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男船での作業は交代制となっていた。
十時間ぶっ通しで働き、仮眠を取る。
仮眠室は六人分一部屋しかあてがわれておらず、ベッドが満杯の時は床や通路で横になる。
部屋は常に暑く湿っており、汗ばんだ男達の体臭が匂った。
また、常に揺れる船体に、とめどなく響く罵声、怒声にイビキ。
とてもではないが、まともな神経を持ち合わせた者であれば就寝など不可能であった。
しかしながら、人間とは環境に適応するものである。
初めは眉をしかめていた新入り二人も、慣れた様子で寝支度を行える程になった。
船内での唯一の楽しみといえば、食事くらいのものであった。
メニューは大抵形の悪いマグロか、餌に用いるイワシなど、これらを船員が思い思いにアレンジして食する。
行儀も何も、あったものではない。
誰もが汗と塩にまみれて行き交い、不浄な手で米をかき込む。
話題といえば、漁の話か武勇伝、もしくは犯罪自慢、港に残した女や娼婦についてがほとんどを占めた。
常に死と隣り合わせという状況がそうさせたのだろうか、山峯は、船員達と過ごすこの時間を、心地がよいと感じ始めていた。




