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「大変ですっサリアライン様」


明日の徴兵に備えて食糧庫の食糧を運ぶ指示をしていたサリアラインに兵士が慌てて駆け寄った。


「どうしたの?」


「火事です。渓谷にあるグリフォスの難民キャンプから煙がでています」


「なんですって?ほんとうなの」


「はっ。炎は拡大している模様です」

「至急兵をむかわせなさい。消火活動よりも難民救助を優先して」

サリアラインの指示に再び兵士が駆け出そうとして脚をとめた。


「なにをぐずぐずしているのはやく兵をー」


兵士の目線をおってサリアラインもまた言葉を失った。


子供ほどの黒いマントですっぽり覆われた人影。


「ーヒズ?」


彼女がフィオラシアの部屋からでてきたことはこの三年間のなかで一度もない。


「まさかフィーになにかあったの?」


青ざめた王女にヒズはいった。


「我もともしよう」


「えっ?」


「天馬の嘆きが聞こえる」


魔女はそういうと足早に馬小屋の方へとむかう。


(よくわからなけど、フィーは大丈夫なのよね?)


自分自身に言い聞かせながらサリアラインは魔女の後を追う。


妖精のことを理解するには彼女じゃ役不足だ。


理解しようとしても無理ならその行動を見守るしかないことを彼女は体験上知っていた。


 魔女を乗せた馬車に乗り込み難民キャンプへと向かったサリアラインはその惨状に声を失う。


一面に広がる炎・・・。


一体どれほどの命が燃えつくされたのか・・・。


「サリアライン王女っ!」


前方から駆けよってくる騎士の姿がある。


シルヴァギアだ。サリアラインは馬車から飛び降りた。


「どういうことなの?」


「とにかくこちらへ」


説明するよりもとばかりに老騎士は王女の腕をとり駆け出す。


炎のすぐ間際に難民たちが壁のようにして炎を見ていた。


「なにをしているのっ、お逃げなさい」


声を張り上げる王女の姿を確認して、わらわらと人垣がわれる。


「ーえっ?」


人垣の間から現れた光景にサリアラインは一瞬目を疑った。


燃かる炎に囲まれてだだ一点その中央に浮かび立つー、


「天馬・・・」


呆然と呟く。その隣でシルヴァギアが一点を指さした。


「ごらんください」


目をこらすと天馬の足元に、まるで天馬に守られるように横たわる人影がある。


「アルトシオッ!おいっ返事をしろよっ!大丈夫かっ」


必死に叫ぶ金髪の少年には見覚えがある。


この難民キャンプで生活する子供たちのリーダーだ。名を確か・・・。


「トーマ?」


その声に金髪の少年とその母親が彼女に気がついた。


「サリアライン王女様」


頭をさげる母親のとなりで少年が言った。


「アルトシオはなにも悪くないんだっ。あの天馬もあいつを心配してテントを壊しちゃっただけなんだよっ」


「アルトシオ・・・それがあの少年の名前なの?」


その名前は彼女がずっと待ち望んでいた者の名ー。


天馬に守護されし少年・・・。


どくんっと心臓が音をたてる。


「起きろよっ!」


声の限りトーマが叫んだ時、人影がゆらりと動いた。

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