美和の侵入
美和の侵入
その夜、カンタは屋敷を抜け出し、婆様の穴に入った。
「族長、美和様にバレてます。」
「見張りから聞いてる。いま、婆様と話していた。」
「代官には、森に人が住んてることを確認していましたが、屋敷に動きはありませんでした。」
動きが無い?
何故だ、動かない?
山彦は沈黙した。婆様が答えた。
「山彦、こりゃ困ったな。美和は感づいたのだろう。代官は動かない。しかし美和は動くな、、、」
山彦は、どうするか。美和の姿を思い出していた。
薙刀を鮮やかに動かす。会った時の気圧された威力。
何故、代官と共には動かないのか。
「カンタ、お前のことだから、森の話はしてないと思う。
しかし、森の存在はバレてるな。
そこで、秘密裏に動けるなら、美和を連れてこい。」
カンタは、驚きだが、山彦の言う事には逆らわない。
婆様も頷いてる。
カンタは屋敷に戻り、その時を待つことになった。
翌朝、美和は代官と食事をしている。
「美和、夏の祭事はどうする?」
「旦那様、今考え中です。暫く、ひとりにしておいてくださいませ。」
代官は、美和に任せようと考えてる。美和のしてきた収穫祭や豊穣の祈りに納得していたからである。
美和は、席を立ち、カンタを探した。
カンタは朝の訓練をしていた。
美和と目が合うと、声を出さず、じっとしていた。
そこで美和が切り出した。
「カンタ、桜の護衛をしていたのだろう。我も護衛をお願いしたいのだが、兵の皆のものよいか?」
美和が言う事に逆らうものもいないが、桜の護衛については、知っていた。そこで兵の方からカンタへ美和様の護衛をするようにと話が決まった。
門から出ると見張りは、山彦の元へ走った。
カンタは、美和を引き連れ、歩き出した。
「美和様、森に入る覚悟はありますか?」
「覚悟か、覚悟ならあるぞ、案内してくれるのか?」
カンタは森の入り口にあたる葉に隠れた場所に入り、葉を押しのけ、美和をいざなった。
美和は、カンタに付いていった。
見張りは既に戻っていた。
最初は森の開けた場所が続いたが、道が獣道のように狭く、険しくなった。ゆっくり登る美和をカンタは丁寧に誘導していく。
どのくらい進んだのか、美和には分からなかった。
そこに、暖簾のように草が、ぶら下がかってる大きな岩が重なってる。
中に入ると、山彦が正面に座っていた。
「族長、美和様を連れてまいりました。」
美和は森を歩いていても人の気配は感じなかった。
そこに大岩の間に男がいた。いや、その奥に婆様らしき人間もいる。
男の横に岩を組んで火を灯してるものがバキ、バキっと音を立てている。
「族長の山彦だ」
美和は、ハッとして答えた。
「我は美和という。代官の後妻じゃ」
山彦は森には50人ぐらいが暮らしていて、佐久平の集落とは別に生きてる事を告げた。
美和は、洪水の時、手助けをしたのは森のものかと聞いてきた。
山彦は、自然の理により出来ることを集落には伝えたが、生き延びたのは彼らの力だと、伝えた。
「森の理とは何じゃ?」
山彦は、やはりそこだなと思った。
薪がバキ、バキッと音を立てた。




