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男船  作者: 秋山善律
30/35

3-3

 山峯顕士の人生は、常に孤独に彩られていた。

 幼き頃に両親を失くし、施設で育った彼は、近隣では得体の知れない問題児として周知されていた。

 今となっては寂しさを紛らわせる為であったのだろうか、彼は喧嘩に明け暮れる幼少期を送り、去就が可能な年齢になると、すぐに施設を飛び出した。

 そこからは全国を転々とし、根無し草のような放浪生活を続けた。

 特に理由があった訳ではなく、何となく彼にとってはそれが合っているように感じていた。

 様々な飯場やドヤを渡り歩き、他人と深く関わる前にはフラリと旅に出る。

 訪れた先々で、情婦を拵える事もあったが、肉体関係以上の物には発展しなかった。

 そのような生活を、彼は20年あまりも繰り返している。

 そんな空虚な彼が、初めて生を実感することができたのが、男船であったのかもしれない。


「やったな、山峯!10m突破だ」

 最早男の修練所と化した甲板において、暇を見つけては山峯、佐郷は共に訓練に励んでいた。

 彼等は鍛錬の結果、種飛ばしの競技において10mという人間離れした記録を達成している。

「ああ、丹後のオッサンには遠く及ばねぇが……」

「なに、この航海が終わるまでには追い抜いてやるさ」

 佐郷がそう口にすると、山峯はどこか物憂げな様子で答えた。

「そうだな……」

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