その事から申しますと、殆どの扉はその先が捻じ曲がり別の部屋に繋がってると思って良いでしょうね。これ程の魔力を行使出来る事、今もし続けれる事はあり得ないでしょう」
おそらくアルテアの調べるとは、前に聞いた角から魔力を使いソナーの様な方法だと思うが、この広さを調べるとは凄いと思った。
私の知っている方法で可能な事を想像するなら、収納魔法等の次元魔法、これを扉にかけて行き先を一定範囲に固定する方法だが、繋げる先を固定する方法はわからない、出来たとしてもラキアが言う様に維持する事は出来るのだろうか、いや出来てるから今の現実なのだろう。
「待って!そうなると城内にいた人の避難先って普通じゃ行けないって事だよね!」
色々考えた先に行き着いた事で少し大きめの声を出すとあっと思い口を塞いだ。
「本来なら回廊を超えた先に執務を行う扉があります。その先にある大広間から二階に向かい、奥の扉の先に進み一階へ降りて…と扉を幾度も進む必要がありますので、ラキア様の話が全ての扉に適用されるとなれば簡単には進めないでしょうね」
口を塞ぐ私の横でシャーリーはそう言った。
運が良ければ目的の場所に着く可能性もあるが、悪ければ全ての扉を開けなければならない可能性もある。そもそも簡単に繋がるなら王城から人が逃げる事もできたはずだ。
考えても仕方がないので、一度部屋から出ると奥に進むことにした。
慣れる事は正直嫌がだ、あれ程気になった血の匂いも今は殆ど気にならず歩く事ができた。
通路も戦闘の後が残り、壁や床に傷が付いたりしている。
所々血が着いているが、最初に見た場所に比べれば少なく、あの場が一番大きな戦いがあった事を示している。
「何かこの先から気配を感じます!皆様ご注意下さい」
シャーリーはそう言うと同時に腰の魔法剣をいつでも抜ける様に握る。
通路の先は広間があり、正面は玉座の間に繋がる通路がある。
広間の左右は執務を行う部屋に繋がり、本来は様々な人が職務に当たっている場所となる。
「数は1体かな、人じゃないのは確かだね」
魔族特有の魔力をソナーのように使った探知方法、アルテアは1体何かいると言うとシャーリーとサーシャが先に確認、合図で私達が後から向かう、相手が攻撃するならラルフが守るという流れを立てて行動する事にした。
数歩先は広間となる通路の先でシャーリーはサーシャに目配りするとタイミングを合わせて左右分かれ通路から出た。
「何も居ない?いや、気配は感じますね」
ザッと飛び出るように何が起きても動ける構えで確認するが二人の視界には何も見当たらなかった。
シャーリーの感じた気配はまだ存在するようで、気配の主を探しているとサーシャは身につけたナイフを抜くとそのまま正面の玉座の間に繋がる道に投げつけた。
何もないはずの場所に投げたナイフが二本刺さると人の血液とは違う紫色の体液を出しながら高い鳴き声を上げて姿を表した。
サーシャの声と人ではない鳴き声を聞いた私達は合図を待たずに駆けつけると、視線の先にナイフが刺さった蟲型の魔物が体液を出しながら威嚇していたのだった。
「足の数、バグの一種ですか!」
威嚇から攻撃に行動を変えた魔物は背中から鎌のような羽を広げて勢いよくナイフを投げたサーシャに飛びかかった。
「現れろ、金剛大盾!重てぇ攻撃だな!吹き飛べ!」
一瞬の出来事にラルフは飛び出して大盾を取り出すと飛びかかる魔物の攻撃を防ぎ、力いっぱい弾き飛ばした。
ラルフの持つ魔法武器、取り出した大盾はかなり大きく裏側の左右に持ち手が付いていた。
大盾と言ってはいるが所々に剣で言うなら柄のような物が付いており、その部分を握れば大盾というより大きな斧の様にも見える。
一瞬の出来事で大盾を出し、サーシャに迫る攻撃を防ぎ、そのまま壁に弾き飛ばす流れにアルテアはラルフを褒めると貸して貸してと戦闘中の緊張感はないような行動をするので、ラキアに叩かれた。
壁に弾いた魔物はピクっと動くがそれ以上には動く気配がなく、ふぅと一息つくとラルフは大盾を重そうな音と共に床へ立てた。
「俺が王都で遭遇した奴とは少し違うな、アニエスお嬢様何かわかりますか」
視線は壁にいる魔物へ向けながらラルフはそう言うと私に聞いてきたのだ。
あんな形のバグ種は居ただろうか、シャーリーとサーシャは姿が見えなかったと言うので考えれる限り思い出すと1つだけ心当たりがあった。
「多分だけど、アサシンバグだと思う、でも私の知ってるのと違うから気をつけて!」
バグの体液は紫ではなかったはず、それにナイフが深く頭部に刺さっても問題ないように行動している。
アサシンバグの特徴でもあるインビシブル、系統はマンティスバグの上位種なので背中の羽は鋭利な鎌として攻撃に利用する。
それ以外に強靭な顎、蟲特有の脚は触れるだけで肉を削ぐように鋸状となっている。
「何方にせよ、早く倒せば問題ないです!!」
サーシャはそう言いながら素早く近寄り、振り下ろされる鎌を避けつつ的確に頭部を剣で突き刺すと、魔力を込めて剣に風を宿し突き刺した剣から風を放出した。
体内で放出された風は内部を斬り裂きアサシンバグは動きを止めた。
「普通に倒せたけど、アサシンバグじゃないのかな」
私の知っているアサシンバグはそれなりに強い、勿論サーシャが強い可能性も考えての発言だ。
姿を見せた後も面倒な攻撃を多用して素早く動き顎で噛み砕いたり、速度を利用した鎌による広範囲攻撃、鎌からエアロカッターを飛ばしたりするのだ。
鎌で攻撃はしたがそれらの攻撃はしていない、実際に倒せたのも事実なので考えるのをやめようとした時、周囲の違和感を感じた。
「なんか甘い香りしない?」
甘いものが好きだから言ってるわけではなく、何処からか甘い香りがするのだ。
私がそう言うと皆を匂いを確認して各々感じた事を言うのだが、サーシャが倒れたアサシンバグから匂いがすると言うのだ。
「何ですかね、このバグの体液が甘く香りますね。最初にナイフを刺した時は感じませんでしたが、間違いないと思います」
ちょっと人によっては直視しにくい状態のアサシンバグを近寄り匂いを嗅ぐサーシャ、何度か繰り返し間違いないと言うと嫌な予感を感じた。
本来バグは単体で行動しない為、仲間を呼ぶ行動は殆ど行わない。しかし、最上位の王はフェロモンを使い仲間を呼ぶのだが、その時の香りは甘いと記憶していたからだ。
「アサシンバグから離れて!!その匂い仲間を呼ぶ行動だと思うから!」
シャーリーとサーシャを遠ざけるとファイアボルトを使い、死骸含めて燃やした。
予想外だったのは死骸は燃えたが、煙も甘い香りを撒き散らし部屋に充満した事だ。
「アニエスちゃん、ちょっと不味いかも凄い速さで何か近寄ってくるね」
私の判断ミスだ。
「広い場所で虫と戦うのは良くないから一度通路に下がろう!」
呼んだ仲間がアサシンバグとは限らないが、痛感を感じないバグ種が沢山襲ってくるのは対処を間違えれば危ないと思いそう言った。
先程通った通路に走ると3カ所から気持ち悪い程多いバグが現れこちらに向かってきた。
「クソっ!皆俺の後ろに下がってくれ!!」
虫の大群を見て鳥肌が立ってしまい一瞬足を止めるとラルフがそう言い通路に立つと大盾が光ながら通路を塞いだ。
「ありがと、助かったけど、その状態っていつまで続けれそう?」
「これは動けなくなる代わりに盾の守備範囲を広げる能力なんだが、持って10分程度だな、その間に何とかしねぇと不味そうだな」
個々の強さもあるが、あの大群の攻撃を防げる大盾は凄いと思ったが、完全に防いでるわけではなく、一部ダメージは受けるようで表情は痛みを堪えていた。
「どうしよう…範囲魔法で一掃するにしても大盾を解除した瞬間に襲ってくるし…解除しないと魔法当てれないし…」
思考速度を上げつつ考えるが、答えが思いつかない。
王城を壊したくない為、向かう大群に範囲魔法を使えなかったが、こんな事なら壊すつもりで使った方が良かったと思った。
暗ければシェイドの力で何とかできるが、王城内は常に明るい。守るにしてもシールドはすぐ壊れるだろう、シャーリーやサーシャはこの状態だと力になれないと言って、アルテアとラキアは二人話しながら考えをまとめていた。
「アルテア様、あの魔王モードなら何とかなりますか?」
私がそう言うとアルテアは、うーん。と言いながら考える仕草をした。
「えっとね、このお城の中に魔力が殆ど無いから、まず魔王顕現は使えないかな。無理矢理使ったとしても大盾を一旦退かさないと攻撃できないのと、攻撃するなら広範囲攻撃だけど、通路壊れた場合一気に雪崩れ込む可能性が高いと思うから、ラキアに期待するよ」
アルテアはラキアに丸投げするようにそう言うとラキアが深くため息を吐きつつ、少々お待ちください。と言うのだった。
「危険な賭けですが、やるしかないのでお話し致します。私が先程の空間座標に繋げる道を作るので、そこにアニエス様の魔法を使ってもらいます。勿論、相手の魔物が小さければ通れますので、繋げた瞬間に魔法を使う流れです。発動後は即座に解除しますから魔法の余波はラルフ様に耐えていただくしかないですが、如何でしょうか」
ラキアから提案された話に驚きつつ、私が使う魔法がもしラルフの大盾に当たれば一定のダメージを負うだろう、そんな危険な事はしたくないが他に手もなさそうだし、悩んでいるとラルフが、俺の事なら心配せずに魔法使ってくれ。と言うのだ。
「わかった…ラキア様の座標って広間中央に指定できますか?」
ラルフを信じて、できる限り余波を与えないようにと中央に繋げれるか聞くと、可能です。とラキアは言うのだった。
私は空間座標に繋げる魔法を知らない為、細かくラキアに話を聞くと広間の中央に四角形の空間を形成して扉のような道を繋げる魔法のようだ。
そうなれば魔法をどうするか考えるのみだ。
火で焼き払いたいのだが、範囲魔法だとある程度限られてしまう。マリエルなら広範囲殲滅魔法が使えるので選択は様々できるが、私の魔力では発動不可能だ。
「多少は被害出るけど仕方がないよね…その場に広がるタイプなら爆発とかじゃないしきっと大丈夫…非常時だし仕方がない…」
誰かに許しを乞うために言うのではなく、意気込みの様なもので天井を見上げながら自身に言い聞かせた。
「アニエスお嬢様、自分を言い聞かせるような言い方は怖いのですが、何を使うおつもりなのですか?」
急に一人で喋り出した事でシャーリーは不安になったようだ。
「えっとね、オークを燃やし溶かした魔法だけど、この場にいる人は見てないんじゃないかな」
「俺は見てるぞ、地面溶けてたやつだよな…よし!耐えてみせるから全力でやってくれ!」
あまりあの場を気にしてなかったけど、ラルフはどうやら見ていたようだ。
よく考えればお父様と行動共にしてるので、あの場にいたのだろう。
ラキアに私が使う魔法、ゲヘナフレイムを話すと驚かれたが直ぐに納得したようだ。
やはり高度な魔法は異界に存在するようで名前を知ってるらしく、実際見た事はないようだが、発動と効果は知ってるようだ。
ラキアが空間を繋げてそこにゲヘナフレイムを投げ込む、発動後着弾までは小さな火の玉なので都合よく、爆発もしないのでラルフにかかる負荷は少ない計算だ。
他の皆にも話をして範囲殲滅ではない為、確実に倒せない数が一定数発生する事、残った分はゲヘナフレイム発動後に掃討する手筈となった。
「さて皆様、ラルフ様の負担が大きいのですぐ取り掛かります。何かあった時は私とアニエス様は動けませんので、各自対処をお願い申し上げます」
ラキアは深呼吸を行い、自身の指を短剣で傷つけて血を出すと床に垂らしつつ詠唱を開始した。
タイミングを合わせる為に私も同時に詠唱を始める。
「永遠に燃え続ける地獄の炎よ、今ここに解き放ち、業火にて咎を燃やせ、ゲヘナフレイム!」
私が詠唱を終える直前にラキアは魔法の構成が終わり、空間が四角に切り取られた。
私は超級魔法の詠唱が終わるとラキアの作った空間に火の玉を飛ばした。
「ラキア様!魔法が発動するので、すぐに閉じてください!」
発動前はファイアボールのようだが、発動するとまさに地獄の業火となり周囲を燃やし溶かす為、焦りつつ閉じるように伝えた。
私の言葉ですぐに自身の血で断ち切るように上から下に指を動かすと元に戻り、戦闘態勢に移る。
「発動するよ!ラルフ、衝撃来るかも!」
そう言ったと同時に、大盾越しに熱を感じるとラルフが大盾を構えたまま後退りした。
「だ、大丈夫!?」
「大丈夫だ…熱から避けるためか、かなりの勢いでぶつかってきただけだ」
私の魔法を受けたわけではないようで安心した。
「ぶつかってくる力が弱まってきたぞ、そろそろ頼めるか」
皆が頷くと、ラルフは大盾を解除した。
塞がっていた通路が開けた事で熱い熱風を強く感じると目の前には蒸し焼きになったバグ、溶けて変に固まったバグらしき物、未だ床は沸騰する水のように溶けた状態のままだった。
「えっと…倒す敵居ないね…」
良い事なのだが、目の前の地獄のような光景を見た皆の視線が痛く私に突き刺さる気がした。
甘い香りは特に感じない代わりに気持ちが悪くなるような臭いが立ち込めていた。
「やっぱ凄えな、徐々に大盾に当たる力が弱くなったと思ったら息絶えてたのか、こんな風に熱で死ぬのはゴメンだな」
通路に寝転がりラルフは大きく笑いそう言うと、少し休ませてくれ。と続けて言った。
動くにしても少し待たなければ進めないのでちょうど良かった。
「アニエス様、お見事ですね。発動をこの目で見れなかったのが残念ですが、放たれた凝縮された高魔力は実に感動いたしました。この騒動が終わりましたら、一度魔法についてお話をじっくりしたいと思います」
若干早口でラキアはそう言うとアルテアが、もう!アニエスちゃん困るから段取り考えてよ!とムッとした表情でラキアを叱っていた。
いつもと逆の状態に思わず笑うと、やっと表情柔らかくなったね。とアルテアはニコッと笑顔でそう言うのだった。
お読みいただき、ありがとうございます。
作った文を読むたびになんか違うと変えた結果時間かかりました。
遅れてしまい大変申し訳ございません。
様々省略したいのですが長くなってしまい読みづらく申し訳ございません。
他の流れとか何処かで投稿できればと思います。
ラルフが少しでも魔法に当たればおそらく溶けます。
時間経過で溶けた床は落ち着き収まりますが絵面としては地獄のような状態です。
人によって苦手な方も多いと思いますが、虫の死んだ時ポーズが沢山…




