美和の気付き
美和の気付き
佐久平は、美和の神事が始まり、落ち着いた。
春になって、豊穣を祈る祭典、が行われると、佐久平が、近畿圏の大王の領地であることが周知され、その領地を分配しているのだという認識に変わった。
諏訪者でも山梨者でも独立兵達でも、その認識はあり、自らの農耕を行う集落との関係が強まっていくのである。
しかし、集落は自分たちの暮らしで一杯であった。
夏、美和は何か夏のお祭りのアイデアがないかと悩んでいた。
夏は米作も一段落する。集落に皆に示すものが欲しかった。
何かないかと佐久平を見ていたが思いつかない。
ふと、浅間山の森が気になった。
見張りをしていた者が急にこっちを向くので思わず、膝を折って屈んだ。
その動きに美和は、人がいる。
と、気がついた。が、自分たちが見張られてるとは思わない。
美和は屋敷の門を通り広場に戻った。
カンタと兵が拳の訓練をしていた。
カンタを見て、若いのに凄いなと感じていた。
すると、近畿圏で、こちらに向かうことになった時、桜が話していたカンタの事を思い出した。
カンタは色々な事を知っている。
そこで、訓練がひと息着くと、カンタに話しかけた。
「森に、人がおったが、何か知らぬか」
カンタは、バレたと、とっさに思いついて、誤魔化すしかないと考えた。
「あれは、森の手前で狩りに向かったものでしょう」
手前で狩りをする集落のものもいるはずなので、それを見たのではと切り返した。
「森に入っで、狩りをのぉ。」
美和は納得していた。が、しかし続けた。
「カンタは、よく色々なものを知ってると、桜を言っておった。森の狩り、そなたも出来るのか?」
狩りをするなら森の手前でなく、奥にはいらないと、狩りには、ならない。
カンタは困ってしまった。
否定してしまえば、簡単だが、答えが出なかった。
沈黙が生まれた。
すると美和が切り返した。
「よいよい、森は深いのだろう。簡単には答えられまい。分かった。ありがとう」
美和は質問を止めた。カンタは何かを知ってると確信したからであった。
森に関わってるぞ、と考えた。
カンタも、はい、申し訳ないと頭を下げ、その場から離れていった。
美和はどうするかなと考えていた。
部屋に戻り執務室に入ると代官がいた。
「旦那様、浅間山の森には、人が住んでいるのですか?」
代官は、森の人間の存在は知っていたが、構わないと決めていた。
「うむ、人はいるが、我らの統治とは関係が無いので、ほってある。
気にせずとも、良いのだ」
美和はあっさりと森に人がいることを認める代官を見て、確信した。
カンタの森との関わりに確信が生まれていた。
そこで美和は代官に答える。
「はい、そうですか。森に人がいるのですね。分かりました。気にしないことにいたします。」
美和の返事に代官は安心していた。
美和に森への関心が高まっているのには、気が付かなかった。
佐久平では、セミが鳴き始めていた。
夏が来る。
セミの鳴き声とともに、美和は考えていた。
どうすれば、代官に知られずに森に入れるかと。
セミの声が一段と高くなった。




