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第16話:経験値の壁と新たなパーティー


【前書き】

いつもお読みいただきありがとうございます! 第16話です。

無事に正規冒険者となり、新たなスキル「Throwing Mastery」を獲得したフリシア。

しかし、彼女の前に立ちはだかるのはRPG界のお約束でもある「経験値の壁」!

効率的なレベリング場所を模索する中、ギルドで不人気ダンジョンへの手伝いを探すパーティーと出会い……!?

フリシアは目の前に浮かぶ仮想ステータスウィンドウを見つめながら、指先でトントンと静かにリズムを刻んでいた。


長かった実技試験を終え、昨夜は家族と温かなお祝いの時間を過ごした。そして迎えた新しい朝、彼女はギルドの静かな一角に座り、今後の育成計画の分析に没頭していた。


Job Levelが13に達したことで、あらゆる投擲スキルの攻撃力と命中率を底上げする重要スキル「Throwing Mastery」を獲得できた。しかし、フリシアがそれ以上に重視していたのは……この世界に存在する「経験値の壁(EXP Wall)」だった。


(まさにRPGのシステムそのものね……)


少女は心の中で呟く。


この世界でのレベル上げは、単純な直線状ではない。Level 1から10までは加速装置がついたかのようにスムーズに上がるが、Base Levelが「Level 10」に達した瞬間、必要EXPのゲージは飛躍的な跳ね上がりを見せるのだ。


フリシアの計算とデータ収集によれば、「10レベル刻み」(Lv.10、Lv.20、Lv.30など)ごとに、次のレベルへ上がるための必要経験値が倍々ゲームで増加していく。平均して、各段階を突破するためには従来より2倍以上の狩り時間と討伐数が必要となる。


つまり、次のステップであるLevel 20を目指す場合、この世界の住人たちがやるような一般的な狩りを続けていては、数ヶ月……下手をすれば数年という時間を費やすことになってしまうのだ。


(外の雑魚モンスターを地道に狩るだけじゃ、一日中石を投げ続けても亀の歩みね……。他の人が見落としている、経験値効率の高い特化型ダンジョンを探さないと)


フリシアが受付のリーザさんに日課のクエスト受注のために冒険者証を提出していると、掲示板の近くから騒がしい声が響いてきた。


「誰か一仕事やりませんか! 俺たちのパーティーで蜂蜜採集クエストに行くため、あと一人募集しています!」


声を張り上げていたのは、軽甲冑に身を包んだ凛々しい顔立ちの剣士(Swordman)のブラントだった。その隣には、退屈そうに槍を回すしなやかな身こなしの槍士(Fencer)のルーカスと、気まずそうに杖を握りしめる若き修道女(Vates)のマリーが立っていた。


しかし、周りの雰囲気は冷ややかで、関心を示す冒険者は一人もいない。それどころか、露骨に嫌そうな顔を向ける者さえいた。


「おいおいブラント! お前ら蜂の巣ダンジョンに蜂蜜を採りに行くつもりか?」


近くで酒を飲んでいた先輩冒険者の一人が、嘲笑いを浮かべながら口を挟んだ。


「蜂蜜を拾うなら、どうして外の森にいる『Wind Bee』を狩らないんだ? わざわざ蜂の巣ダンジョンに入って痛い目を見る必要がどこにある?」


「外のWind Beeは蜂蜜のドロップ率が低すぎるんですよ!」とブラントが反論する。「一日中狩っても二瓶手に入るかどうかです! でも蜂の巣ダンジョンなら蜂系のモンスターがウジャウジャいて、ドロップ率もダンチなんです!」


「だからって、あのダンジョンは全く割に合わねえんだよ!」先輩冒険者は鼻で笑った。「レベルの高いベテランは行かねえ。苦労の割に主なドロップが蜂蜜くらいだからな。逆にレベルの低い駆け出しが入ろうもんなら……まさに命捨てに行くようなもんだ! 忘れんなよ、あのダンジョンには『固定のボス部屋』がなくて、『ランダムスポーンのボス』がいつ湧くか分からないんだぞ! 遭遇したら一発でパーティー全滅だ!」


ランダムスポーンのボスという脅威を聞かされ、周りの新人冒険者たちはじりじりと後ずさりした。パーティーの修道女マリーも青ざめた顔になり、ブラントたちのパーティー募集はさらに絶望的な状況へと追い込まれていく。


しかし……カウンターの反対側では。


ぴくっ!


受付のリーザさんからクエスト用紙を受け取ろうとしていたフリシアの手が、ピタリと止まった。その美しい瞳が、キラリと妖しい光を放つ。


(普通の冒険者から見れば、確かに割に合わないダンジョンかもしれないけれど……)


フリシアの脳内で、凄まじい速度の計算が開始される。


(私にはRapid Throw Lv.10とThrowing Masteryがある。モンスターが群れをなしているなら、投擲射程と殲滅速度を最大限に活かせるわ。モンスターの密度が高く、ライバル不在。時間あたりのEXP効率は最高クラス!)


(ボス部屋がない……ランダムスポーンボスですって? 一般のパーティーにとって不意のランダムエンカウントは全滅のリスクだけど、行動パターンを把握して十分な引き撃ちスペースを確保できるなら、恐れる対象じゃないわ。むしろ遭遇できれば、大量の経験値ボーナスと隠された高価値ドロップのチャンス!)


プロゲーマーとしての思考が、他人の嫌がる危険要素を「最高のチャンス」へと一瞬で変換した。


「リーザさん……」フリシアは受付嬢に可愛らしい微笑みを向けた。「すみません、やっぱりこのクエストの受託はやめます」


小さな少女はクルリと向きを変え、絶望で肩を落とすブラント、ルーカス、マリーの3人の前へ迷いなく歩み寄った。


「あの……何か用かな?」


ブラントが不思議そうに目の前の小さな少女を見上げた。


フリシアはニッコリと微笑んだ。


「お兄さんたち、まだパーティーメンバーを探していますか?」


3人が一瞬あっけにとられると、ルーカスが口を開いた。


「ああ……探してるけど、君は一体?」


フリシアは言葉の代わりに、自分の冒険者証を彼らの前に提示した。


---


【 ADVENTURER CARD 】


名前:フリシア・バーハート


年齢:10歳 | 職業:Scout


Base Level:10


---


ブラントとルーカスは、冒険者証の表示と目の前の少女を交互に見比べ、目を丸くした。


「……10歳!?」


フリシアはご機嫌に頷いた。


「お兄さんたちが蜂の巣ダンジョンへ行くって聞こえたんです」


修道女のマリーが心配そうに声を挟んできた。


「でも、あそこはすごく危険だよ! モンスターも多いし、ランダムで強いボスも出るんだから!」


「はい、知っています」フリシアは落ち着いた笑顔で答えた。「トラップ解除ができて、遠距離攻撃ができるメンバーを探しているんですよね? 私はトラップ解除もできて、遠距離攻撃も得意なスカウトです」


周囲で見ていた先輩冒険者たちも、うんうんと頷いて援護射撃をした。(フリシアの実技試験中、彼らは街の外に出ていたが、「10歳の合格者」の噂はギルド中に広まっていたのだ)


ブラントたちは顔を見合わせて思案した。そんな彼らに、フリシアは自信に満ちた笑みで最後の言葉を投げかけた。


「だから……私を連れて行ってくれませんか?」


---


【ステータス確認】


* 名前:フリシア・バーハート

* 職業:スカウト(Scout)

* Base Level:10

* Job Level:13


【スキルツリー】


* Rapid Throw Lv.10(MAX)

* Hiding Lv.2

* Trap Research Lv.1(MAX)

* Throwing Mastery Lv.1

* 基礎氷生成魔法 Lv.5



---




第16話をお読みいただきありがとうございました!

経験値効率を求めて不人気な「蜂の巣ダンジョン」へ目をつけたフリシアちゃん!

新パーティーのブラントたちとともに、いよいよ本格的なダンジョンファームへと挑みます!


「フリシアちゃんのゲーマー思考が冴え渡ってる!」「ランダムボスを美味いカモだと思ってるの笑う」と思っていただけましたら、ぜひページ下部の【ブックマーク登録】や【評価(★★★★★)】、【フォロー】で応援していただけると大変励みになります!


次回(第17話)もどうぞお楽しみに! ✨

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