第70話 鬼神戦争 急ノ参
このペースが楽なんだなぁ、と実感した今日この頃。
「速いですね」
「俊鬼第一位俊介」
「・・・分かりました」
まさかのここで、一位か。
特に意識するでもなく僕は地面を蹴る。
俊介は足を振り上げ頭を狙って、横に振る。
僕はそれを左腕でガードし、肩で振動を右へと移し、右足を斜め前に出し、体を捻る。
ガードに浸かって感覚の曖昧な左手で脚を掴み、足を持った背負い投げ・・・と言っても重心はまだ腰に残っていたので不完全で、吹っ飛ばすだけに留まる。
地面で跳ねながらうまく受け身をとり、立ち上がると、俊介はすぐ僕に向かって寄ってくる。
足を振り上げながらの、後頭部を狙った文字通り、当たれば必殺。
僕はそれに対して近づいて行く。
反らせた体に極限にまで力を籠め、バネが縮むのと同じような通りで、足を振るう。
僕はその攻撃を、両手をクロスして受け止める。
鬼門。衝撃を関節に逃がす、完全防御技。
ズガァァァァァァァン!!
俊にしては重たい一撃が、僕の腕を支配する。
僕は手首を返しながら左手で脚を掴み、グッと横へ捻る。
体が捻られ、這いつくばる。
ゴキッ!
が、驚愕に見舞われたのは僕だった。
静かに、掴んでいた脚じゃなく、反対側の足で、関節を決められたのだ。
バキッ!
肩を持ち上げ、上腕骨の骨端部分を肩甲骨にはめ直す。
「痛ッ~・・・痛いなぁ」
「それはお互い様でしょ?」
「やめてその口調、僕と被る」
「?何の話だか分からんが、そうするか」
「それで・・・」
「どっちが俊を背負うか、決めるか」
「僕人間なんだけどなぁ・・・やろうか」
「おうよ」
地面を蹴れば、完全に同期した蹴り技が、真芯で交差する。
片手を地面に着き、振りぬかんと。
僕は上半身の体の勢いを使って角度をずらし、裏拳を振るう。
膝の皿を割る音がしながら、俊介は後ろに飛ぶ。
そのまま、核を探す・・・のだが。
「無い」
「そら、俺は鬼じゃねぇからな」
「・・・そういうことね」
俊介は、俊介として生きた一人の人間が、宿命によって悠久を生き、そして恐れられて死んだ男の一生の残滓。僕と顔が似ているのは何ら不思議ではあるまい。
「初代佐藤俊介、さらばです」
「ははは!気付いたか!」
「嫌なことにもね・・・」
「それじゃ、失礼する前に、額出せ」
「・・・?」
トンッ・・・
人差し指と薬指で、額を押すようにすると、何かがスッと軽くなる。
「よし、これで収まりはしないが。まぁ、まともになるだろう。
目を開けて見ろ」
「・・・」
目を開けると、あの右目を襲う痛みが治まっていた。
そしてみたのは、鏡で見たときの僕とそのまんまだったのだ。
「隔世遺伝か」
「つっても隔ててねぇが、それは良い。あと言っておくが、妖に頼れ、神を信じろ、背負い過ぎるな。気を付けろよ・・・ってしゃべりずらいね。ま、頑張って」
「はい、分かりました」
そう言って黄色い光が漂い、つぎのコマで炸裂すると、そこには跡形もなく、葉が吹き荒れるといった具合だった。




