第3話:節約投石ビルドの初勝利
いつもお読みいただきありがとうございます! 第3話です。
今回は街の郊外でレアモンスターに遭遇したフリシアが、コストゼロの投石ビルドで一発逆転を狙うお話です。
ギルドの冒険者たちとの微妙な認識のズレもお楽しみください!
夕暮れ時の淡い日差しが、郊外の草むらに残る水たまりを照らしていた。フリシアは小石でパンパンに膨らんだリュックのベルトを締め直した。一日中スライムを狩ってスライム結晶を集めていたため、袋の中の小石はすでに半分近くに減っていた。
しかし、スライム相手に投石の練習を楽しく続けていたせいで、気がつくといつもより奥の林に足を踏み入れてしまっていた。
ジュプッ……ジュプッ……。
妙な移動音が前方から聞こえ、フリシアは足を止めた。茂みの隙間からじっと視線を凝らす。
そこにいたのは、普段見かける柔らかい緑色のスライムではなかった。全身が透き通った鮮やかな青色で、通常の倍以上の大きさを誇りメイジのような魔力のオーラを体内で渦巻かせている「Elite Slime」だった。
(うわぁ……Elite Slime! めったに出現しないレアモンスターじゃない!)
フリシアの姿を認識した瞬間、Elite Slimeが即座に反応した! 身体を小さく縮めたかと思うと高速で跳ね回り、連続で「Water Ball」の魔法を放ってきた!
ドカン! ドカン!
フリシアは地面を深く抉る水弾を必死で身を翻して回避した。全身泥まみれになり、古い作業着の裾が枝に引っかかって破れていく。
(タフだし、すごく速い! 石を何個投げても、水の水圧で弾き飛ばされちゃう!)
緊迫した戦闘が続いた。フリシアはジグザグに走り回り、木の陰に隠れながら冷静に観察を続けた。リュックの中の石は減り続け、残りわずかとなった……だが、フリシアは変化を見逃さなかった。
Elite Slimeの青いオーラが弱まり、水弾の発射ペースが落ちていく。魔力(MP)が切れかけているのだ! そして最後の魔力を振り絞り、身体を縮めて逃走の跳躍を見せようとしたその瞬間、胸の開口部付近で体内の魔力核が眩しく光った!
(魔力核が露出した!)
フリシアはこの千載一遇のチャンスを逃さなかった。しっかりと踏み込み、リュックから手頃な大きさの小石を二個、超絶怒涛の速度で取り出した!
「Rapid Throw!」
シュッ——ドカン!! ドカン!!
幼い頃からの農作業で鍛え上げられた腕力と、威力を数倍に跳ね上げるスキル効果。ただの小石であっても、短剣の突きを越える破壊力で空気を切り裂いた!
一個目の小石が中央の魔力核に直撃して亀裂を入れ、間髪入れずに二個目の小石が同じ場所に叩き込まれた!
Elite Slimeの青い身体が水しぶきとなって散り、消滅した跡には巨大な「透き通った青い魔石」だけが残された。
「ハァ……ハァ……危なかった……」
フリシアは額の汗を拭い、息を荒らげながら破れた服を見下ろした。そして地面の魔石を拾い上げ、ニンマリと笑った。
「こんなに大きかったら、きっと高く売れるよね!」
……
冒険者協会。
泥と泥水で汚れ、服も破れてボロボロになったフリシアは、空になった石の袋を背負って素材買取カウンターへと歩み寄った。
「お姉さん、スライム討伐の報告です」
フリシアはニコニコしながらスライム結晶の袋を置き、その隣に大きな青い魔石を並べた。
「あと、これもクエストに含まれますか?」
受付の女性職員は目を見開き、その魔石を二度見した。
「これって……Elite Slimeの魔石!?」
職員の悲鳴のような声に、周囲の冒険者たちが一斉に振り向いた。
「お嬢ちゃん……これを一人で倒したの!? Elite Slimeは魔法を使うし動きも速いから、近接職じゃ斬りつけることすら難しいのに!」
「剣で斬ったんじゃないですよ」フリシアは正直に答えた。「投擲スキルを使いました」
「はぁぁぁ!?」
少女の言葉に、受付職員も周りの冒険者たちも素頓狂な声を上げた。
その時、一人の先輩スカウトが心配そうな表情でフリシアに歩み寄ってきた。
「お嬢ちゃん……なんで投擲ビルドなんて選んじゃったんだい?」先輩スカウトは溜め息をつきながら説明した。「Rapid Throwは武器を投げて失っちゃうスキルだ。短剣一物で銅貨数百枚もするのに、投げたらあっという間に破産しちまう……」
フリシアは照れくさそうに頬をかいた。「あ……あの、私、短剣を買うお金がなくて」
「え?」
「手持ちの銅貨が数枚しかなかったからナイフが買えなくて……だから投擲スキルを上げて、道端の小石を投げてたんですよ……」
フリシアは背中の空の袋を指さした。
少女のあまりにも純粋で切実な答えに、ギルド内の空気は一瞬で静まり返った……。
聞き耳を立てていた周囲の先輩冒険者たちは、古い作業着をボロボロにし、泥まみれになりながら、ナイフが買えないせいで重い石の袋を背負って戦っていた小さな少女を見つめた。
胸を突くような哀れみと感動が爆発し、筋肉モリモリの男たちの中には目頭を押さえる者まで現れた!
「ううっ……なんて可哀想な子だ……」
先輩スカウトは目を真っ赤にし、大慌てでアイテムバッグからピカピカに磨かれた高級鋼鉄ダガーを取り出し、震える手でフリシアに差し出した。
「これを持っていきなさい! もう石なんて拾って投げなくていいんだからね!」
「ええっ!? いえ、大丈夫です! 申し訳ないです!」
フリシアは慌てて両手を振って辞退した。頭の中には大きな疑問符が浮かんでいた。
(えっ……なんでみんなそんなに悲しそうな顔してるの……?)
(道端の石ならコスト0だし、投げ捨てても回収しなくていいし、スキルの威力補正で安いナイフで斬るよりずっと強いのに……)
「お邪魔してすみません!」受付の女性が重みのある金貨袋をカウンターに置いた。「こちらが今回の報酬です! ちょうど掲示板にElite Slimeの指名手配が出ていたので、普通の報酬よりずっと高額になっていますよ!」
フリシアは袋を受け取り、中を覗き込んだ。輝く銀貨と銅貨がどっさり入っている! これなら何週間も美味しいものが食べられる量だ!
「わぁぁ! こんなにもらえるんですか!?」
フリシアの目が輝き、頭の中の疑問は一瞬で吹き飛んだ。
「お姉さん、ありがとうございます! お兄さんたちもありがとうございました!」
丁寧にお辞儀をした少女は、お金の袋をしっかり抱え、家族のために温かいチキンとパンを買いにギルドを飛び出していった。
ボロボロの服を着た小さな少女が笑顔で走り去っていく後ろ姿を、ギルドの面々は温かく、そして目頭を熱くしながら見送っていた。
「なんて健気な子なんだ……たくましく生きろよ……」
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ステータス確認
名前:フリシア・バーハート
職業:スカウト(Scout)
Base Level:1
Job Level:2
Skill:Rapid Throw Lv.2
Hiding Lv.1
第3話をお読みいただきありがとうございました!
「コスト0だから最強」というガチ勢思考のフリシアちゃんと、「お金がなくてナイフが買えない悲劇の少女」と勘違いするギルドの冒険者たちの温度差がお届けできたでしょうか(笑)。
「フリシアちゃんの勘違い無双(?)が面白い!」「投石ビルドの今後が気になる!」と思っていただけましたら、ぜひページ下部の【ブックマーク登録】や【評価(★★★★★)】、【フォロー】で応援していただけると大変励みになります!
次回(第4話)もどうぞお楽しみに! ✨




