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男船  作者: 秋山善律
33/35

3-6

 山峯と佐郷が男船を訪れて、早一月が経とうとしていた。

 まだまだ覚束ないながらも漁の仕事もこなし、また苦楽を共にしていた船員達からは次第に、仲間として認められ始めていた。


 今宵は、珍しく甲板での宴会行為が行われている。

 今日一日の漁獲高に気分を良くした丹後の計らいであった。

 皆、酒樽の置かれた中心を取り囲むように輪になり、思い思いに過ごしている。

 猥雑な談笑で笑い合う者、丁半博打を行う者、滅多に出されることの無い馳走を一心不乱にかき込む者、そんな輪から一人距離を置くように、山峯は海を背に、彼らを眺めていた。

 手には注がれた酒が握られている。

 久方ぶりの酒の味は、まさに五臓六腑にまで染み渡るようであった。

「山峯。どうした?こんな所で」

 そんな山峯に佐郷が近寄り、声をかける。

 少し間をおいて、山峯は答えた。

「いや……いいモンだな。仲間ってのはと思ってな」

 これまで、他人を寄せ付けず生きてきた彼にとって、始めて去来する感情であった。

「バカだな!俺らももうその一員じゃねぇか」

 酒が入り、いつになく上機嫌であった佐郷は笑って山峯の肩を叩いた。

「オイ!久しぶりにおっ始めねぇか!?男船音頭だ!」

 唐突に船員の誰かがそう船員達に大声で提案した。

「男船音頭?」

 耳に覚えのなかった山峯と佐郷はお互い顔を見合わせた。

「オウ!やってやろうぜ!」

「ほうじゃ!ほうじゃ!」

 各所から、同意の声が挙がる。

「よっしゃ!俺が一番槍だ!」

 そう、輪の中心に名乗り出たのは三島であった。

「オウ!シゲさん!ええぞ」

 三島は着用していた六尺褌を素早く取り外し、仁王立ちとなった。

 ぱち、ぱちとまばらな手拍子を取る音が響き始め、やがてそれは統率されたリズムへと昇華されていく。

 ──男船は、男の船サ

 ──褌姿の男がひしめく

 ──裸一貫ど根性

 ──人生一路、男船

 ──港に残した、女房を思い

 ──今日も一発ズリをこく

 ──褌一丁、男船

 ──男一匹、男船

 船員達の唱和と拍子に合わせ、三島はフルチンで踊っている。

 いかにも男所帯といった風情の催しであった。

 音頭と言っても終わりはなく、次々と踊りに参加する船員達とともに繰り返された。

 山峯は目を閉じて耳を傾けながら、一口、また一口と酒を口に運んでいた。

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