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婚約破棄された元社畜令嬢は、終わったはずの領地で宝物を見つける  作者: 植早 凛
第2章 追放された元社畜令嬢、街道を再建する

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第20話 新しい選択

黒狼団の尋問から二日が経った。

ベルフォード領主館の会議室には、再び重い空気が流れていた。

机を囲むのはリア、レオン、アル、ガレス、そして文官たち。

リアは静かに立ち上がる。


「皆さんに、提案があります」


全員の視線が集まる。


「黒狼団のうち、軽犯罪者には更生の機会を与えたいと思います」


その瞬間――。


「なっ……!」


会議室がどよめいた。


「お待ちください!相手は盗賊ですよ!? 」


一人の文官が立ち上がる。


「領民を襲い、橋の工事まで妨害した者たちです!」


別の文官も続く。


「そんな者たちに仕事を与えるなど前例がありません!」


反対の声が次々と上がる。

リアは静かに耳を傾けている。


そんなリアを見つめながら、アルも話す。


「リア様のお考えは理解できます。ですが、領民の方々が納得してくださるでしょうか。被害に遭われた方もいます。」


やがてガレスが口を開く。


「……私も慎重に進めるべきだと思います」


リアは頷く。


「理由を聞かせて」


「彼らが本当に更生する保証はありません。街道工事には領民も参加しています。もし再び問題を起こせば、領民の命が危険に晒されます」


ガレスらしい冷静な意見だった。


そして、レオンも立ち上がる。


「私も反対です」


会議室が静まり返る。


「盗賊は盗賊です。飢えていたことには同情します。ですが、彼らは剣を持ち、領民へ向けました。その事実だけは消えません」


リアは静かに見つめ返す。

レオンはさらに言葉を続ける。


「法を破った者には罰が必要です。そうでなければ、領民は法を信じなくなります。『困れば盗賊になっても許される』と思う者が現れれば、この領地はさらに乱れるでしょう」


リアは小さく息を吸う。


「みんなの言うことは正しいわ」


レオンが僅かに目を見開く。


「でも、罰を与えるだけでは何も変わらない」


リアは一人ひとりの顔を見渡した。


「黒狼団を捕まえても、仕事がなければ第二、第三の黒狼団が生まれるだけよ」


誰も言葉を返せない。


「私が変えたいのは盗賊じゃないの」


リアは力強く言った。


「盗賊を生み続ける、この悪循環よ」


再び静寂が訪れる。


アルが静かに問い掛けた。


「では、お考えを」


リアは頷く。


「黒狼団全員を許すつもりはありません。人を殺めた者や、罪の重い者は法に従って裁かれるべきです」


文官たちも静かに耳を傾ける。


「ですが、軽犯罪者には更生の機会として、街道工事へ参加してもらいます。」


会議室に再びざわめきが広がる。


「もちろん監視付きです」


リアはレオンを見る。


「監視は騎士団にお願いしようと思います」


レオンは黙ったまま立っていた。

長い沈黙。

やがて静かに口を開く。


「……承服しかねます。」


リアは真っ直ぐレオンを見つめ返した。


「責任は私が取ります。」


その一言に、会議室は静まり返る。


領主代理としての覚悟。

それは誰の目にも明らかだった。


レオンはゆっくりと目を閉じる。

そして小さく息を吐く。


「……承知しました。私は騎士団長として命令に従います。ですが、もし彼らが再び罪を犯せば、その時は容赦なく捕らえます」


リアは静かに頷く。


「ええ。それで構わないわ」


会議は終わった。


夕暮れの廊下を歩きながら、リアは地下牢へ向かう。

鉄格子の前で立ち止まると、ロイドが顔を上げた。


「……何の用だ」


リアは静かに微笑む。


「仕事を用意しました」


ロイドは意味が理解できず、ただ瞬きを繰り返した。


「……は?仕事?」


「街道工事です。もちろん、働いた相応分の賃金もお渡しします。ただし、これは更生のための最後の機会。次はありません」


牢の中は静まり返る。

ロイドは信じられないというようにリアを見つめる。


「……本気なのか」


リアは静かに頷く。


「ええ。私は、人はやり直せると信じています。」


ロイドは何かを言おうとして口を開く。

だが最後まで言葉は出なかった。

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