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第5話 荒地開拓伯令嬢、残り四十九日(2)

 武器庫の検分は、その日のうちに行われた。


 兵士長ブラムは鉄の鍵束を腰へ下げ、特使と書記を案内した。城兵が使う槍、盾、剣、弩。予備の革鎧と鎖帷子。民兵へ貸し出す鉈や短槍。魔物の油を焼く火矢まで、棚と箱には番号が振られている。


 若い書記が台帳を読み上げ、ブラムが現物を示した。三年間、存在しない伯爵の名で管理されていた武器だが、一槍の不足もなかった。


「見事な管理です」


 エルマーは率直に言った。


「王国兵へ引き継ぐ物です。減らしておくわけにはいきません」


「では、鍵をお預かりしたい」


「お断りします」


 ブラムも率直に答えた。


「王命には、武装解除の準備が整うまで、住民を魔物から守る兵力を維持せよとあります。鍵を渡し、武器を出せなくなれば、今夜の柵番を置けません」


「封印を施し、緊急時には本官の立ち会いで開ける形ではどうか」


「特使殿は、北端の村の柵まで馬でどれほどかかるかご存じですか」


「知りません」


「半日です。夜中に魔物が出てから鍵を取りに戻れば、朝には村がなくなっています」


 これは距離というより、地形のためである。


 エルマーは武器庫を見回した。


「しかし、王国に属さぬ兵が百人以上、武装を保つことになる」


「代わりの王国兵は、いつ何人来ます」


「聖樹植定使節団には、白樹騎士が同行する手はずです」


「何人で、どの柵を守ります」


「詳細は、後日通知される」


「では、詳細が来るまで鍵は私が持ちます。先に武装を解くよう命じられるなら、その後に出た死者、家畜、畑の被害を、誰が補償するのか書面でください。私の兵は従わせます」


 ブラムの後ろには、二人の倉番が立っていた。命じられれば鍵を渡すだろう。だが、命令がないうちは、一歩も動かない顔をしている。


 エルマーは、扉と台帳へ検分済みの封蝋をつけることで妥協した。鍵はブラムが持ち、武器も動かさない。封が切れた場合は、理由と使用数を記録する。


「兵士長殿。あなたは、アクシス・キリハルトの命令なら王国へ刃を向けますか」


 武器庫を出たところで、エルマーが尋ねた。


 ブラムは少し考えた。


「お嬢さまがそう命じれば、まず止めます」


「止まらなければ?」


「兵を連れて村へ下がります。お嬢さま一人なら、王国軍にも何とか止められる者がいるでしょう」


「忠誠がないように聞こえる」


「開拓団兵士長の忠誠は、主人の間違いへ一緒に飛び込むことではありません。後ろの百人を、生きて持ち場へ帰すことです」


 ブラムはそう言い、鍵束を腰へ戻した。


     ◆


 公示が六つの村へ回ると、最初に動いたのは古参の木こりたちだった。


 ガルドとともに最初の街道を拓いた者、その息子、森で仲間を失った猟師。鉈、弓、木槌を持った三十人ほどが、第二村から城へ向かおうとした。


 王使を殺すつもりだと言う者はいない。ただ、帰れと言う。アクシスが戻るまで城から出さない。そのために人数をそろえるのだと口々に話した。


 第二村を出た先で、道が塞がれていた。


 低い魔蔓が街道を横切り、棘のある枝を伸ばしている。その手前に、黒髪の女が一人で立っていた。


 カリナは大鎌・黒刈《リーパー》を低く構え、道端へ刃を滑らせた。長い柄についた横刃が魔蔓の根元をすくい、土の下の白い根まで断つ。返す刃で、足首へ絡もうとした細蔓を刈り払った。


 彼女は三十人へ一度だけ目を向け、また蔓の処理へ戻った。


「皆さん、持ち場へお戻りください」


「カリナ様、俺たちは、お嬢が帰るまで王使を――」


「囲むのですか」


「話をするだけだ」


「鉈と弓を持った三十人で、ですか」


 男たちは答えなかった。


 カリナは切った蔓を道の外へ蹴り出した。声も表情も変わらない。


「木こりが一人で鉈を持てば仕事です。三十人で王使を囲めば、兵になります。兵が王使を囲めば、反乱です」


「王都のやつらに、好きにさせろっていうのか」


「いいえ」


 短い返事だった。


「アクシスは帰ってきます。帰る道を、こちらから塞がないでください」


「だが、今のうちに城を取られたら」


「取らせません」


「二人しかいない王使を、帰らせた方が早い」


「早くありません。その次は、二百人で来ます」


 古参の一人が、鉈を握ったまま前へ出た。カリナよりも頭一つ大きく、ガルドと同じころから森へ入った男である。


「姐御。あんたは腹が立たねえのか」


 カリナはしばらく男を見た。


「立っています」


「だったら――」


「腹を立てたまま仕事をしてください。北柵の夜番が二人足りません。橋の補修も残っています。王使へ見せるなら、武器ではなく、私たちが作ったものを見せてください」


 怒鳴りはしない。命令口調にもならない。ただ必要なことを、丁寧に伝える。


 男はしばらくカリナをにらんでいたが、やがて鉈を腰へ戻した。


「分かった。北柵へ行く」


「お願いします」


 一人が戻ると、ほかの者も続いた。カリナは誰にも礼を言わせず、最後の一人が村へ引き返すまで見送った。


 それから黒刈を持ち直し、道を塞いでいた魔蔓の残りを刈り始める。


 アクシスが帰るまで、道も人も、余計なところで失わせるつもりはなかった。


     ◆


 王使が来て五日目、開拓総監マルクは、三枚の大きな図面を広間へ持ち込んだ。


 一枚目には、まだ木を伐り始めたばかりの新規開墾地が描かれている。二枚目は、既存の橋、水路、街道の補修。三枚目には、根焼き、閉鎖林の柵、魔性植物の刈り取り、魔物の巡回路が赤い墨で記されていた。


「第一の仕事は、本日から止めました」


 マルクは特使エルマーへ説明した。


「新しい畑を増やすこと、新しい道を森へ延ばすこと、王領となる土地から木材を運び出すこと。これらは、領地の拡張と見なされても仕方がありません」


「第二と第三は?」


「続けます」


 エルマーは図面へ目を落とした。


「現状を変えぬよう命じたはずだ」


「何もしなければ、現状は変わります」


 マルクの欠けた指が、水路の線をたどった。


「この水門は五日ごとに泥を上げなければ、南の畑へ水が回りません。この橋は冬の凍結で二本の桁《けた》が割れています。補強を止めれば、聖苗を載せた荷車が通る前に落ちます」


 次に、赤い墨で囲まれた森を示す。


「根焼きを止めれば、地中でつながった魔性樹が村の近くまで戻ります。閉鎖林の柵を空ければ、魔物も出ます。これは新しい土地を得る仕事ではありません。すでに住んでいる者を、明日も住まわせるための作業です」


「すべてを認めれば、開拓の継続と区別できない」


「でしたら、特使殿がお決めください。止める場所へ印を。その工事を止めた場合、何日目に何が起きるか、こちらで添えます」


 エルマーは返事をせず、図面を若い書記へ回した。図面の隅には、必要な人数、牛、材木、日数まで書かれている。現場を見ずに、一括して止められるものではなかった。


「あなたは、キリハルト家へ土地が返らなくても構わないのですか」


 エルマーが尋ねた。


「構いません」


 広間にいたブラムが、マルクを見た。リディアは動かなかった。


「私どもは、キリハルトの旗を立てるためだけに三十年働いたわけではありません。麦を作り、子を育て、魔物に食われず死ねる土地が欲しかった。王国がそれを保証するなら、城の主人が変わることに反対する理由はありません」


「王国は、住民の安全を保障する」


「畑と家は?」


「個々の権利は、今後の調査によって確認する」


「墓地と水路と、共同で使っている薪炭林は?」


「それもだ」


 マルクは、そうですか、とだけ答えた。納得した声ではない。


「昔、森を拓いた者には、拓いた土地を与えると聞きました」


「墾森永年私財令か」


 エルマーも法律の名は知っていた。


「古い勅令だ。すべての開拓地へ無条件に適用されるものではない。ガルド卿へ与えられた契約との関係も調べる必要がある」


「では、調べてください」


 マルクは三枚の図面をそろえた。


「私たちも調べます。畑が残るのか、王都の言葉だけでなく、自分たちの目で確かめます」


 その言葉を、リディアは止めなかった。


 キリハルト家へ忠誠を誓うことと、ここで生きることは同じではない。アクシスが守ろうとしている者たちにも、それぞれの望みがある。それを縛りつけて残らせるなら、王国や教団と何も変わらなくなる。


「マルク総監」


 リディアが呼んだ。


「原契約は、どこにありますか」


「ガルド様が最初に持ち込んだものなら、城の古い文書庫です。写しは開拓館にあるはずですが、鼠と湿気が先に読んでいるでしょう」


「まだ中身を調べなくて結構です」


 娘が戻っていない。王使も城にいる。古い契約を探し回れば、何かを隠そうとしていると疑われる。


「所在と状態だけ確かめてください。動かさず、確認した者の名も残すように」


「承知しました」


 後に土地を守るための紙は、このときまだ、古い文書庫の奥で眠っていた。


     ◆


 アクシスが王都を出て九日目、エルマーは新たな通知書をリディアへ渡した。


 聖樹植定使節団は、王会議から数えて第十六日に王都を発つ。聖女ネリア・ルートレイス、聖域監督司祭セヴェラン・ホワイトバーク、白樹騎士、樹医、庭師、王国書記、荷車隊が同行する。王家からは、剣士ゼノ・ブルーウィロウが監察役として加わる。


 魔寄せの森へ到着するのは、第二十八日の予定だった。


「使節団の宿舎、馬の飼葉、聖苗を安置する場所、儀礼場、植樹候補地を用意していただきたい」


 エルマーは広間へ集まった者たちへ告げた。


「聖苗は国防上重要な聖物だ。受け入れの遅滞は、王命への妨害と見なされる場合がある」


「人数は何名ですか」


 リディアが尋ねた。


「確定していない」


「荷車と馬は」


「同じく、編成中だ」


「必要な飼葉の量も、まだ分かりませんのね」


「先触れが知らせる」


「先触れは、いつ到着しますか」


 エルマーは眉間を押さえた。王命を拒まれたときの返事は用意していたが、受け入れるための数字を求め続けられるとは思っていなかったらしい。


「詳細を、王都へ照会する」


「お願いいたします。人数が分からなければ、寝台もパンも用意できませんもの」


 ブラムも手を上げた。


「白樹騎士は、誰の指揮で、どの門から入ります。城内に武装したまま泊まるなら、こちらの兵との区別が必要です」


「使節団の指揮下だ」


「魔物が出た場合、私の指示を聞きますか」


「それも照会する」


「お願いします」


 マルクは通知書へ目を通し、植樹候補地という言葉を指で叩いた。


「地盤と地下根を調べるには、最低でも十日必要です。どの程度まで根を張る聖苗か、資料をいただけますか」


「世界樹の聖苗だ。土地を清める」


「清める速さと、根を伸ばす速さは同じですか」


「私は樹医ではない」


「では、樹医へ聞いてください」


 最後に、カリナが口を開いた。


「閉鎖林へ入る場合は、先に知らせてください」


 エルマーが、黒髪の女へ顔を向ける。


「聖職者であっても、魔物は区別しません。勝手に入られた場合、助けられないことがあります」


「脅しかね」


「注意です。死なせたくありませんので」


 カリナはそれだけ言い、黙った。


 エルマーは一人ずつを見回した。


 誰も王命を拒んでいない。使節団も聖苗も受け入れると言う。ただし、人数を示せ。馬を示せ。飼葉を示せ。指揮系統を示せ。聖苗の根を示せ。森へ入るなら、森の決まりを守れという。


 アクシス・キリハルトが帰っていない七日間、特使は城内へ入り、公示を行い、武器庫を検分した。しかし署名は一枚も得られず、武器の鍵も台帳の原本も受け取れていなかった。


 抵抗されているとは言い切れない。


 協力されているとも、とうてい思えなかった。


     ◆


 第十一日の夕刻、アクシスは魔寄せの森へ戻った。


 森の入口に立つ街道標を見たとき、胸の奥へ詰まっていたものが少しだけ軽くなった。石柱には、キリハルト家の斧と若木の紋章が彫られている。その下へ、新しい木札が打ちつけられていた。


『王国直轄予定地。国王陛下の許可なく、土地、木材、鉱物その他を移動することを禁ず』


「仕事が早いですこと」


 アクシスは木札を引き抜こうとして、手を止めた。


「お取りになりますか」


 馬車からローデンが尋ねる。


「やめておきますわ。帰って最初の仕事が、王命の札を引っこ抜くことでは格好がつきませんもの」


「十日前でしたら、迷わず抜いておいででしたな」


「十日ぶん、淑女になりましたの」


 アクシスは札を残し、馬を進めた。


 街道を行くにつれ、見慣れたものが増えていく。幹へ目印を刻んだ大楢。荷車を避けるために広げた曲がり角。雨のたびにぬかるみ、何度石を入れても沈む道。王都から続く整った街道より、ずっと歩きやすく感じた。


 第一村の見張り塔にも、王命の写しが貼られていた。


 畑から戻る者たちが、アクシスの姿を見つける。すぐに声を上げ、駆け寄る者がいた。深く頭を下げる者もいる。一方で、道の端へ避けたまま目を合わせない者、王命の紙とアクシスを見比べる者もいた。


 アクシスは、全員が自分の帰りを喜ぶとは思っていなかった。


 三年間、父が生きていると偽ってきた。そのために守れた暮らしがある。だが、騙されたという事実まで消えるわけではない。


「お嬢さま!」


 鳥便を運んだ鐘番の少年が、塔から駆けてきた。


「鳥、届きました。俺が城まで持っていきました!」


「よくやりましたわ。あの子は?」


「餌を食って寝てます。羽が二本、折れてたけど、鳥番が治すって」


「でしたら、麦を多めに食わせてやってくださいまし。王都の早馬に勝った功労者ですの」


 少年の頭を撫で、アクシスはまた馬を進めた。


 城へ続く最後の坂道で、金属の刃が草を擦る音が聞こえた。


 道へ倒れた若い魔性樹へ、黒い蔓が絡みついている。木こりたちが枝へ縄をかけ、その周りを小柄な女が歩いていた。


 カリナは大鎌の横刃を蔓の下へ差し込み、手前へ引いた。刃が蔓を断つのと同時に、柄の途中へついた握りを返し、跳ねた棘を道の外へ払う。細い体で大きな鎌を振り回しているようには見えない。刃が通る場所へ、必要なぶんだけ体を移していた。


「姉上!」


 アクシスが馬を下りる。


 カリナは黒刈《リーパー》を止め、振り返った。十日前と変わらない顔だったが、目の下には薄く疲れが残っている。


「お帰りなさい」


「ご無事でしたの?」


「はい」


「王都の特使は」


「母上が、七日ほどお茶をお出ししています」


「まだ城にいるんですのね」


「お帰ししても、次が来ますので」


 カリナは黒刈の刃についた樹液を、布で静かに拭った。


「署名はしていません。武器庫の鍵も、台帳も渡していません。公示は、全村に出ました」


「村のみんなは?」


「割れています。残りたい者、移りたい者、王国へ渡した方がよいと言う者もいます」


 アクシスの眉が上がった。


 カリナは、妹が口を開く前に続けた。


「話は、城で聞いてください。怒るのは、その後にしてください」


「怒ると決めたわけじゃございませんわ」


「顔がそう言っています」


 カリナは言い終えると、木こりたちへ向き直った。


「縄を引いてください。ゆっくりで結構です」


 男たちが縄を引く。倒木が道の端へ動き、荷車一台が通れる幅が空いた。


「姉上は、どうしてここに?」


 アクシスが尋ねた。


「あなたが帰ってくる道ですから。空けておきました」


 カリナはそれだけ言い、黒刈を肩へかけた。


 姉に先導され、アクシスは城への坂を上った。


 城門は開いていた。


 王国特使の旗が客舎へ立っている。城壁にはキリハルト兵がつき、いつもどおりの交代で門と柵を守っていた。誰も武器を奪われていない。広場には荷車が入り、倉番が種麦の袋を数えている。


 門をくぐると、赤毛の森猟犬が飛び出してきた。


「コッパ!」


 アクシスは腰を落とし、突っ込んできた犬を両腕で受け止めた。コッパは十日ぶんの匂いを確かめるように、顔と肩へ鼻を押しつけ、尾でアクシスの腕を何度も叩いた。


「元気にしてましたのね。誰かを噛みませんでした?」


「王使の靴を一足」


 後ろから来たブラムが答えた。


「中身は入っておりませんでした」


「それなら大健闘ですわね」


「勲章でもこさえましょうか」


 懐かしい顔が、次々に見えた。兜を抱えたブラム。城の階段を下りてくる母リディア。墨で汚れた図面を丸めているマルク。誰も無傷とは言えない顔をしている。それでも全員が、自分の持ち場に立っていた。


 アクシスは城壁、武器庫、倉、兵士、村から来た荷車を見回した。


「上手くいったようですわね」


 胸に抱いていたコッパを下ろし、ようやく息をつく。


「今のところは、ぎりぎり上手くいっております」


 ローデンが、馬車から降りながら訂正した。


「奥方様が署名を止め、ブラムが武装解除を止め、カリナ様が暴発を止め、マルク総監が工事の全面停止を止めました。お嬢様の鳥便が、最初の一日を稼いだおかげです」


「それなら、勝っているんじゃございませんの?」


「止めただけです。土地を一寸たりとも取り返したわけではありません。公示は終わり、開拓団は割れ、王国特使は城の中におります」


 ローデンは指を一本立てた。


「王会議から十一日。残り四十九日です」


 もう一本、指を立てる。


「聖樹植定使節団の到着までは、十七日」


 アクシスは、客舎へ立つ王国旗を見た。


 自分たちの城に、他人の旗がある。怒りは湧いた。しかし王都で判決を聞いたときのような、手足を縛られる感覚はなかった。


 母たちは、土地を守り切ったわけではない。勝利を得たのでもない。ただ、アクシスが帰るまで、負けなかった。


 四十九日と、十七日。


 何もないところから道を作るには、十分とは言えない。それでも、ゼロではなかった。


「ここからが本番です」


 ローデンが言った。


「今度の相手は、魔物でも樹木でもありません。命令書、契約、住民の不安、王国の面子です。開拓《フロンティア》で叩けば、お嬢様の負けです」


「紙と印章でできた森、というわけですのね」


「根は人の腹の中にございます。生木より厄介でしょうな」


 アクシスは開拓《フロンティア》を肩へ担ぎ直した。


 難しい。斧で割れず、力で押せず、どこへ刃を入れれば倒れるのかも分からない。だからこそ、腹の底から何かがせり上がってくる。暗根王の閉鎖林を初めて前にしたときと、よく似た高揚だった。


 誰も道を知らないなら、自分たちで探すしかない。


「上等ですわ」


 アクシスは王国旗の立つ城を見上げ、歯を見せて笑った。


「誰も道をつけてねえ森なら、わたくしの仕事ですの。四十九日で、通れる道を一本こじ開けてやりますわ」



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