25話 みんなの優しさ
いつもありがとうございます。
気がつくと、真っ白な空間にぽつりと私は立っていた。
遠くに人影があり、手を振っている
目を凝らすが、よく見えなかった。
『お姉ちゃん、またね』
その声を聞いたタイミングで、私の意識は発散して消えた。
「はっ!あ、あれ?私どうしたんだっけ」
いつの間に、寝てしまったのだろうか
気がつくと、自室のベッドに寝ていた。
ふと窓を見ると、真っ暗で夜になっていた。
「夜になってる…直近の記憶だと、うっ、何があったの」
私は起き上がろうとしたら、ベッドの横にリディアとフィリスが、体を預け眠っていた。
また、私皆に迷惑かけちゃったんだ。
「二人ともごめんね…」
私が優しくリディアを撫でると、気がついたようで体が動く
リディアは目を擦ると、起き上がった私を見て飛びついた。
「うう、アニエスちゃん!気がついたんだね」
少々大きな声と動きにより、フィリスも起きたようで、目を擦った。
「アニエスさん、お身体大丈夫ですか?」
「二人とも心配かけてごめんね、私は大丈夫だよ」
「アニエスちゃん、あれも、もしかして頭痛と一緒のやつ?」
「わからない…ローランが予想以上に強くて、私だと、どうやって戦うか考えてたら、体がうまく動かなくなってた」
自分の体がまるで、他人のような感じだった。
自身の動きを遠目で見守るような、異質な感じだ。
あの衝動に従っていたら、どうなってしまったのだろうか
考えるのも怖いが、紛れもなく私自身の思考だ。
「あの後、どうなったの?」
私がふと気になり二人に聞いてみると、リディアが答えてくれた。
「えっとね、アニエスちゃんが急に倒れ込んだ後は、皆慌ててシャーリーさんが治療院に走ったりしてたよ。ローランさんは一度解散して、宿屋に泊まってるよ」
ふむ、それなりの騒動が起きてしまったようだ。
続きの話を聞くと、病気や怪我をしてないのに体力が激的に低下をしていると治療院の人が言ったらしく、シャーリーが焦っていたらしい
そこにお父様が来て、騒動を収めたようだ。
「本当に、私迷惑かけてばかりだね」
こんなつもりじゃ、なかったはずなのに
どうして、こうなっちゃったんだろう
万が一、これが遺跡で起きていたらと思うとゾッとする
「そんな事ないよ!迷惑なんて思わないよ!」
「はい!それを言うと私の方が、もっとかけてます!」
二人にそう言われて、私は嬉しくなった。
「ごめんね、しっかりしなきゃダメだね!」
失礼しますと言う声と共に、シャーリーが入ってきた。
「お嬢様が、お目覚めになったので参りました」
ふと背筋が寒く感じたが、まずは伝えなきゃ
私は、シャーリーに向き合い話をした。
「心配かけちゃったね、いつもありがと」
「お嬢様の違う一面を見れた事ですし、大丈夫ですよ」
ニヤニヤするシャーリーを見ると、恥ずかしくなってきた。
「アニエスちゃん、顔真っ赤だよ」
「ふふ、仲がいい証拠ですね」
フィリスまで、私を揶揄いだしてきた!
「もう!私寝る!!」
恥ずかしさを堪えて、逃げるように私は寝ようとする
すると左右に、リディアとフィリスがくっついてきた。
えっ、ちょ、何、何なの
「暑いよ、フィリス、自分の部屋で寝ないの?」
「ダメですか?」
真っ直ぐ私を見つめて、そんな事を言われると断れなくなるよ
でも、正直暑いし色々考えたが、この状況を作ったのは私なので、受け入れる事にした。
「い、いいよ、でも暑いから、くっつかないでね」
私を元気つけるために、2人はこの様な事をしているのだろう
そう考えると、心が暖かくなる気持ちだ。
左右から、わかったよ!わかりました!と聴こえて、二人が飛びついた。
「ぎゃぁ!潰れる!」
全然二人とも、わかってないじゃん!
さらに二人は、私の歳を考えてない!
私は二人に押し潰されて、もがいていた。
「だぁぁ!離れて!暑いし、潰れて、死んじゃう!」
私をぬいぐるみと、勘違いしてるんじゃないの、と思うほどだ。
いやいや、今は何とかしなければ、命の危険を感じる
「お嬢様も元気になって良かったです。私は隣の部屋に戻りますので何かあればお呼びください」
優しく見守っていたシャーリーは、頭を下げて部屋から出て行こうしていた。
「ちょっ!シャーリー、二人を引き離して!」
私の声は二人にかき消されて、シャーリーはそのまま出て行った。
「ぷにぷに〜」
リディアが私の頬を、つんつんしてくる!
「すべすべです〜」
フィリスは頬を、触ってくるよ!
「やめ!誰か!二人を離して〜」
むすっとすると、左右からツンツンされる
「もう二人とも寝るよ!」
はーいと左右から聞こえた。
夜は蒸し暑いのにもう、と思いつつ目を閉じた。
こんな日もいいかもしれない
ずっと続いてほしい、と思ってしまう私だった。
朝日が昇り私は、むくっと体を起こす
窓を見ると、陽が昇ったところだった。
暑すぎて、殆ど眠れなかったよ
二人は夢の中だ、なんだかちょっと悪戯したいと思った。
収納魔法から、魔力ペンを取り出す
ふふ、私を散々苦しめた罰だよ!
魔力ペンは、魔力をインクの代わりに使い書くことができる
とは言っても、魔法とは違い大変だけど、水で消す事はできる
契約に使う時は、血を使うと消えないので、そちらが主となるのだ。
二人の顔に、落書きをしていく
顔に髭と〜、瞼に目を書いて〜
「ふふふ!ふは、ひひぃ、苦しっ!」
自分で書いたのに、面白いダメだ、声抑えれない!
私が笑うと、二人が起きたようだ。
「うーん、アニエスちゃん、早朝からどうしたの」
「おはようございます。何か面白い事で、」
フィリスは、リディアの顔が視界に入り、ふふっと笑う
「リディアさん、お顔、凄いことになってますよ」
「えっ!どんな風にって、フィリスちゃんも顔に、」
リディアも、フィリスの顔を見て笑う
共通点に気がついた二人が、ハッとした!
「ご、こめんね!でも、ふひひ、面白くてダメだ、笑い殺される!」
「よくもやったな〜、フィリス!やるよ!」
「はい!リディアさん!」
「え?何?何?」
二人が飛びかかり、本当に死ぬかと思った。
ぐぇっと声を出しながら、私は二人に抱きつかれる
「ぐるじぃ、離れて!溶けちゃう!潰れる!」
うう、眠い
目を擦りながら、私は起き上がる
あれ、どこまでが夢で、どこまでが現実?
起きると左右には、誰もいないかった。
タイミングよく、シャーリーが声をかけて入って来た。
「お嬢様、おはようございます。お体も問題なさそうですね」
「おはよう、昨日はありかとね。リディアとフィリスは?」
「お二人は、顔の落書きを落としに行ってます」
現実だったようだ。
シャーリーはため息を吐きながら、私を冷ややかな目で見てきた。
「お嬢様、大人げないです。貴族の令嬢たる振る舞いを覚える時が、来たようですね」
「シャーリー、私子供!」
ムキーと対抗するも、私の抵抗など簡単に崩されて、着替えさせられる
このヒラヒラも、だんだんと慣れてきたよ
日毎に新しく届いた服を変えつつ、着ていく
いつのまにか、服の種類も増えてるよ
そんな事を思っていると、リディアとフィリスが戻ってきて、怒りのオーラが見えそうだった。
「アニエスちゃん、おはよう。顔の落とすの大変だったよ」
「アニエスさん、ひどいです。あれ何ですか、全然落ちませんでした」
「二人ともおはよう、あれは魔力ペンという魔法道具だよ。魔力をインクの代わりに、使うことができる奴ね」
あっと、私はいい事を思いついた。
初期クエストの筆記用に渡してるから、収納魔法に沢山あるので、プレゼントしようと思ったのだ。
2本取り出して、私はリディアとフィリスに渡した。
「沢山あるから、あげるよ!」
二人は受け取ると、覗き込んだりしていた。
「先が丸いですが、どう使うのですか?」
「んとね、魔力を手からペンに送ると、魔力がそのままインクになるよ。魔力が元だから、物質であれば表面材質に書くことができるよ」
色は、黒色固定となる
他に血液を使う、魔法契約用の物もある
普通の魔力ペンでは、誰が書いたかわからないけど、魔法契約用は血液を使いそのまま書くので、血液から使用者を判別できる
契約にはこちらを使うことが多いのだ。
「ありがとうございます。アニエスさん、高い物と思いますが、良かったのですか?」
「魔法道具って、安い物でも金貨数枚だよね…」
リディアは震える手で、ペンを握っていた。
「沢山あるから気にしないで、顔の事を許してね。あ、あと、2人ともありがと…ぅ」
やっぱり感謝を伝えるのは、恥ずかしいよ
でも、元はと言えば、二人が悪いのではと思ったが、まぁいいや
二人がありがとうと言って、喜んでいた。
私はそれだけで、満足なのかもしれない。
シャーリーが手を叩き、注目を集めた。
「さて、仲直りした事ですし、朝食に行きましょうか」
私のお腹は、ぺこぺこだ。
私達は食堂へ向かった。
いつもと変わらないやり取りをして、席についた。
お父様、お母様に挨拶をして朝食を食べた。
「アニエス、昨日の事だが、ちょっといいか」
お父様から食後に話しかけられて、執務室へ向かった。
「アニエス、昨日倒れたのは、大丈夫なのか」
「お父様、体は特に問題ないです。可能性としか言えませんが、以前の体が影響してるかと思います」
「ふむ、古代遺跡の日程は先送りにするか?」
「いえ、予定通りで進めます。早いうちに防衛力を高めたいのです」
「そうか、だが、無理だけはするな。何かあれば話をしてくれ」
「ありがとうございます。所でお父様、ローランは何者なのですか?昨日力を見せてもらった所、尋常ではない様に思えました」
私は一番気になる事を、聞くことにした。
「ローランか、あいつは天性の戦士だ。生い立ちは優しいものではないが、子供の頃に初代剣聖に拾われて、一緒に訓練したらあの強さを手に入れたと言っていた」
それに継ぎ足される言葉が、普通ではなかった。
来る日も来る日も、剣術を叩き込まれて、それを直ぐものとする。
森に放り込まれて生き残り、1人で魔物の巣を壊滅させたと、聞いてると一大冒険をしてきた様に聞こえる。
初代剣聖から正式に剣聖の称号をもらい、その後は通り名が剣聖となる。
とある古代遺跡を1人で制覇した時に、あの装備を手に入れた様だ。
その後は、聞いた話の本の題材にされて、剣聖の名よりも銀の戦士の方が人気となったみたいだった。
「お父様、最初の拾われてというのは、そのままの意味ですか?」
私は聞いてはいけない気がしたが、気になっていたのだ。
「当時の剣聖の話だと、ふらっと立ち寄った村が、魔物によって滅んでいたそうだ。そこで1人生き延びていたのが、ローランだったらしい。村人を1人で埋葬して、死んだ者の剣を持ち、ギリギリ生きていた状態だった、とも聞いたな」
ちょっと想像できたけど、重かった。
その後、素質がある事もあり、剣聖がローランの師匠となって、様々な事を教えたらしい。
家族や村の人を自分で埋葬なんて、私はできないと思った。
「これ以上は私も知らないから本人に聞くしかないな。さて、古代遺跡を探索するなら、ローランを呼んで作戦を練るとしようか」
いつかローランが話してくれるのなら、聞いてみようと思う
「確かに作戦を練るのは必要ですが、お父様も参加されるのですか?」
お父様の言い方は、その話し合いに参加するような言い方だ。
「古代遺跡は危険が多いので、どんな風に動くのかは知っておきたい。私がアンナに言い訳を考えるのにも、日数などは気になるしな」
そう言う事なら私は構わないので了承した。
その後、シャーリーに宿に泊まってるローランを呼ぶようお願いした。
「さて、ローランが来るまで少し回復薬を作ろうかな」
量産型の色付きのは血を薄めれば作れるが、私の魔力回復には何本も飲まないとダメだ
そうなると最初に作った血、そのものを使った回復薬となる
誰にもバレてはいけないので、空き部屋にコソコソと入った。
「入れる魔法瓶に、切るのは契約用の小さなナイフでいいかな」
魔術契約は血判を使うことも多いので、指を切るようのナイフを持つものが多い
マジックリングを外して、その場所を私はナイフで切った。
「いっ!」
知っててやったが、痛くて声が一瞬出てしまった。
はぁ、私は弱いな、この程度の傷で声出しちゃうなんてね
切った傷から出る血を、魔法瓶に受け止める
3つほど補充しておこう
いつ見ても生々しいな、と眺めながら思った。
「よし、これぐらいで大丈夫だね」
薬で止血を行い、軽く布で巻きマジックリングを付け直すと、目立つ事もなかった。
魔法瓶を収納して、部屋を出て自室に戻った。
「アニエスちゃん、おかえり。もう話終わった?」
「お父様との話は終わったけど、ローランが来たら作戦会議するよ」
フィリスは、今日もメイド見習いをしているらしく、食事後に分かれたようだね
そんな事を話していると、シャーリーと一緒に到着したみたい
「お嬢様、ローラン様をお連れいたしました」
犬猿の仲っぽいのに、ちゃんと様つけて呼ぶの凄いなと感心した。
「嬢ちゃん、体は大丈夫なのか?昨日あんな事になってすぐ呼ばれるとは思わなかったぞ」
「うん、もう大丈夫、私こそ昨日はごめんね」
「大丈夫ならいいんだが、あの時、瞬間的にもの凄い殺気を放ってたし、何かあるのかと思ったぞ」
私は無意識に殺気を放っていたらしい
おそらく、どうやって倒すかを考えた時だろう
ローランに私の事を話すか、少し前まで正直迷っていた。
お父様の話を聞く限り、悪いやつじゃないから話せるところまでは話すつもりだ。
古代遺跡は、お互いに命を預ける事となる
ならば隠し事は少ない方が、お互い動きやすいからだ。
話は部屋にについてから、と言って移動をする
お父様の提案で、邸内の作戦室を使う事になっているからだ。
作戦室は特殊な材質で盗聴などができないらしい、元々有事の際に使うための様だ。
扉も堅牢で、意味もないのに飾ってあった。
シャーリーが開けて中に入ると、知識としてはある円卓状の作戦室だ。
「あ、アニエスちゃん、本当にここ使っていいの?」
「お父様が使いなさいって、言ってたから大丈夫だよ」
確かに私も初めて入ったけど、明らかに子供が居ていい場所ではなさそうだよね
おそらく歴代使われる時は、有事の際という事もあり、漂う重々しい空気がある
「座る所沢山あるから、好きな所に座ってね」
私は進行と説明の為に、正面に立っている
シャーリーがスッと踏み台を用意したので、その上に立ち高くなった景色に満足していた。
「まず初めにローランに話をしたい事がある」
「そんな改まるとちょっと、聞きたくなくなるんだが…」
「お互いに信用する為にね。でも他の人には言わないでね、最初は命を代償にした契約魔法を使おうかと思ったぐらいだからね」
「おいおい…耳を塞いでもいいか」
耳を塞ごうとするローランに、シャーリーが睨む。
「お嬢様の話をしっかりと、一言も漏らさずに聞きなさい」
ちょっとシャーリー怖いよ
「気楽に聞いてよ、まずは聞いて、後から気になる事あったら教えてね」
私はそう前置きをして、簡略的に自分は過去の記憶を持ってるので魔法を沢山使える事や、魔法道具なども収納魔法により扱える事を伝えた。
昨日の魔物召喚もその一部と伝えると、成程わかったと納得した。
「えっ?信じるの?納得しちゃうの?」
自分で説明しておいてなんだが、そのまま納得するとは思わなかった。
いろいろ聞かれる時のために設定を考えたのに…
「いやまぁな、実際見て魔物と戦ったしな、後付け足すなら俺の直感だ」
そう鋭い視線を発しながら、喋ったのだ。
やっぱり私の目は間違ってなかったと思う。
「ローラン、信じてくれてありがとう」
「依頼主様だ、信じれなかったら、冒険者なんてやれないな」
うわぁ、ちょっとカッコつけすぎで恥ずかしい。
でもやっぱり冒険者って、凄いなと思った。
「アニエス、ちょうど話が終わった所か?」
そう言いながら、お父様が入ってきた。
座っていた皆が立ち上がり、頭を下げる
「頭を上げてくれ、今日は領主としてではなく、アニエスの父親として話を聞きにきただけだから、楽に崩して話して構わないぞ」
そう言うと、一際大きいちょっと豪華な椅子に座る
そこに座るとやり難いとは思ったが、仕方がないので進めよう
「お父様、ちょっと無理があります、皆も聞いた通りだからまず座ってね」
お読みいただき、ありがとうございます。
ブクマやいいね、等ありがとうございます。
励みになります。
何か気になる事や、こうした方が良いのでは、とかここはダメという所など、あればコメント頂ければ幸いです。
正直自分でも読みづらく感じるので、今後変えたいと思います。
この領は夜から明け方は暑くなる地域です。
雪とか降る事はなく、夏はさらに暑いです。
アニエスは守る為であれば、体が傷付いてもいいと言う考えのままなので、自分の血を集めるのも抵抗ありません。
魔術の方には、血を使う物がある為、そこまで気にしないという方が正しいのでしょうかね。
次回は説明などしていきます。
お恥ずかしい話ですが、表記揺れが多数あるのを確認してます。
読みづらいかと思いますが、徐々に編集致しますので、何卒よろしくお願いいたします。




