嘆き
そこは修羅場だった。
天から降りてきたオークたちによって次々と殺されていく無力な人々。
肉の焦げる匂い。響き渡る断末魔。
(むごい・・・)
空の上からその様子に思わずマシルは目をそむけたくなる。
いつもながら、ヴァリシオンの戦いは非道だ。
彼には騎士でも無力な赤子でも関係なく敵の人間なのだ。
「俺は悪魔か?」
そんなマシルにヴァリシオンはいつも問う。
その時がマシルには一番つらかった。
(なぜ、こんなにも悲しげな瞳をこの人はするのだろう)
ヴァリシオンは嘆いている。
こんな戦いを。マシルにはそう思う。
こんな勝負の見えている戦いを楽しんでいるのはオークや異形の民たちだけだ。
マシルたち兵士はいつも空からその様子を眺めている。
けれど直接その手を下さないからと言って罪は変わらない。
この戦争は間違いなく彼らが引き起こしたことなのだ。
けれど、
「世界を統一するには戦争は必要です」
こたえた言葉にマシルは自問する。
ー本当にそうなのだろうか?
そんなマシルにヴァリシオンは言った。
「俺はこの世ですべての終着をつけるつもりだ。八度目の目覚めはない。世界大戦は七回で終わる」
ー疲れた。
そんな言葉が聞こえてきたのは空耳だろうか?
(世界大戦は七回で終わる)
口の中に繰り返して彼は思う。
ならば僕はこのひとについていこう。
ずっと、ながい時を経て自分のいる時代に目覚めてくれたこの人にー。
「僕はどんなことがあってもあなたについていきます」
きっぱりと言い切ったマシルにヴァリシオンは頷くと目を細めた。
「もう一人の王子の目覚めだ」




