第2話:スカウト転職と『クソスキル』の真価
いつもお読みいただきありがとうございます! 第2話です。
今回は初期転職、家族との温かい食卓、そして異世界人が誰も見向きもしない『あのスキル』に主人公が目を付けるお話です。
楽しんでいただけたら嬉しいです!
気持ちの整理がついたフリシアは、諦め半分で近接戦闘系のカウンターへと向かった。
「どの職業に興味があるんだい? 君のSTRとAGIならアタッカー系にぴったりだけど、少し考えてみるかい?」
1次職のファイター系には以下の職業が並んでいた。
ソードマン(Swordman)、フェンサー(Fencer)、スカウト(Scout)、エクスプローラー(Explorer)、そしてアーチャー(Archer)……。
フリシアは迷わずスカウトのカウンターへと歩み寄った。
「スカウトに転職したいのかい、お嬢ちゃん?」受付の職員が優しく微笑む。「ステータス基準はクリアしてるけど、『敏捷性テスト』に合格する必要があるよ」
試験内容は、揺れる丸太、泥の堀、ロープアクションといった障害物コースを駆け抜け、5分以内に塔の頂上にある『試験用クリスタル』を持ち帰るというものだった。
「それじゃあ、スタート——」
試験官の声が終わるか終わらないかの瞬間! フリシアの小さな身体が風を切って飛び出した!
AGI 10の補正と、前世で数多くの迷宮を走り込んできた記憶が融合する。丸太をかわし、壁を蹴り、STR 10の腕力でロープを掴んで泥の堀を華麗に飛び越えていく!
あっという間に——フリシアは戻り、開いた口が塞がらない試験官にクリスタルを手渡した。
「ご、合格! 協会新記録の爆速合格だよ!!」
【 転職が完了しました:職業『スカウト』を獲得 】
【 職業スキルを獲得:ハイディング(隠伏)Lv.1 】
フリシアは目を輝かせた。格好いい隠密ポーズを思い浮かべ、すぐさまハイディングを発動! 近くの太い柱の陰へと飛び込んだ!
試験官はキョロキョロと周囲を見回し、柱の方を見ると思わず吹き出した。
「あれ〜? どこに行っちゃったのかな〜? お嬢ちゃん……お尻と足が柱から半分以上丸見えだよ?」
フリシアは跳ね起き、真っ赤な顔でスキルを解除した。
「す、スキルLv.1じゃこれが限界なんですよ! もうっ……!」
「ハハハ!」職員は微笑ましそうに笑った。「メインの戦闘スキルは、クエストでジョブレベル(Job Lv)のポイントを溜めてから指導員に教えてもらうんだよ。それと、向かいの武器屋で初期用のナイフを買いな。スカウト用ナイフは銅貨800枚だよ」
フリシアはズボンのポケットを探り……手元にあるのは銅貨5枚。
(ど、銅貨800枚!? ネットゲームみたいに初期武器の配布はないのー!?)
……
それからの2週間、フリシアは最下級の見習い冒険者クエスト『傷薬草の採取』に明け暮れた。
自作の固い木の枝を武器代わりに持ち、邪魔をしてくる野生のスライムを叩きのめす。切れ味のない木の枝だったが、幼い頃からの畑仕事で鍛え上げられたSTR 10の一撃は、スライムを吹き飛ばして破裂させるのに十分な威力だった。
一日中走り回って薬草を摘み、スライムの体液で服を汚した疲労は、フリシアが大きな油紙の包みを二つ抱えて家に帰った瞬間、吹き飛んだ。
焼き立てのハーブチキンと、バターの香ばしいパンの匂いが、小さな土の家のキッチンに広がった。
「ただいま、みんな!」
フリシアが明るい声を上げ、古い木製テーブルの上に包みを置いた。
畑仕事で腰をさすりながら帰ってきた父親と、薄い野菜スープの鍋を火にかけていた母親が足を止めた。育ち盛りの弟と妹が駆け寄り、黄金色に輝くチキンとふんわりとした白いパンに目を丸くした。
「フ、フリシア……これ、どうしたの!?」母親が声を震わせる。「こんな高いもの……お金はどうしたの!?」
「今日の薬草採取クエストの報酬だよ!」フリシアは胸を張った。「木の根元を深く探したら、上質な薬草がたくさん採れたの! 報酬をもらってすぐベーカリーとチキン屋さんに行ってきたんだ!」
フリシアは包みを開け、温かいパンをちぎって弟妹に手渡した。
「ほら、食べて! 今日はお姉ちゃんの奢りだよ!」
子供たちはパンにかぶりつき、涙を浮かべて「おいしい!」と声を上げた。黙って見ていた父親が歩み寄り、長年の農作業でゴツゴツとした手をフリシアの頭に優しく置いた。その手がかすかに震えている。
「ありがとう、フリシア……。でも、このお金は自分の服や、護身用のいいナイフを買うために使うべきだ。父親なのに……幼いお前に苦労をさせて申し訳ない……」
父親の声が申し訳なさで掠れていた。フリシアは首を振り、父親の温かい手を両手でぎゅっと握り返した。
「そんなこと言わないで、お父さん!」フリシアは心からの笑顔を見せた。「私の夢は、格好いい冒険者になることだけじゃないよ……一番の夢は、お父さんもお母さんも弟たちも、みんなで美味しいものを食べて笑ってくれることなんだから!」
10歳の少女の温かい言葉に、母親は堪えきれずにフリシアを強く抱きしめた。父親は感涙を隠すように顔を背け、嬉しそうに笑った。
寂しかった食卓は、子供たちの歓声と温かい家族の笑顔で満たされた。
スライムを何百匹倒そうと、この笑顔が見られるなら安いものだ。
そしてついに——フリシアのジョブ経験値バーが満タンになった!
【 ジョブレベルアップ! スキルポイントを獲得しました 】
フリシアはスカウトのスキルツリーをじっと見つめ、眉をひそめた。
(うーん……スカウトって本当にパッとしないスキルばかりだなぁ……)
(ハイディングは逃走用だし、パッシブの『ダガーマスタリー』は短剣の熟練度増加……はぁ! 貯金が銅貨50枚しかない10歳児が、短剣なんて買えるわけないじゃない!)
彼女の視線が、ツリー内にある唯一のアクティブ攻撃スキルにとまった。
【ラピッドスロウ(連続投げ)】
この世界で、このスキルにポイントを振るスカウトはただの一人もいなかった。説明文にはこう書かれているからだ。
【 ラピッドスロウ Lv.1 】
・効果:対象に向けて武器を迅速に『2回連続』で投げつける(1回につき威力120%)
・制約:投げた武器は失われる
「ふっ……完全なクソスキルじゃない」
フリシアはギルドの冒険者たちの会話を思い出し、苦笑した。
ファイター系はみんなこのスキルを無視する。戦士の基本技『スラッシュ』なら武器を失わずに250%の威力を出せるからだ。対してラピッドスロウLv.1は、2回投げても合計240%。しかも高価なナイフが手元から消えて草むらに吹き飛ぶ……どう見ても赤字にしかならない。
だが、元ガチゲーマーのフリシアの目は、スキルの説明文の裏側を見抜いていた。
(この世界の人たち……ゲームシステムを全然理解してないじゃない!)
(この手のスキルは、レベルが上がるごとにヒット数が増えるのがお約束……もしこの世界のシステムが私の知っている仕様と同じなら……)
(確かにLv.1は2ヒット(240%)だけど、ジョブLvを上げてLv.10までカンストさせれば、ヒット数が大幅に増えるか、攻撃速度(ASPD)依存で爆速連打ができるはず!)
そして——「投げたら武器を失う」という問題についても。
フリシアは足元に視線を落とした。道端には、握りこぶし大のゴツゴツした小石が何百、何千と転がっている。
少女の唇が、ニヤリと悪魔のような笑みを刻んだ。
(もちろん、ただの石ころじゃ短剣ほどの威力や殺傷力はないし、ダメージは落ちるかもしれない……でも、コスト0の『道端の小石』なら無限に投げ放題じゃない!)
(投げ捨てても回収する必要なし! 草むらに消えても問題なし! 足元の石を拾って投げ続ければ無限リソース! 毎回ナイフを失うより100万倍効率的(Min-Max)じゃない!!)
「フフフ……ヒャハハハハ!」
ギルドの敷地内で高らかに笑い声を上げるフリシア。通りかかった先輩冒険者二人が足を止め、哀れみの視線を向けた。
「あの子、いつも薬草採取してる子だろ……一人で何笑ってんだ?」
「スライムの叩きすぎで頭がおかしくなっちゃったのかな……」
フリシアは周囲の噂話など気にせず、誰も見向きもしないクソスキルに即座にポイントを投じた!
【 スキルを獲得:ラピッドスロウ Lv.1(2回連続投げ) 】
彼女は足元から握りこぶし大の小石を拾い集め、使い古したリュックがパンパンになるまで詰め込んだ。
今はまだ2発しか投げられない。しかし、STR 10の腕力とノーコストの小石……これこそが、誰も予想しなかった変態ビルド(理論値構築)の始まりだった!
フリシアはリュックのベルトを締め直し、プロゲーマーの鋭い眼光で街の門を見つめた。
「これからの私の武器は、ナイフなんかじゃない……」
手に握りしめた灰色の小石を見つめ、フリシアはニヤリと口角を上げた。
「タダ(無料)のもの……これこそが最強の武器よ!」
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ステータス確認
名前:フリシア・バーハート
職業:スカウト(Scout)
Base Level:1
Job Level:1
Skill:Rapid Throw Lv.1
Hiding Lv.1
第2話をお読みいただきありがとうございました!
誰もが見捨てるクソスキル『ラピッドスロウ』×『道端の小石(コスト0)』という、異世界人も困惑の投石アサシンビルドがここに誕生しました(笑)。
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次回(第3話)もどうぞお楽しみに! ✨




