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年の頃は五十そこらと言った所か。
並みの男であれば、彼のまとう威圧感にあてられて萎縮してしまうだろう。
男は山峯の視線に気がついたのか、暴行の手を止め船体を駆け下りてきた。
「なんでぇ、本当に来やがったのかよ。名前は確か……」
「山峯だ」
──この街にある働き口の中でも、飛び抜けて高給である男船を志す者は少なくない。
しかしながら、この船での仕事は特に過酷で、かつ人権意識が低い事で知られている。
大抵の者は船の実態を耳にするか、船長であるこの男──丹後一光と対峙しただけで逃げ出してしまうだろう。
丹後は値踏みするように、山峯を推し量った。
「ふん、まあまあのガタイしてやがる。根性の方は知らねぇがな」
そう言って踵を返した丹後は、振り向き様に言い放った。
「悪いが出港まで時間がねぇ。お前にも荷揚げを手伝ってもらう。」
山峯は無言で頷き、丹後の後に付いた。
「それと、一つ教えといてやる。この船において、俺の命令は絶対だ。口答えの一つでもして見ろ。法律の及ばねぇ海の上でテメェら流れ者を一人始末する位訳ねぇからな」
俺はまたも無言で頷いた。
その答えに満足したのか、はたまた従順な犬を手にしたと思ったのか、それ以上に話が及ぶ事はなかった。




