表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された元社畜令嬢は、終わったはずの領地で宝物を見つける  作者: 植早 凛
第1章 追放された元社畜令嬢、赤字領地へ赴任する

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/13

第11話 新たな一歩

ガレスの処分が決まってから数日が経った。


領主館は以前にも増して慌ただしかった。

当然リアも朝から執務室へ籠もっていた。


文官長が一人いなくなる。

それだけで、これほど仕事が滞るものなのかと、リアは改めて思い知らされていた。


「これで終わり……かしら」


リアは肩を回しながら、積み上がっていた書類へ視線を落とした。

指先にはまだインクが付いている。

朝から休む間もなく書類をめくり続けていた証だった。


不正は明らかになった。

だが領地の問題は何も解決していない。

本番はこれからだった。


リアが深いため息をついた時だった。

扉が叩かれる。


「リア様」


アルだった。


「騎士団長のレオン様がお見えです」


「レオンが?何かあったのかしら…?」


「私にも分かりません。」


「怒鳴り込みじゃないといいけど。」


「……今のレオン団長なら、その心配はないかと。」


リアが入室を許可すると、レオンが部屋へ入ってきた。

相変わらず真面目そうな顔をしている。

だが、どこか様子が違った。


「どうかしたの?」


リアが尋ねる。

するとレオンは数秒黙り込んだ。


そして――。

深く頭を下げた。


リアは目を見開く。


「え?」


「失礼しました。そして、ありがとうございました!」


リアは固まり、アルは静かに目を細めた。


部屋が静まり返る。

あのレオンが頭を下げている。

初めて会った時、反発ばかりしていたあの男が。


「ちょ、ちょっと待って。頭を上げてちょうだい。」


リアは慌てるが、レオンは頭を上げない。


「お嬢様が騎士団物資の横流しについて解決されたと伺いました。」


「私一人じゃないわ。アルも、みんなも協力してくれたから見つけられたの。」


リアは椅子から立ち上がり、レオンの前に行く。

ようやくレオンはゆっくりと姿勢をもとに戻した。


「それに、本当ならもっと早く気付くべきだったわ。私の方こそ、遅くなってごめんなさい。」


今度はリアが深々と頭を下げる。


「おやめください!」


レオンは慌ててリアの肩に手を添えた。

リアはレオンに促されて元の姿勢に戻る。


「本来であれば、騎士団内で起きた問題は、騎士団長である自分が解決しなければならないことでした。」


リアは無言で頷きながら、話を促す。


「装備が足りないことは分かっていました。ですが、まさか誰かが盗んでいるとは考えもしませんでした。お嬢様がいなければ、未だに横流しされたままだったはずです。」


リアは恥ずかしくなり、頬を染めながら顔を背ける。


「私はてっきり、王都育ちのお嬢様が気まぐれで帳簿を見ているだけだと思っていました」


レオンはそんなリアを眩しそうに見つめる。


「ですが違った」


真っ直ぐな視線だった。


「あなたは誰よりも領地のことを考えていた」


リアは返す言葉を失った。

そんなふうに言われたのは初めてだった。


「そんな大したことじゃないわ」


「いいえ」


レオンは首を振った。


「私を含め、誰も見つけられなかった不正を暴いたのです」


その表情に、以前の敵意はなかった。

あるのは敬意だけだった。


「お嬢様。これからは私も力になりたい。いや、ならせてください。」


静かな言葉だった。だが重みがあった。

リアは思わず笑う。


「最初からそうしてくれれば良かったのに」


「返す言葉もありません」


真面目に返されてしまった。

思わず吹き出しそうになる。


そんな二人を見ていたアルが、そっと安堵したように息を吐いた。


騎士団長と次期領主。

この二人が対立したままでは領地再建など不可能だ。

それなのに、今までは噛み合わない歯車だった。


だが今は違う。

ようやく同じ方向を向いて動き始めた。


◇◇◇


その日の夜、リアは自室で書類を整理していた。

すると扉が叩かれる。


「リア様」


アルだった。


「手紙が届いております」


「手紙?」


差し出された封筒をひっくり返し、封蝋を見る。

だが、差出人の名前はなかった。


リアは首を傾げながら封を切る。

中には紙が一枚だけ入っている。


短い文章だった。リアは目を通す。


『王都の商人たちが、ベルフォード領の羊毛が手に入らなくなったと嘆いていました』


それだけだった。署名もない。


「……羊毛?」


リアは眉をひそめる。

ベルフォード領の羊毛は質がいいことで有名だった。


そのため、鉱山が衰退した今は、領地をあげて羊毛の生産に力を入れていたはずなのだが…。


リアは机の羊毛の帳簿を引っ張り出す。


「生産量は減っていない。それなのに届かないなんて…。どういうことかしら?」


もう一度読み返す。だが意味は分からない。


リアは窓の外を見る。

夜風が静かに吹いていた。


答えはない。

それでも、その短い文章は妙に心へ引っ掛かった。


まるで――。

まだ自分が知らない問題があると告げているように。


リアは手紙を机へ置く。


「羊毛、ね……」


リアは手紙を見つめる。


その小さな違和感が、やがて領地の抱える本当の問題へ繋がっていくことを、この時のリアは、まだ知らなかった。


婚約破棄から始まったベルフォード領での物語は、ここで第1章完結となります。


最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!


明日からは第2章「追放された元社畜令嬢、街道を再建する」がスタートします。


いよいよリアが領地再建へ本格的に動き出し、新たな出会いや試練が待ち受けています。


更新はこれまで通り、毎日20時です。


よろしければブックマークや評価、感想などで応援していただけると、とても励みになります!


引き続き『婚約破棄された元社畜令嬢は、終わったはずの領地で宝物を見つける』をよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ