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男船  作者: 秋山善律
34/35

3-7

 どれ程の時間、そうして過ごしていただろうか。

「山峯……」

 傍らにいた佐郷が、口を開いた。

「なあ……お前、人を殺して来たんじゃないか?」

 唐突に、そう切り出した。

 宴は続いており、甲板の中心からは船員達が仲間を囃し立てる声が聞こえる。

 山峯は表情を変えずに質問を返す。

「……なぜそう思う」

 少し考えた後、佐郷は答えた。

「何となく……な。お前の目と、どこか切羽詰まった感じがな」

 それから幾ばくかの時を置き、意を決したように山峯は口を開いた。

「ああ」

 それには答えず、佐郷はその答えを受け止めるかのように押し黙った。

「なあ、まさか世間を騒がせている殺人鬼っていうのは……」

「あれは俺じゃない」

 山峯は笑って機先を制する。

「正確には、最初の一人以外だがな」

 そうして、山峯の口から過去の経緯が語られ始めた。

 以前、彼が流れ着いた飯場での事だ。

 そこの頭である人物が相当悪質な人物だったようで、山峯ら労働者を追い込むような搾取を繰り返していた。

 ある時、あまりの仕打ちに耐えかねた仲間達を代表して、山峯が矢面に立つ事があった。

 口論の末に暴力に訴え出た男を、反対に山峯が返り討ちにしてしまったのだという。

 不運にも打ち所が悪かったのか、男はそのまま絶命していた。

 衝動的にその場から逃れた山峯は、やがてまた各地を放浪する事となる。

 どれ程の時が立っただろう。

 旅先でふと目を留めた新聞記事には、あの頭の男の殺害が連続殺人の契機として綴られていた。

「どうも、殺された人間の誰かの周りに、警察が庇いたい奴がいたって話だ」

 始めて語られる山峯の過去を、佐郷は一言ずつ噛みしめるように傾聴していた。

「もうすぐそこまで、警察の手は迫っている。おそらく港に戻った瞬間、俺は逮捕されるだろう」

 彼は独自のツテで、警察の情報を入手していた。

「俺は前科(マエ)もあるからな。死刑か、運がよくて無期懲役ってとこさ」

 山峯は自嘲するように笑った。

「俺はこの航海が終わったら、二度と娑婆には戻れない」

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