59話 お友達
皆様、いつもありがとうございます。
理由はほとんど分からなかったが、アルテアに気に入られた事により、少しは想定外な事が起きても安心できそうだ。
そんな事を考えていると、シャーリーが報告を致しますと先程までの出来事を報告すると言った。
「アニエスお嬢様、王都へ連絡を試みたのですが、何度行っても呼びかけもなく通じなかったのです。不在とかでは無く、何らかの問題が起きてるかと思います。他の街は問題なく通信できたので、邸の奥様に無事合流できた事と王都に向かう事をお伝え致しました」
連絡が繋がらなかった…この街の様な事が起きてるのだろうか、正直不安になってきた。って、あれ?なんか変な言葉が聞こえたけど…脂汗が出てきた。
「シャーリー!お、お、お母様に連絡したの!!な、な、なんで!!」
「何でと仰られてもアニエスお嬢様の無事をお伝えするのは常識的に考えて普通かと思いますが、まさか…許可なくここにいらっしゃったのですか?」
あっ、これ不味いやつだ、そう私が感じた時には既に遅く、シャーリーは静かに怒っていた。
「魔王アルテア様、ラキア様、少々席を外します」
「シャーリー様、この場で大丈夫ですよ。私も魔王様でよく同じような思いを致しました。それに他人に見られた方が、今後同じ過ちは起こしにくいかと思います」
シャーリーはそうですか、それではこの場にてと言いながら私に怒り始めた。
「魔王様もよく聞いて、同じような事をしないで下さいね」
怒られると言う物は時間を遅く感じてしまう。実は何十分と経過してるのでは、と思ってしまう程に遅く感じるのだ。
「シャーリー、帰ったら謝るから、もうこれぐらいにして…王都危ないから早く行こ…」
「そうですね。奥様に後はお任せするとして、王都は既にラルフを向かわせてます。私の乗ってきた馬を使って走ってもらってますね」
流石シャーリー、ラルフはてっきりずっと扉の前に居るものと思っていた。
「シャーリー様、王都はどのぐらい離れているのか、お教え頂いても宜しいでしょうか」
当たり前の話で2人は土地勘がない、その為にどれぐらい離れているかと言う事にピンと来ないのだろう、実際私も本で道なりは知っているが、かかる時間までは分からないので、知りたかった情報だ。
「そうですね、私の馬ですと、大体走らせ続けて2日程でしょうか」
シャーリーの早馬でそれって、普通はかなりかかると言うことになる。その話を聞き私はラルフの報告を待つのは時間がかかりすぎると思った。
「お教えいただきありがとうございます。それで、提案なのですが、先程のお話からすると、王都でも何やら起きてるご様子ですので、私達の転移魔法で移動すると言うのは、如何でしょうか」
ラキアは私の予想外の話をしたのだ。嫌がるけど、シルフを再度呼び出して風の羽で高速移動やあの危険な移動方法を考えていたが、転移魔法という提案を受けるとは思わなかった。
「転移魔法ですか…勉強不足で申し訳ないのですが、私はその魔法に詳しくないので、アニエスお嬢様、如何致しましょうか」
シャーリーがそう言うのは無理もない話だ。私も特定の道具や特殊魔法、クエスト以外で転移はゲームでも行った事がない、自称何でも屋のアルクが使った転移に驚いた程だ。
「シャーリー、転移魔法は古代遺跡で脱出に使ったのと殆ど同じだよ。危険性はないから私はお願いしたいかな」
そう言うとシャーリーも私が賛成するならと承諾した。問題はどうやって発動させるのだろうか、魔力量は私に精神支配をした事で多いのは分かっていたが、もう一つ問題があり、どのように使うのか気になった。
「それでは魔王様、宜しいでしょうか」
「この人数なら問題ないかな、流石に増えると厳しいけどね。そうだ、王都は変わってないならいいけど、王都の噴水がある広場って、まだあるかな?」
「はい、噴水広場は憩いの場として国の合併前より存在してます」
やはり、アルテアは王都に来た事があるようだ。転移魔法を発動するには魔法道具で簡易的に使うか、大規模の移動、クエストでの移動、ギルドマスターが使う特殊魔法、ゲームイベントで使用する管理者魔法となるのだが、魔法道具以外は全て、移動先を設定する必要があり、行った事がない所にはいけない仕組みだったからだ。
「魔王アルテア様、前に一度行った事があるのですか?」
「んー、そうだよ。かなり前だけど、何度か行った事あるね」
あれ?てっきり秘密にするのかと思ったが、すんなりと認めて何度か行った事を教えてくれた。
「移動する前に外のアレ、体液も危ないから全体を侵入不可の結界で囲むけどいいかな?」
忘れていたわけではないが、処理をどうするか迷っていたのも事実で、一旦私の次元収納に入れようかと思っていた。入れるとなると体液の回収も大変で、触れるとあの痛い毒になると聞いた後では嫌だったが、結界で囲むと言うならお願いすることにした。
「ラキア、ささっと結界作るから、範囲を魔力で囲ってほしいかな、ボクは細かいの苦手だからね」
ラキアは畏まりましたと一言いうと、外に向かった。どうやら、アルテアは空間を囲んで結界を張る範囲指定が苦手らしい、それを聞くと転移も近いから正直不安を感じてしまった。
シャーリーはその間に王都で何があるかわからない為、治療具や食料などを用意すると言って部屋から出て行った。
「ラキアが終わるまではボクも待機かな、この機会に言うけど、アニエスちゃんの事はボク信用したから、あんな事をした後だけど、友達になれるかな?」
ふへ、いきなりの不意打ちに近い話で、変な声が漏れてしまった。
「え、えっと、魔王アルテア様は魔族領を統治してる方ですので、私もお友達になりたいのですが、身分が違いすぎるのではないでしょうか」
「ボクは気にしないんだけどね。魔族領も階級があるけど、実際力が強ければ裏技で爵位を手に入れる事は可能なんだ。今ここで叙爵はできないけど、アニエスちゃんにはお詫びも含めて、魔族領での爵位をあげるよ。これならお友達になってもいいでしょ」
やんわりと断るつもりが、スケールが大きくなり戸惑ってしまう、確かにあの行為は攻撃にも近いけど、ここまでする必要は無いと思い、何か理由があるのではと警戒してしまった。
「まぁ、すぐにとは言わないけど、ボクはアニエスちゃんとお友達になりたい、この気持ちは本当だし、変わらないから考えてほしいかな」
「お友達になったとして、魔族領は通常行けない場所です。会えないお友達というのは胸が苦しく、私は耐えれそうにないです」
これなら、諦めるだろうと考え抜いたお断りだ。
「後でラキアに渡させるけど、一応、魔族領が登録されてる転移結晶あるから、お友達になるなら渡せるよ、それに魔族領は変な意味じゃないけど、文明が違うからアニエスちゃんはきっとワクワクすると思うよ」
ドクンと心臓がなった。
この決断がこの先を変えそうな気がしたのだ。
危険な賭けになるかもしれないが、アルテアは好意的だし、爵位は要らないが、文明が違うという言葉は惹かれるものがあり、探究心を内に秘めた私は承諾したのだった。
「うんうん、ありがとう!アニエスちゃんともっと仲良くなりたかったから嬉しいよ!それに約束する、アニエスちゃんが知りたい事は教えるだから、ボクにも隠し事はしないでほしいかな」
「わ、わかりました…ですが、全てをお話しするのは、今すぐとはいかないので、ご了承下さい」
対等な取引だろうか、何やら違う気もするが、結果として、私の目的に近づくなら利用して利用される事を受け入れた。
「もちろん、全てをいきなり話せは言わないよ、ゆっくりでいいかな?ボク達、魔族は寿命が長いからね。でも、まずは喋り方をシャーリーさんみたいに気楽に喋ってほしいかな」
頷く事は難しく、努力しますとだけ言うのだった。
「おっ、ラキアが魔力で囲み終わったみたいだね。じゃあ発動しようかな、遮断結界発動!」
そう言うと指をパチンと鳴らした。
私はその発動方法にも驚いてしまう、精神支配をした時点で驚きはしていたが、無詠唱で発動したのと、窓の外で発生する魔法は、私が知る遮断結界と違い色が金色だった。
「無詠唱で魔法発動…色が金色…」
「あー、こちら側って基本的に無詠唱は殆ど無しだっけ?一応、ボク達魔族は使える方法なんだけど、指を鳴らすと予め登録した魔法を詠唱せずに発動できるんだ。本来の方法はちょっとした制約で使えないから編み出した魔法発動方かな、色はボクの魔力で覆ってるだけ、一応、魔力以下の魔物は近寄らない効果あるけどね」
今回、商業街に来た事で知らない事がどんどんわかった。無詠唱に近い発動方法は沢山あり、その可能性も考えていたが、指に魔法を登録して発動させているなんて思ってもなかった。魔力で色を変えたりするのも意味がわからない、魔力以下の魔物を寄せ付けないのは、どんなやり方なのか気になって仕方がない。
「凄すぎです…魔王アルテア様!私も指で魔法使いたいです!遮断結界で魔物を寄せ付けなくする方法も知りたいです!魔法陣!組み替えた魔法陣教えて下さい!」
「やっぱり、魔法使いは気になるよね。やっぱり、魔族領はアニエスちゃんにとって魅力的な所だよ。指で使う魔法も学校で教えてるし、遮断結界は特殊だけど、ある程度の魔法は魔法道具屋でスクロールを販売してる。魔法陣を知る人はいても組み替えると違いが出る事を知ってるなんて、やっぱりアニエスちゃんには、凄い秘密がありそうだね」
テンションが上がりすぎて気にせず話してしまった事を後悔した。しかし、アルテアはそれ以上聞く事をせず、話せるようになったら教えてほしいかなとだけ言ったのだ。あれ程、私の事を知りたがっていたのに私の中で見た事が影響しているのだろうか、それとも罪悪感でそう言ってるのか分からない。
「魔王様、範囲内に結界が発動、中に入れなくなった事を確認いたしました。おや、何やら仲良くなったのですか?」
ラキアは戻ってくると、そう言ったのだ。私はハッと気がつくと先程、テンションが上がった時にアルテアの袖を掴んでしまったことに気がついて謝罪を行うと、アルテアはお友達になったんだと満面の笑顔でラキアに報告した。
「魔王様、よかったですね。アニエス様なら万が一、魔王様が暴走しても魔力で亡くなる事は無さそうですし、長いお友達になれそうです」
「暴走ですか…」
「不甲斐ない話だけど、感情が昂るとアニエスちゃんも自身をコントロールできなくなる事ない?人も魔族も怒りや憎しみが高まると我を失う事がある。ボクはそうなると内に秘めた魔力を垂れ流してしまう、耐えれない者は魔力に当てられて最悪死んでしまうんだ」
過去に友達もしくは親しい仲の者を殺めてしまったような悲しそうな表情で話した言葉に不思議と私も思い当たる部分があり、なんとなく似ているなと思う。
「その時は私がガツンと正気に戻すので、安心して下さい」
シャーリーが戻るのを待っていると隅の方から声が聞こえてきた。
「ふぁーよく寝たわ、あの私を斬り刻んだ羽付はどうなったのかしら?」
部屋の隅に置いたマリーが目を覚ましたようで、浮かび上がるとふわふわ動きながら、周囲を見渡した。
「マリー、おはよう、体はどう?もう治った?」
「ええ、完治したけど、あの羽付がいない代わりにツノ付きがいるわね、敵?じゃなさそうだけど、誰かしら」
マリーに魔王とラキアの話をして倒された後の経緯を簡単に説明するとウキーッと怒った。
「マリー、ごめんね。強くしたはずなのにこんな事になって…」
「ん?ああ、その事ね。アニエス、勘違いしないでほしいのだけど、アニエスの強化は完璧だったわ。問題は強すぎる防御に過信して防御無視の攻撃を受けた私にあるから、あの銀ピカは気に入ってるのよ」
防御無視の攻撃を全員が使える事はないけど、注意する必要はありそうだ。
「アニエス様、これは魔法生物でしょうか、実に高度な魔法が組み込まれてますね…この様な美しく完成された魔法は初めて見ました」
「それだけじゃ無くて強そうだね。人種じゃないし本気で戦ってみたいかも」
ラキアは研究心から出た言葉に聞こえたが、アルテアは明らかに戦闘狂みたいな発言をしていた。
「アニエスの仲間なら戦わないわよ、仲間同士で消耗しても意味ないでしょ」
マリーに正論を言われてしゅんと魔王は凹んでしまった。
「アニエスなら分かるかしら、私が斬られる前に倒した魔物がちょっと特殊だったのよ」
そう言うと、黒い腕を使い空間を割って中身を引き摺り出す。
明らかに空間の裂け目より大きな質量が出てきたが、気にしない事にして、取り出された物を見ると1体の魔物だった。マリーが念の為で保管していた様で、それを見ると理由はすぐに分かった。
「何これ…初めてみるけど、複数の魔物をまるで合成したみたいな歪な感じがするよ」
大きく太い4本足で竜の様な翼を持ち、付け根から無理やり腕が生えて、頭部は獅子系の鋭い牙を持ち合わせていた。
「魔王様、これは合成体ですね。確実に拠点は潰したはずなのですがね…」
「悪趣味な研究がいつの間にか完成してた様だね」
何やら2人は知ってる様で、流石に情報が欲しい私は聞く事にした。
「今から50年ほど前のお話ですが、魔族領の封印処理をした研究情報を持ち出して、一部組織に売る事でお金稼ぎをした者が居たのです。持ち出して売った情報が、出会うと死の危険性がある魔物の生物情報で、合わせる事により合成体を作る研究だったのです。欠陥だらけな上で実験には危険が伴い、更には命も必要なのです。それを完成させる為、人体実験を繰り返して悪逆非道を行ったのです。看過する事はできなく研究所、研究情報、研究員、関わった者も含めて処理したのですが、まさか残っていたとは思いませんでした」
確かにラキアの話の通り、人体実験等は良くないが、さらっと関わった者を処理したと、表情変える事なく言った事に怖く感じ、アルテアは私と仲良くしたいと言っていたが、知りすぎると危ない様に感じる。
「ボクは心が痛まなかったけど、ラキアは皆殺しが最善なのかとずっと悩んでいた。内容も様々で魔物の合成体を作ることや人と魔物を合成させる事もやっていた。ボク達が動いたきっかけは魔物同士の合成よりも人との合成が危険と思ったからなんだ。かなり非道な事を行ってたから、これ以上被害を出すわけにもいかなかったんだよ」
私の探究心も怖くて聞きたいとは思わない、話から察する限り聞くと後悔すると思う。
「話を戻すけど、魔物って種類毎に様々な強い部位が存在してるから、それをかけ集めたら人為的に禁種を上回るのではと思い当初は悪魔を倒す目的として研究は始まったんだ。実際は合成しても欠陥があって一度研究は打ち切られたんだ。この合成体は見た感じ完全に成功させてるね」
まさか魔族がボスと同格の魔物を作り出そうとしていたとは、それだけ悪魔に追い詰められていたのだろうか、言葉に詰まってしまう。
「確かに、この大型の魔物はかなり厄介だったわね。私の奥の手を使ってやっと倒したのよ、その時のダメージもあって負けちゃったのよね」
「魔族領の開発コードネーム、合成体、組み合わせは自由で、この様に心臓を両断すれば倒せますが、生半可な攻撃では再生と近くの魔物を取り込み力に変えますので、制御不能と判断されたのです。よく心臓の位置と数が分かりましたね。しかし接合面が見当たらないのは気になりますね。私達が封印した時は部位毎を魔法で接合していたので、様々な所に傷ができて、その場所から綻びが生じる程脆かったのですがね…」
ラキアが言うには心臓は合成した魔物の数だけ存在して全てを潰さないと倒せない、周囲の魔物を捕食して取り込む能力を持ち、欠点として合成した事が原因なのか常に狂気状態で制御ができない、つなげた事で接合面が脆い事のようだ。
「狙うつもりは無かったけど、何度も何度も立ち向かってくるのがちょっとだけイラッとしてつい本気で斬り刻んだわね」
マリーが魔物の事が分かったから仕舞うわと言うと、ラキアが買い取らせて下さいと言った。魔族領で調べれば、作られた場所等が何かわかるかもしれないと言う事だったので、私はマリーにお願いすると、マリーも好きにすればいいわと、ラキアに渡す事となった。
「マリー様、ありがとうございます。このお礼は必ず致しますので、後日お持ち致しますね」
魔族領は恐らく表の世界よりも格段に魔法や技術は進んでいると思う、そうなると貰えるお礼も良い物だろう。
「それにしても合成体が完成してるとなると、もう片方の人体合成も…いや、あれは…あんな事を行っているならボクは、その国ごと叩き潰す…」
低く冷たい声でアルテアはそう言うと、瞳から感情のせいか、魔力眼を使わない状態でも見える程に魔力が漏れ出て怒りを感じている様だった。
怖い程冷たく、目が合えば体の内側から破裂してしまうのではと思うほどの濃い魔力だ。
「アニエス様、魔族領の危険な研究は前魔王様が行っていた事で、現魔王、アルテア様は即位後全て人体実験を行う研究は封印処理をしたり、危険な物は処分を行いました。魔族領が行った事に変わりはありませんが、魔王様の事を恐れないで下さい」
ラキアが喋り終えると、それでも魔族領の罪には変わらないよと悲しくも冷たい声でアルテアは呟いた。
「前の魔王って…もしかして…」
「物心ついた時から親とは思った事がない、魔族領の皆を守りたい気持ちだけは同じだけど、それ以外、手段に関しては一つも同意できなかった、だからボクが殺したよ。同じ考えを持つ者も1人残らず、意志を継ぐ者も残さない様に…ボクも後継者が見つかれば、その罪を背負って死ぬつもりさ」
何か言葉を伝えたかったが、私は何一つ言葉を投げかける事はできなかった。親を殺して、その腹心も殺すなんて、心を持つものには耐え難いだろう、私は1人で心が押し潰れるほど苦しかったのに最後は自らも死を選ぶと言うアルテアに返せる言葉は何も浮かばなかった。
言葉に詰まる私にラキアが近寄ると、服のポケットから綺麗なハンカチを取り出し、身を屈め受け取りやすい位置に差し出した。
「アニエス様、涙をどうかお拭き下さい、そのお気持ちだけで魔王様も私も救われます。できる事なら、今後も魔王様を恐れずにお友達として接していただければと思います。皆が粛清で畏れ昔は仲が良かった者も離れてしまったのです」
最近私はおかしいのかもしれない、気がつかないまま涙を流してしまった様だ。
「ラキア様、ありがとうございます。私は魔王様いえ、アルテア様のお友達をやめる事はしませんので、ご安心ください」
「アニエスちゃんは優しいね、君がもし、あの場にいたなら違う解決法もあったのかもしれない…いや、やめよう、今できる事をやらないとダメだね、はぁ、こんなに優しい君にボクは酷い事をしたんだよね…最低だね…」
自己嫌悪を感じている様で、あれ程明るかったアルテアの面影はもう無くなり、罪悪感に押しつぶされそうな状態になっていた。
この重苦しい空気を変える為、救いの手を求めようと、ラキアのほうを見るが、目を閉じて顔を左右に振っている。
(諦めないで、ってここまで後悔するならする前によく考えればいいのに…)
空気が重くなると、自然に言葉も少なくなる。そんな状態のままシャーリーが戻るのを待つのだった。
何か話題を作ろうと考え始めた時にシャーリーが戻ってきた。
「戻るのが遅くなり申し訳ございません。準備が終わりましたが…何かあったのですか?」
この重々しい空気を感じたようだが、これ以上空気を重くするわけにもいかず、シャーリーには後で話す事にした。
シャーリーはマリーが動いている事に気がつくと、お礼を言うが、マリーはいつものようにそっけない態度で言葉を返す、いつも通りのマリーに安心したようだ。
「準備も整ったし、王都へ交渉に向かおうか」
「王都の救援に向かいましょう!」
何やら方向性の違いを感じる。確かにアルテアは私の提案した交渉の場に向かいたいだけで、私は王都で何かトラブルが起きていると思う為、解決したいと思っている。
「んー、交渉が目的だから基本的に傍観するからね」
てっきりボクに任せてと言うかと思ったが、悲しい言葉が返ってきた。
「魔法補助起動、簡易発動起動、転移魔法起動、転移先、王都、噴水広場」
聞きなれない言葉が次々とアルテアの口から出てきた。
部屋の床、私達が立っている中心から金色の魔法陣が広がって囲い込む途中で、この場から離れようとしたマリーの腕を掴むと胸の前に引き寄せて抱き締め固定した。
最後に発動を行う為かアルテアが指を鳴らすと、金色の光に包まれて視界が眩く直視できなり、部屋の中から消えたのだった。
お読みいただき、ありがとうございます。
読みづらい箇所も多い中、皆様の温かいご支援に感謝してます。
いいね、ブクマに追加頂くと更に喜び叫んでますので、宜しければご検討下さい。
何か気になる事があれば、お気軽にコメントをお送りいただければと思います。
マリーは魂を消されるか塵も残らないように燃やされない限り復活します。
キメラと表現してますが、姿形は結構バラバラです。
人の死にアニエスは敵味方関係なく敏感なのです。
次はようやく王都へ…
色々と話を伸ばしてしまい申し訳ございません。




