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裏切り



「なんだい?」


「リタとトーマをアバイズが呼んでる。あとこれー」


小麦をねって作った干しパンをソータ取り出した。


「アバイズがアルトシオに餞別だって。さっきはきつい言い方して悪かった。そう言ってたよ」


「へぇー。あのじじい結構いいとこあるじゃねーか。受け取れよ。お前なんにも食ってねーだろ。俺と母ちゃんが帰ってくるまでそいつをたべときな」


「でも僕だけいただくわけには」


「あのな。どーみてもお前より俺の方が健康優良児だぜ。食わねーとでかくならないぞ」


「ーわかった」


「んじゃあ。遅くなったら寝ててもいーから」


軽くウィンクをとばしてトーマたちがいなくなるとアルトシオは、ためらったのちに干しパンを手にとった。



ソータのあとにつづいたリタとトーマは難民キャンプの中央にいる人々の数に戸惑った。


「なんだってこんなに沢山いるんだ?」


疑問を口に出すよりはやく親子の身柄が拘束される。


「なっ、なんだよっ」


「悪い冗談はおよしよ。アバイズ」


親子の前にくり色の髪に髭をのばしたアバイズが現れた。


つぶらなひとみがふたりを冷酷に見つめている。


「なんのつもりだいアバイズ?」


リタはアバイズをにらみつけた。


その視線を平然とうけとめアバイズは言った。


「朝日と供にアルトシオを火刑にしょす」


「なんのつもりだ。アバイズ」


もう一度同じ質問をリタはした。


その瞳が荷烈に細められる。


「言った通りだ。あの者がファシル・アルド・バードの王子なら尚更だ」


「いったい何の話だよっ」


トーマが決起果敢に問いただす、


「ファシル・アルド・バートの王子に関してくわしいのは自分たちだけだとでも思っていたのかい」


ナタリアのしわがれた声が狂気じみた笑さか・・・。


「ソータおまえか?」


「だ、だってアイツいなくなればヴァリシオンは眠りにつきもうトーマや父ちゃんは兵隊になんかならずにすむんだろ」


「だからって?こんなやり方あるかよっ。あいつの刑は俺達生き残りのファシル・アルド・バードの民が決める問題だっ。それに火刑ってどうすんだよ」


「お前のテントを焼きはらうのさ。なーに。みおとえするがテントなんぞいつでも作れる。家具はすべて運んだよ」


「そんな物音たてたりしたらいくらあのぼやーっとした奴だって気が・・・あのパンか?」


はっと気が付く。


「そうじゃ。強力な睡眠薬酒をしみこませておる。熱さにも動じぬな。苦しむことはあるまいて」


「くそっ。なんだってこんな!」


「すべてはあの悪魔が呼び込んだのじゃよ。グリフォスの滅亡も『光の大陸』の苦戦もヴァリシオンの目覚も」


「悪魔の子?ふざけんのもいい加減にしろっ。とにかくゆるせねーっ。絶対にあいつは俺が守るんだっ!」


最初はほんの好奇心からだった。


白馬をつれた妙な奴。


それが第一印象だ。


そしてその少年は魔の森でそだった。


ぽやーっとしたなんを考えてるか解らない。けれど、


「俺はファシル・アルド・バードの民だからあいつを守る」


「二人を拘束しておけ」


アバイズはトーマやリタがどんなにわめこうが素知らぬふりを通したいを含んであたりに漂った。



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