王女の使命とトーマの恋
「あーっ、つまんねえ」
部屋の外に追い出されて扉の前に座り込んだトーマは愚痴る。
「あいつ俺よりガキの癖して女がいるなんて許せねー」
てっきり外に追い出されたことに不満を抱いているのかと思ったサリアラインは拍子抜けする。
同じように座りながら首を傾げた。
「あなたでもそんなことを思うのね」
「思ってなにが悪い。俺だってレンアイしたいぜ」
「レンアイをカタカナで言ってるうちは当分無理だと思うけど?」
「誰か紹介してくれよ。王女様」
「どんな娘がタイプなの?」
サリアラインは脳裏に様々な独身の少女たちを思い浮かべながら聞いた。
「んーっ、そうだな」
少年は腕を組み考える。
「とりあえず後ろに一つに結わえられるくらいの黒髪で、大人びた黒い瞳で、でも笑うとすっげー幼くて」
「なんだか具体的ね。他には?」
黒髪は沢山いるけどと首を傾げる王女の目を見つめながらトーマは言った。
「泣くことができない意地っ張りな女」
「ーえっ?」
さわやかな風がふたりの間に流れる。
トーマが真剣な顔でサリアラインの手を取ったその時、
「トーマ!」
かん高い少年の声が彼を呼んだ。ソータだ。
「あーっ、もうついてねーな」
がりがりと頭をかきながら少年は立ち上がると苦笑した。
「ねえ、トーマ。もうキャンプに戻ってもいいんでしょ?」
息をきらせてソータは聞く。その瞳が心配で潤んでいた。
「安心しろ。お前の母ちゃんは無事だ。多くの仲間が犠牲になっちまったけどな」
「俺、みんなを助けたい。片足だけど、動けるよっ。だからー」
「わかりましたソータ。一緒に行きましょう」
サリアラインが真面目な表情で言う。
こんなところで呑気に恋愛話なんかしている場合じゃないと。
(チェッ。やっぱ王女相手じゃ長期戦だな)
ため息をつくとトーマはソータを肩車した。
「よしっ、皆を助けるぞソータ」
「うんっ」
元気よくソータは頷く。
その声は未来を疑っていない。
その幼い少年の姿にサリアラインは思う。
彼らを守ること。
ーそれが自分の使命だと。




