魔女の趣味
「ふんっ。天馬に悪戯などするからじゃ。馬鹿者めが」
森の中の泉に浮かぶその姿にヒズは毒づいた。
その隣でネルフィスが腹を抱えて笑っている。
なんともまあ愉快な人間がいるものじゃと。
ひとしきり笑った後、ネルフィスはヒズにたずねた。
「どうして月の乙女をすぐに目覚めさせてやらぬのだ?」
「これだから男はつまらん。いいかい?月の乙女は三年も待たされたんじゃ。十二歳の子供は立派なレディに育ったんだよ?それなりの目覚め方をさせてあげたいじゃないかい」
(それはかなりお主の趣味じゃないか?)
ヒッヒッヒッと上機嫌な魔女の隣でネルフィスは思う。
ーヒズはおとぎばなしが好きなのだ。
城の最奥で、きょうもひっそりと眠り姫は眠り続けていた。
「どういうことだ?」
トーマはサリアラインに問いかける。サリアラインは悲しげに首を振った。
「わからない。魔女様の話では確かに聖剣の主が現れたらフィーは目覚めるはずだったに・・・」
「魔女様ってヒズのことだよね?」
ぽりぽりと頭をかきながらアルトシオは考える。
(ヒズってほんとに童話好きだよな)
いくつになっても夢見る乙女だというのは彼の養父の弁である。
「トーマ、サリアライン姫。ちよっと席を外してもらえないかな?」
「えっ?」
サリアラインが戸惑う。すると王子は照れたように笑った。
「眠り姫が目覚める方法なんてひとつしかないよね?」




