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男船  作者: 秋山善律
35/35

3-8

 重苦しい沈黙が流れていた。

 酒宴の方も闌となり、甲板には一時の静寂が訪れていた。

「……なあ、なんだって男船に乗ろうと思ったんだ?」

 それは、率直な佐郷の疑問であった。

「さあ、何でだろうな。娑婆には未練もなかったし、自分の命を試してみたかったのかもな」

 山峯は、命懸けの過酷さで知られる男船に自らの運命を委ねていた。

「そうだったのか……」

 佐郷はそれ以上、かける言葉を見つける事ができず、辺りには再び静寂が訪れた。

「なあ、山峯」

 やがて口火を切ったのは、またしても佐郷であった。

「俺と、兄弟の契りを交わさないか?」

 突然の申し出に、山峯は困惑した。

「オイ、オレの話を聞いてたのか?二度と会うこともないんだぞ?」

「いいんだ」

 佐郷は山峯の抗議を受け入れようとしなかった。

「ただ、そうしたいと思ったんだ」

 そう言って踵を返した佐郷は、褌に仕舞ってあった作業道具である小刀を持ち出した。

「生憎と盃がねぇから、略式にはなるが……」

 そう言って佐郷は、己の腕に小刀を押しあて、出血したのを確認すると、それを山峯に手渡した。

 佐郷の意志を汲み取った山峯は、同じように小刀で腕を切った。

 二人は、互いに差し出した腕を交わすように、互いの血を啜った。

「これで俺たちは兄弟だ」


 今、ここに血を分けた義兄弟が誕生した。

 それは、天涯孤独であった山峯に取って、初めて得た家族であった。

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