31話 11階層から19階層まで
皆様、いつもありがとうございます!
11階層からサクサク進む所です。
10階層を降りて11階層に到着すると、先程までとは違う空気が漂っていた。
辺りから獣の匂いがしてくるのだ。
壁はゴツゴツした古代遺跡特有の物だが、地面から長い草が生えているので、魔物を見付けにくく奇襲に気をつけなければならない。
「凄い匂いだな、ウルフとかが出るんだよな」
「そのはずだね、動きが素早いから、気をつけてね。生きる大剣は、振る速度がそんなに早くないから、大盾だけ出して」
私がそう言うと、リディアとシャーリーは大盾を召喚する。
ダンジョンマップを見ながら、足を進めた。
歩いていると、こちらの様子を伺う気配を感じる。
ローランが辺りを確認するが見つけにくいようだ。
「囲まれてるのか?草が邪魔で、捕捉しにくいな」
「確かに周りに気配がありすぎて、分からないね」
「あそこに居る!ファイアボルト!」
リディアが無詠唱でファイアボルトを発動させ、草の合間に居たウルフを焦がす。
以前より威力が上がってる様に感じた。
威力が上がっている所から熟練値やレベル的要素は間違いなくあると見て良いだろう。
「リディア嬢、よくやった」
「私も日々成長してるからね」
リディアは、ローランに褒められた事が嬉しいのか喜んでいた。
「後はどこに居るんだ」
ローランが草をかき分けて探すといきなりウルフが飛びかかる。
「あっぶねぇ」
瞬時に剣で、相手の飛びかかる威力を利用して、斬り倒した。
「こちらからも来ましたね」
シャーリーのいる後ろからも、ウルフが駆け寄り、そのまま魔法剣で斬る。
「残りはどこだ!」
知能が高いのか、左右からローランに襲いかかる。
ステップで最小限の動きを行い、右を斬りそのまま左のウルフも倒す。
「これで一旦終わったみたいだな」
辺りから気配が無くなったのだ。
少し歩いただけで4体も出るとは、元々の数が多いのかそれとも何かあるのか
「ウルフの皮は高値で売れるから、剥いでもいいか?」
「私は問題ないよ」
「時間はかからないから、ちょっとだけ待ってくれ。リディア嬢、冒険者の基本として剥ぎ取りは必要だ、どうする?見るか?」
「う、うん、見たいです」
リディアが勇気を振り絞り、ローランのウルフ解体講座を受けている。
マジックポーチから解体用のナイフを取り出して手際よくウルフから剥ぎ取っていく。
「この場所からナイフを入れると剥ぎ取りやすい、後は出来るだけ綺麗に剥いでいく」
リディアがそれにうんうんと頷き、熱心に聞いていた。
ウルフは牙や爪も売れるらしく、それらを取りポーチに仕舞う。
「ウルフだと。ここに魔石があるから、傷つけない様に取り出すんだ」
魔物の持つ魔力が固まる事で魔石となる。
魔物であれば必ず魔石はあるので、できる限り取る事を教えていた。
「そうだ、ローラン、ウルフの肉集めておいてほしいな」
「ああ、いいぞ、どうするんだ」
「ウルフの肉は、普通の動物と変わらないから食べれるし、美味しいからね」
「何年も冒険者やってるが、食べた事なかったな。魔物が食べれる認識じゃなかったからか…」
食べれない魔物を除けば、勿体無いのだ。
流石のローラン、素早い手つきで解体が終わり、肉も収納が終わった。
「ローラン、ありがとう」
先ほどの場所から移動を行い進むが、何も遭遇しなくなった。
魔物とはいえ獣だから力量を感じて、襲わなくなったのだろうか
そんな事を言ってると、12階層への階段にたどり着く。
「あれから、何も出なかったな」
「私は極力出ない方がいいです」
「体力温存できたし、良しとして進もう」
12階層に降りると、先程と光景がほとんど変わらなかった。
少し進むと、気配を感じた。
「何が来るぞ!」
急に草から飛び出したのは、牙が発達したファングウルフだ。
牙は長いだけではなく強度も高く、加工して武器にすることもできるのだ。
その分値段も高く、ファングウルフ自体も強い。
ローランは剣を牙に当てて、跳ね飛ばす。
「ローランさん左に避けて!」
リディアがそう言って、ファイアボルトを発動させる。
ファングウルフに当たり、そのまま倒れた。
「良くやったな、後2体居るが、行けそうか?」
「出来ます!」
もしかすると、リディアを実地で鍛えてるのかもしれないローランは上手く誘導して当てやすい方に動いていた。
リディアも使えば使うほど、威力や精度が増してるので、熟練値が上がっているのだろう
先程の戦法で残り2体も倒して同じように剥ぎ取りを行った。
「ファングウルフは普通じゃあ遭遇しないからそこまで覚えなくてもいいが、硬い牙を取るときは専用の器具があるからそれを使うんだ」
そう言って見せてるのが、刃と刃が向き合う変わった道具だった。
それを牙に当てて挟むと、簡単に切断される。
肉も同様に確保して、足を進めた。
11階層とは違い定期的に、ファングウルフとウルフが襲ってくるのだった。
「進む度に襲ってくるのは、流石に疲れるな」
「練度が高く交互に襲ってきますね」
ウルフが飛びかかり、避ける動作をしたところにファングウルフが襲い掛かるのだ。
知能が高めの魔物ほど怖いものはない。
シャーリーが後ろを守ってるので背後を取られないが、通常では背後から襲われて、そのまま死ぬ事が多そうに感じる。
左右は大盾と時折、シェイドが影から攻撃してくれるので疲れはするが、危険性は感じなかった。
「流石の俺も疲れてきた、13階層に降りたら少し休憩しようぜ」
「そうだね、体力減らし続けると危ないから、そうしようか」
ローランの提案に乗り、13階層へ降りて休憩を行った。
周りに草がある分気は休まらないが、少しでも体を休める事で集中力や体力は回復する。
「ローラン、この機会に聞いてみたい事がある」
「改まって何だ?」
「ローランの師匠って何者なの?」
「俺もかなり長く一緒に暮らしてたが、よく分からないな、今は旅に行ってくる、と俺に剣聖の称号を無理やり押し付けて、どっか行ってるしな」
「1人旅って凄いね」
「俺よりも強いから、心配はしてないな」
ふむ、一度会いたいけど、会う事は難しそうだ。
もしかしたら私はその人を知ってるかもしれないと思ったが、今はそれを気にしてる余裕はないので、とりあえず今後考えていく事にした。
「私も一度、騎士団の訓練所で、前剣聖は見た事がありますね。あの何と言うか、長めの片刃剣を使っている所でしたね」
シャーリーもあった事がある様だ。
片刃剣か…刀の事かな。
「片刃って言うと刀の事だろうな、師匠は毎回持ってたな、刀と通常の剣を一本ずつ」
「刀…珍しいね」
刀は確か東方マップ実装と共に追加されたけど、耐久性が悪く使う人が少なかったと聞いた事がある。
「本人は古代遺跡から手に入れた、と言ってたな」
古代遺跡の最下層にある宝箱は全種類出るからあり得ない事ではないけど、ますます謎が深まってしまった。
「話が深すぎて、私は入れる隙がないよ」
リディアがうがーと言い出して、私にもわかるお話にしてよ!と言われてしまった。
「リディア、ごめんね。クッキーあげるから許してね」
クッキーの袋をリディアに渡すと、にっこりしながら食べ出した。
「アニエス嬢、20階層の主って心当たり何かあるのか?」
「うーん、獣系で主の枠に収まるのだと、おそらくだけど、マスターウルフ?」
「何で疑問になるんだよ」
「候補が少ないけど、出ると厄介なのが多いから言わない方がいいかな、って思っただけだよ」
「参考までに危ない魔物はどんなのだ」
「危険度で言うと、金獅子、銀獅子、この2体が危険度が高い。次は白虎、ヘルハウンド、ライガー、出会ったら死亡確定はフェンリルだね」
「一体も聞いた事がない名前だな、最後の死亡確定ってそんなに強いのか」
「戦いにならない、が正確な表現かな、神話級の生物だからね」
「お嬢様が言うと、本当に出そうで怖いですね」
「出るとしても100階層よりも下の隔離断層以降のはずなんだけど、私の知識と違ってる事があるから分からないね」
「なんだ隔離断層って、初めて聞くんだが」
「古代遺跡自体は100階層が最深部なんだけど、その先があるんだよ、真っ暗の空間、深淵領域を超えると、隔離断層って言う危険度が高い魔物を閉じ込めてる場所があるんだけど、そこの事だね」
「マジかよ…」
「知りたくない真実ですね。お嬢様は行ったことあるのですか?」
「私は数回しかないね」
自我が芽生える前は、もっと行ってると思う。
その最奥に黒龍祭壇があって、黒龍の領域に行ける場所があるからだ。
「そろそろ移動しようか」
「クッキーで力湧いてきたからいつでもいけるよ」
小休憩を終えて足を進める。
出てくる敵はウルフが多く代わり映えがない
獣というと他にもたくさん居るのに何で偏るのだろうか、考えても仕方がないと思い歩き続けた。
「牙も沢山集まったな、皮もあるし、かなりの金額になるぞ」
「危険性がある分、多く手に入るね」
ふふ、っと笑いながら歩いていく私達だった。
13階層になると辺りが少し変わる。
今までは洞窟の中に草が生えてる様な感じだったが、天上が高く木が生えてる。
「今までの古代遺跡はお遊びに思えてきたな。こんなに辺りが変わるのは初めてだ」
「古代遺跡は色々あるからね、そこの木近寄らないでね」
果物がなってる木を私は指を刺した。
「あれ、果物で釣って、捕食する木の魔物だよ」
「あ、ああ…ちょっと驚いたぞ」
木の枝が動いて近寄るウルフを捕まえて木の中へ吸収していくのを皆が立ち止まり眺めていた。
「この階層怖すぎなんだけど、あんな魔物が古代遺跡以外にいたら怖い…」
「あれ、なんて名前なんだ」
「トレントだよ、種類はかなりいるから、大人しいのとかは遭遇してるかもね」
トレントはかなりの種類が存在している。
木になりきっている自称木のトレントや森を増やそうとしているトレント等が多い。
長く生きれば生きるほど捕食行動をしないで通常の植物の様な生き方をしてしまうらしい
「ち、ちなみにあの変な植物?は何かわかる?」
リディアがそう言って指を刺した所を見た。
赤くて2メートルを超える蕾があった。
蕾の周りに葉があるのだが、内側に鋭い棘がびっしり付いている。
「あれは何だろうね…私も分からないや」
「明らかに捕食しそうな見た目してるな」
「魔物なのかこの特殊な環境が生んだ植物なのか私にも分かりかねますね」
そんな事を観察していると葉の上にウルフが乗った。
その瞬間に内側に葉が動きウルフが取り込まれていく。
葉があるので中の様子は見えないが鳴き声が聞こえる所を察すると悲惨な事が起きてるのだろう。
葉が再度開かれたのだが、一瞬蕾が開いていて、牙のような歯が見えた。
「足元に気をつけよう…おそらく即死トラップ…」
「うん…早くこの階層を抜けたいよ」
「マジで何なんだよ、この古代遺跡やばすぎる」
自然の様な見た目をする罠の宝庫となっていた。
気をつけながら進んでいくのだが、途中で美味しそうな果物で釣る植物や蔦を使い捕食する植物など理解を超える現象が多く私達は逃げる様に奥へ進んでいった。
「や、やっと15階層だね…殆ど罠しかないからかなり疲れたね」
「ああ…蔦で捕食する奴はヤバすぎる。俺達を追っかけたウルフが餌食になったおかげで助かった様なものだな」
「私もう植物怖くなっちゃいました」
「まずないですが、外に出てきたら手がつけれないですね」
そんな話をしながら先に進むかを決めていた。
当初は15階層で休もうかと思ったが、ローランの時間感覚だとまだ夕方前らしく先に進む事にする。
そもそも、植物だらけで怖くて休む事ができないが正しいのかもしれない。
「ねぇ、シェイド、楽に下の階層まで行けたりしない?」
『できない事はないが、魔力が大量に必要だな、さらに出来たとしても1階降りる程度だ』
ふむ、楽はできないらしい
参考までにどれほどの魔力が必要か聞いた所、私の現在ある魔力最大で4人分いるらしい
それ程使っても1階分の移動だけだと割に合わなかった。
「16階層は草木が少ないね」
「何と言うか、普通な古代遺跡だな」
先程まであった草木がなくなりゴツゴツした石壁の古代遺跡特有な感じだった。
こんな所に獣系が出るのだろうか
そんな事を考えつつあるくと普通にウルフが出てきた。
「ウサギさんがいる!」
「本当だな、こんな環境で大丈夫なのか」
「みんな待ってあれは魔物だよ、キラーラビットって言う結構危険な魔物だね」
「え、ウサギさんも魔物いるの知らなかったよ」
「俺も初めて見るな、ちょっと戦うか」
「戦いは避けた方がいいよ、あれ危険な魔物だから」
皆に危険性を伝えた。
個々の強さはウルフと同じぐらいなのだが、一度敵対状態になると仲間を呼び寄せて襲ってくるのだ。
さらに厄介な事に呼ぶ仲間もさらに仲間を呼ぶのでモンスタートレインと化してしまう。
圧倒的火力で範囲攻撃を使い一掃すると言う経験値稼ぎもあったけど、今やるのは得策ではなかった。
「世の中怖いな、今後ウサギ見ても近寄らない事にするか」
「ウサギさん、あんなに可愛いのに」
見た目はそうだね。
でも普通のウサギは爪あんなに長くないからね…
「シャドウエイプもいるね、名前のまんま真っ黒で影なんだけどね」
「何だあれ…木の影に潜ったぞ」
「影の中を移動してくるから不意打ちに注意して進もうか」
「怖いよ」
不意打ちに警戒していたが、シェイドが数回影の中で捕食したらしく不意打ちは受けなかった。
17、18階層も代わり映えはなく魔物の楽園となっていた。
植物の罠も少なくなりマップに沿って移動する事で19階層まで降りる事が出来た。
「見た目だけで言うと和むんだがな」
「うん、ウサギさん遠目だと可愛いからいいのに」
「うーん、今日の泊まる候補が殆どないね」
「あそこはどうだ?広めの場所だぞ」
ローランがそう言って指を挿した。
指先を見ると確かに広めの草木もない場所がある。
「ちょっと見に行こうか」
そう言って見に行くとこれまでに遭遇してない魔物が居座っていた。
「おいおい、なんだあれ」
「凄く強そう」
「気配が濃いですね」
皆が驚きつつ、そう言いながら見つめていた。
身長が2メートルを超える大型の魔物だ。
「厄介なのがいるね、あれはボス級だよ」
全身に黄色の毛を持ち鋭い牙と爪を持つプレデターレオだ。
獲物を見つけると鋭い爪で飛びかかり鋼も噛み砕く強靭な牙、補助魔法を使い攻撃や速さを強化したり、自身の毛を針の様に飛ばしたりもする。
厄介な事に体力が減ると辺りの色に同化もする。
皆に説明をすると違う場所にしようかと結論が出た。
「ちょっと、遅かったみたいだね。こっちを捕捉されてるよ」
「やばいな、殺気が飛んできてるな」
プレデターレオは立ち上がりこちらを敵視して強いプレッシャーを私達に飛ばす。
リディアは立ちくらみをしてシャーリーが支ている。
「お嬢様、戦うしか無さそうですね」
本来ならシャーリーにも一緒に戦ってほしいが、リディアを守ってもらおうと思う。
「そうだね、一度捕捉されると逃げ切るのは難しいし不意打ちを貰うよりは、ここで倒すしかないかな」
今日は襲ってくる獣の魔物を倒したり追い払う為、魔力をそこそこ使っている。
リングから借りれば使えるが、今後わからない為、極力温存したい。
そうなると魔力消費が優しい魔法を使うしかなさそうだ。
「白銀剣ギグサロス!俺に力を貸してくれ!」
ローランが剣を解放して、プレデターレオに向かい走っていく
「リディア、魔法使うと狙われるからここは使うの我慢してほしい」
プレデターレオは魔法詠唱に反応して攻撃をしてくるのだ。
無詠唱なら一応大丈夫だけど、狙いが変わる事もあるので油断大敵だ。
「わかったよ、アニエスちゃん気をつけてね」
私はシャーリーにリディアを守ってと伝えて、ローランの後を追った。
ローランが近寄るとプレデターレオは大きく咆哮を上げて威嚇する。
「凄いな、これはドラゴンよりも強いんじゃないか」
ローランは咆哮を受けて、若干怯みながらそう言った。
「この前戦ったドラゴンよりは間違いなく強いよ、全身の毛は鋼と同じ強度だから、気をつけてね」
プレデターレオは、その巨体を軽々と動かしてローランに飛びかかる。
鋭く振り下ろされた爪をローランは避けた。
それで終わらず、回転して尻尾を振り回す。
鋼と同じ強度の毛は全身が武器であり鎧でもある。
振り回される尻尾を剣で防ぐと、大きな音を発生させ後方にローランが飛ばされる。
「なっ!一撃が重すぎる」
受け身で着地するが、そこに飛びかかり追撃を行った。
私はそのタイミングで横から魔法の石をぶつける。
石はプレデターレオの側面に当たり、その場で砕ける。
ダメージは殆どないが、のけぞらせる事には成功したのでローランに爪は当たらなかった。
攻撃直後の隙を利用して、ローランにアビリティアップ【ストレングス】を使い筋力を増加させた。
「ありがとな」
ローランは剣を横に振り抜き、プレデターレオの側面に直撃させる。
唸り声が響くが、剣は体を傷つける事はできずに受け止められた。
「マジかよ!硬すぎる!ありえねぇ!」
攻撃が効かないと、すぐ後ろに下がり距離をとった。
プレデターレオは尻尾を振り回して、毛を飛ばし始める。
普通の毛ではなく、鋭く速い、まるで針を撃つ様な攻撃だ。
ローランは一部剣で防ぎ、残りは動作で避ける。
シャーリーの方に飛んで行ったのは、シェイドが防ぎきった。
「アースニードル!」
打撃力があり、鎧特攻があるアースニードルを私は使った。
鋭く先が尖る岩の針を無数に展開して、飛ばす。
プレデターレオは、体を動かし避けようとするが、展開した数が多いので体に直撃した。
「やったか!」
体に直撃した事で、砕けて辺りに煙が舞う。
ローラン、それは言わないやつだよ。
「ローラン!避けて!」
その煙の中から牙がローランを襲った。
ローランは足に魔力を流し、大きく後退して寸前で避ける事が出来た。
魔法を使った事で尻尾を振り私の方に毛の針を飛ばしてきた。
足に魔力を送り強く踏み距離を取り回避する。
近くのローランに追撃させない為、アースニードルを放ち、ローランから遠ざける。
「あれで無傷なのか、あの毛って燃えたりしないんだよな」
「燃えないね、毛に見えるけど鋼と殆ど同じだからね」
大きく咆哮をすると、毛を逆立てた。
この動作は、全方位攻撃だ!
先程までの尻尾から飛ばすのとは違い、かなりの量の毛が針として飛んでくる危険行動だ。
「ローラン!毛を飛ばしてくるから、絶対当たらないで!」
私はシャーリー、リディア、ローランの順にシールドを貼る。
同じタイミングで毛を全方向に飛ばされ、辺り一面に飛び散り砂煙が巻き上がる。
私も何とかギリギリ、シールドを貼れたが、一瞬痛みを感じた。
シェイドがシールドを一部貫いた毛を防ぎ、シャーリーとリディアは無事だった。
「皆、大丈夫?」
「シールドのおかげで、大丈夫だ」
再度、アースニードルを展開して、先程と同じ場所を攻撃する。
同じ場所を攻撃したのは、その場所が鎧特化でダメージが入ってるからだ。
岩の針が少し刺さり、毛の鎧を一部剥がした。
そのダメージでプレデターレオは、唸り声を上げた。
怯みながらも私を攻撃対象として捕捉している。
「アニエス嬢を攻撃させねぇ!1の剣、瞬斬!」
その隙をローランは見逃さず、瞬時に間合いを詰めて同じ箇所を斬りつける。
剣による光の軌跡が発生し、プレデターレオは体から血を噴き出した。
「2の剣、虚空破斬!」
間合いを詰めた状態から剣を空に振り抜く。
空まで上がる光の斬撃が直撃した。
連続した攻撃を防ぐ手段はなく、大きな唸り声を上げてプレデターレオは後方へ下がった。
「効いてるね、私も追撃するよ!」
動きが鈍っているので威力が高く、発動が早い魔法を選ぶ。
「二重詠唱!轟け雷鳴、唸れ雷音、その身で受けよ!サンダーボルト!」
上空から眩い光が2つ発生して雷音と共に雷が落ちる。
1発目が落ちてバチバチと鎧の毛も焦げ、剥がれていく、隙を与えず2発目が落ちて、全身を中まで雷が駆け抜け焦がした。
かなりダメージが入った様で、大きな唸り声を上げた。
するとプレデターレオは自身の体を辺りの色へ同化させ、視界から消えてしまったのだ。
今の魔法詠唱で私がターゲットになっているはずだ。
気をつけながらローランに伝える。
「まずい、姿を消された!ローラン気をつけて!」
するとローランは目を瞑り剣を構えていた。
「ここか!3の剣、烈周煌斬!」
剣が眩く光を放ち、その状態で一回転周囲を斬りつける。
隠れてはいるが、プレデターレオは剣に当たり血が噴き出る。
広範囲を攻撃する為、再度アースニードルを展開して周囲に飛ばした。
今までは体に当たると砕けていたが、毛の鎧が剥がれているので、岩の針が沢山刺さった。
「ローラン!その岩が刺さった所を剣で打ち込んで!」
「任せろ!1の剣、瞬斬!」
一瞬で間合いを詰め、プレデターレオは避ける事ができずに岩を体内に打ち込まれた。
杭を打ち込む様に、岩の針が体を貫き、血が飛び散る。
戦闘の中で一番大きな咆哮を上げながら、そのまま倒れた。
「倒せたか?」
ローランも疲れた様で、肩で息をしている。
「うん…倒せたと思う…」
緊張が解けて、私はよろけた。
戦闘中はそこまで気にならなかったが、毛が足と手を擦りジンジンと痛みを感じる。
地面を見ると血が滴り赤く染めていた。
うわぁ…勿体ないと一瞬思ってしまった。
血は魔力を宿すので、魔力も体から抜けているのだ。
「お嬢様!」
シャーリーが異変に気付き、こちらへ走ってくる。
シャーリーとリディアの位置からだと最初はよく見えなかったようだが、私が怪我をしてる事を理解すると応急処置を行う。
治癒力を高める薬と包帯で止血をした様だ。
「アニエスちゃん!」
リディアも血を見て心配しているのか悲しげな表情だった。
私は大丈夫だからリディアには笑顔でいてほしいと思う。
リディアの笑顔を見てると、心が安らぐからだ。
「かすり傷だから大丈夫だよ」
「アニエス嬢、あの攻撃を受けたのか」
「私が油断しただけだから、ごめんね」
簡易テントを出して、昨日同様にシェイドを守りに置いた。
プレデターレオの素材を利用したいので散らばる毛も含めてシェイドに一旦収納してもらう事にする。
私の収納空間に直結できる仕組みは良く分からないが、シェイドができると言ったので大丈夫だろう
あの素材は有効活用できるのだ。
「ごめん、ちょっと休ませて…」
血が少ないのか、ふらふらして力が入りにくかった。
そんな私を心配して、リディアが付き添い部屋に向かう。
「アニエスちゃん、私達を優先してシールド遅れて怪我したんだよね…」
「違うよ、私が避けきれなかっただけだから、リディアも皆も気にしないでね。少し寝たら治るから大丈夫だよ」
低級ポーションを飲んで横になった。
駄目だ、最近体の年齢に引っ張られてるのか、眠気を打ち消せない…
疲れからか、すぐ意識が溶けて、いつもの暗闇が私を包む。
「よく寝た気がするけど、今何時だろうか」
ベッドから起きて背筋を伸ばす。
低級ポーションと言えども体内の治癒速度を上げるので傷は塞がり痛みも無くなった。
とりあえず、部屋から出て1階に向かう事にした。
「ローラン、お酒はほどほどにね」
今日も椅子に座りお酒を飲んでいる。
私の感だけど、入り口を見える位置にいるのは万が一、魔物が入ってきた時に対処できる様にだと思う。
お酒飲んでて出来るかは、わからないけどね
「アニエス嬢、起きたのか、傷は大丈夫か?」
「もう塞がって痛みもないから大丈夫だよ」
私は腕を回して、ほら大丈夫と伝える。
「俺達のせいで、済まなかった。本来であれば俺が防がないとダメな所なのに、自分が不甲斐なく思える」
酔っているのかいつもより口数が多い様だ。
「リディアにも言ったけど、私が悪いから気にしないでね」
「アニエス嬢は強いな、普通なら子供が魔物に向き合って戦う事もできないはずが、逃げ出さず前に立つ、そんな事が出来るのは羨ましいよ」
「私が逃げ出さないのは、昔の記憶と力があるからだから、言わば反則みたいなものだよ。それにローランもかなり強いよ。プレデターレオを倒せたのもローランの力あってだからね」
「やっぱアニエス嬢は強いよ、身体的な強さじゃなくて心が強い。俺も子供の時にその心の強さがあれば、村の皆を救えたのかも知れなかった。俺は怖くて逃げたんだ。血の匂いと悲鳴で俺は怖くなったんだ」
「ローラン…」
私は言葉が詰まった。
お父様からローランの事をある程度、聞いてるからだ。
「その結果、村は俺以外皆死んでしまったよ。非力で怖がりな俺を、母親は体を張って庇ったんだ。俺は丸くなって震えていて、気がつくと冷たい母親の体と、俺はその血を浴びてた。どうでも良くなって落ちてた剣を握り…がむしゃらに魔物に向かって斬りつけたら倒せたんだよ。俺に勇気があれば…剣を持ち戦ってれば救えたんじゃないかといつも後悔してる…俺は…」
ローランはそのまま机に体を預けて寝てしまった。
「ローランは強いよ、だから自分を追い詰めないで…追い詰め続けると壊れちゃうから…」
私も後悔した事が沢山ある。
人は皆何かしら生きてると後悔する事があると思う、だけど、生きてる限り前に進まないといけない、全てを忘れろとは言わないけど、自分を自分で許す事も必要だよ。
「ローラン、おやすみ」
ジャンプしてローランに毛布をかけ、私は部屋に戻った。
「ふぁー、駄目だ、眠気がまた来た…動けなくなる…」
倒れる様にベッドで横になると、すぐ眠ってしまった。
翌朝となりバッチリ全快していた。
シャーリーとリディアは心配していたけど元気になった事を伝えたら安心していた。
「アニエス嬢、昨日はすまなかったな、変なこと言ってなかったか?途中から記憶があやふやなんだが」
「そんな状態になるまで、お酒飲むのダメです!」
ビシッと私は指摘をした。
ハハッそうだな、控えるとするかと笑って答えた。
少しでもローランの気持ちが軽くなっていればいいなと思いながらマジックチェーンにポーションを繋ぎ、支度をする。
「駄目剣聖!お嬢様と夜何の話をしてたのですか!お嬢様はしっかり寝ないと成長しないじゃないですか!」
えっ、何、いきなり何。
「おいおい、落ち着けよ、ちょっと昔話をしてただけだから剣に手をかけるな」
「昔話ですか…信じましょう、お嬢様も夜は寝ないと成長しませんからね」
私に飛び火してきたので、リディアの後ろへ隠れてやり過ごす。
「アニエスちゃん、ちゃんと寝ようね」
「私の味方がいない!」
ローランが真面目な顔になり、20階層はどう思う?と聞いてきた。
プレデターレオがそもそも19階層にいる時点でそれよりも強いのが高確率で出てくるはずだ。
流石に神話系は出ないと思うからその中で強い魔物と言うと限られる。
「プレデターレオよりも強い魔物だと思うけど候補が多くて予想できないよ」
「20階層だしって気を抜かないんだよな、昨日のトゲトゲ」
「さっきも言ったけど、プレデターレオだね」
「そうそれ、あんな化け物クラスより強いのがゴロゴロいるとか、俺も鍛え直さないと駄目そうだな」
テントから出てシェイドにも作戦を伝えた。
シェイドには大変だけど、万が一の時は影から動いてもらうつもりだ。
シャーリーもリディアも今回は攻撃に参加してもらう、少しでも削り、早めに倒したいと思ったからだ。
よしいくぞ!と気合を入れて階段を降りた。
お読みいただき、ありがとうございます。
ブクマやいいね、等もありがとうございます。
最近増えてとても嬉しく、励みになります。
何か気になる事や、こうした方が良いのでは、とかここはダメという所など、あればコメント頂ければ幸いです。
アニエスは自分の体の事はあまり考えてなく行動します。
仲間を助けれるなら犠牲になる精神なのです。
一応、ローランが強い理由があるのですが、まだまだ先のお話なので今は強い人だな程度でお願いします。
お恥ずかしい話ですが、表記揺れが多数あるのを確認してます。
読みづらいかと思いますが、徐々に編集致しますので、何卒よろしくお願いいたします。




