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月はみえずに

月は今夜も姿を見せない。


どんよりと曇った空。大雨はやみまた明日からは乾いた大地が水を求める日々がはじまる。


「はあ・・・」


その空を見上げながらサリアラインは深くため息をついた。


ヴァリシオンの襲撃により彼女はここのところ激務を強いられている。


被害は難民地区だけだったのだが、ほぼ壊滅に近いその場所にさらなる難民たちがあふれていた。


ルナ・ムーンを皮切りヴァリシオンは様々な国に攻め入ったのだ。


増え続ける難民に、問われる国交。


(それだけならどうにでもなるけれど・・・)


彼女の憂いの原因はフィオラシアの部屋で膝を抱えてふさぎこむ少年にあった。


もう十日近くたつのにいまでも少年はふさぎこんでいる。


ルナ・ムーンが襲われた時から。


 

「悪魔の子」


少女が叫ぶ。


その手に抱かれたもはや炭の塊にすぎない赤子。


「あんたなんか生まれてこなければよかったんだっ」


投げ付けられる石。


「そうだ・お前さえいなればファシル・アルド・バードもグリフォスも滅びることはなかったんだ」


まだ五歳ほどの少年が力いっぱい投げた石は少年の頭に当たった。


「悪魔の子!」


「悪魔の子!」


まるで地なりのようにコールが起こる。


その騒動の中をどうやってアルトシオをつれだし城に戻ってきたのか、実はよく覚えていない。


気がつくと少年はひとり、ひっそりとフィオラシアのベット脇で膝を抱え虚ろな瞳で聖剣を見ていた。


食事さえとろうとしない。


その幼い身体をサリアラインは不憫に思う。


(いったいあの子が何をしたというの?)


人はみな平等に生まれてくる権利をもっている。


なにもしらず人の手をかりなければならない赤子を誰が責める権利をもつというのだろうか?


ただこの世に生まれてきたことをこんなにも悔やむ少年。


その望みを叶えるために、


ーキィーン。


聖剣は今夜もクリスタル音を響かせる。


(フィーあなたいったいなにを考えているの?)


曇り空にサリアラインは問いかけ

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