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荷物を船室に預けるべくよう促された山峯は、初めての船内を案内もなく手探りで進んでいく。
途中、何人かの船員を見かけたが作業に没頭しているらしく、こちらに構う余裕はない様子だ。
外観から予測される通り、船内は古めかしく、男性船員のみがひしめき合って生活を共にしている為か、粗雑で、また全体から獣臭にも似た香りが充満している。
衛生環境については、贔屓目に見ても劣悪という他なかった。
共用の便所は一つのみ。扉すらも備えてない事には数々の飯場を渡り歩いてきた山峯でさえ、驚きを禁じ得なかった。
「おう!見んなや!」
丁度その際は船員の一人が使用中であり、今まさに用を足している瞬間だった。
便所は食堂のスペースと直結しており、否応なく漂う糞便の匂いに対し
「オイ!くせーぞ!」
などと言った野次が飛び交っていた。
いかにも男だけの世界といった風情だが、こういった遠慮のない雰囲気が、自分には合っているように、山峯は感じた。




