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山峯と佐郷が男船を訪れて、早一月が経とうとしていた。
まだまだ覚束ないながらも漁の仕事もこなし、また苦楽を共にしていた船員達からは次第に、仲間として認められ始めていた。
今宵は、珍しく甲板での宴会行為が行われている。
今日一日の漁獲高に気分を良くした丹後の計らいであった。
皆、酒樽の置かれた中心を取り囲むように輪になり、思い思いに過ごしている。
猥雑な談笑で笑い合う者、丁半博打を行う者、滅多に出されることの無い馳走を一心不乱にかき込む者、そんな輪から一人距離を置くように、山峯は海を背に、彼らを眺めていた。
手には注がれた酒が握られている。
久方ぶりの酒の味は、まさに五臓六腑にまで染み渡るようであった。
「山峯。どうした?こんな所で」
そんな山峯に佐郷が近寄り、声をかける。
少し間をおいて、山峯は答えた。
「いや……いいモンだな。仲間ってのはと思ってな」
これまで、他人を寄せ付けず生きてきた彼にとって、始めて去来する感情であった。
「バカだな!俺らももうその一員じゃねぇか」
酒が入り、いつになく上機嫌であった佐郷は笑って山峯の肩を叩いた。
「オイ!久しぶりにおっ始めねぇか!?男船音頭だ!」
唐突に船員の誰かがそう船員達に大声で提案した。
「男船音頭?」
耳に覚えのなかった山峯と佐郷はお互い顔を見合わせた。
「オウ!やってやろうぜ!」
「ほうじゃ!ほうじゃ!」
各所から、同意の声が挙がる。
「よっしゃ!俺が一番槍だ!」
そう、輪の中心に名乗り出たのは三島であった。
「オウ!シゲさん!ええぞ」
三島は着用していた六尺褌を素早く取り外し、仁王立ちとなった。
ぱち、ぱちとまばらな手拍子を取る音が響き始め、やがてそれは統率されたリズムへと昇華されていく。
──男船は、男の船サ
──褌姿の男がひしめく
──裸一貫ど根性
──人生一路、男船
──港に残した、女房を思い
──今日も一発ズリをこく
──褌一丁、男船
──男一匹、男船
船員達の唱和と拍子に合わせ、三島はフルチンで踊っている。
いかにも男所帯といった風情の催しであった。
音頭と言っても終わりはなく、次々と踊りに参加する船員達とともに繰り返された。
山峯は目を閉じて耳を傾けながら、一口、また一口と酒を口に運んでいた。




