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時を戻して現在、男船の甲板では山峯と佐郷が男の特訓に励んでいた。
「やったじゃねえか、フォームを改善したら飛距離が3mも伸びたぜ」
「ああ、お前のおかげだ。佐郷」
山峯が他人に礼を言うなど、珍しい事であった。
自身もそのように感じたのか、心の中で自嘲した。
男船に乗船して、また佐郷と出会ったことで、彼の心境に何らかの変化が芽生え始めていたのかもしれない。
「このまま行けば、10m越えも遠くないな」
男二人が、研鑽に励む光景を、丹後は操舵室の脇から眺めていた。
──今回はなかなか気合の入った野郎共が入って来やがったじゃねぇか……。
山峯と佐郷の、潜在的な実力を感じ取っていた丹後は、密かな頼もしさを抱いている自身に戸惑った。
──バカバカしい。主を獲るのはこのオレ様だ。所詮船員なんざ使い捨ての駒よ……。
唐突に降って湧いた感情を振り払うように、そう吐き捨てた後、彼は操舵室に姿を消した。
──出港の時が近づいていた。




