表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/45

つかの間の休息

今宵も月は厚い雲にさえぎられて姿を見せてくれない。


王宮のテラスから空を見上げると自然

にため息がもれた。


「もうお休みになられたらいかがですか?サリアライン王女様。明日もお早いのでしょう?も

ちろん私達もですけれど」


聞きにようによっては刺のあるきつい口調で侍女が言った。


べつに彼女に悪意がないことはわかっている。


だれに対してもきつい言葉になるのは癖らしい。


それに侍女はサリアラインつきのものではない。


父王のだ。


サリアラインの父は病床につぷしている。


側妃たちの政権争いのまっただなかにいるのだ。


少しばかり性格がひねくれようともいたしかたないとサリアラインは思っていた。


「ごめんなさい。すぐに休むからあなたはもうさがっていいわ。もう随分と休暇をとっていないのでしょ?明日は休んでいいわよ。私から父上にお伝えしとくわ」


「ありがとうございます。もうかれこれ一月ばかり側妃様方の嫌みに耐えてきたのですがーあ

、いえ、」


「うふふ。大丈夫。聞かなかったことにしてあげるわよ」


「ありがとうございます。それでは」


太った侍女とは入れ違いに今度は小柄なそれでも落ち着いた雰囲気の少女が入ってきた。長い黒髪のサリアラインとは違ってこちらはショートカットだ。


「あの者は一月に一度サリアライン様の所にやってきますね」


肩をすくめてみせるのはメイア・シルヴァギア。


騎士隊長でありサリアラインの右腕でもあるシルヴァギアの孫娘だ。


齢はサリアラインと違わない。


「しょうがないわよ。メイア。父上は病床で母上たちはあの通り。この城だけが時間がとまっているのよ」


苦笑する。


そう、一足城に入れば難民キャンプでの現実が嘘のような平和なゆったりとした時間が流れている。


明日は我が身という言葉を知らないのだ。


「カイルやリオンたちはまだまだ幼いし、私が頑張らないとね」


「でも王女様にも休息は必要ですわ」


「ありがとう」


心からの言葉に素直な感謝をくれるサリアラインは可哀想なくらいやつれていた。


だからこそメイアはさきほどの侍女に腹をたてていた。


どうしてこんなサリアラインを目の前にして自分

だけ休暇をなどといえるのだろう。


休暇なんていってられる状況にないというのに。


「祖父から聞きました。グリフォスの難民たちを徴兵されると」


「ええ。正直、つらいわ。あなたはなんでもお見通しね。メイア」


「祖父が祖父ですから」


メイアの言葉にサリアラインは苦笑した。


それでわさわざこんな時間にサリアラインの所まで足を運んでくれたのか。


確かにメイアはサリアラインつきの侍女だがとっくに帰宅している時間だった。


「ありがとう。でも私なら大丈夫よ。心配性のおじいさんに言ってあげて」


「わかりました。それではこれをお飲みに名ってください」


手にもっていたコップを示す。


ー睡眠酒だ。


サリアラインはこれが苦手だった。


確かにのむとそれまでの心痛が嘘のようにぐっすりと眠れる。


けれどその空白の時間がこわかった。


その間にもしも『彼の地』が攻め入ってきたら?そう思うとどうしても飲む気にならない。


そんなサリアラインの心内を見透かしてメイアはさらに言った。


「大丈夫です。祖父が徹夜で見張りをするそうですから。今夜は。さあ飲んでくださいな。でないと私はいつまでたっても家にかえれませんわ」


「あとで飲むから」


「いけません」


メイアはきっぱりと言うとサリアラインの手にコップを持たせていた。


「どうしても?」


「はい」


短い言葉が言外に圧力をかけている。


サリアラインはため息をつくとコップに口をつけた。


どうか今夜は何事もおきませんように。


その願はかなえられることとなる。


今夜は。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ