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やがて、永遠に続くかと思われた嵐の夜も去り、かろうじて全壊を免れた漁船は運良く、近隣の漁港に停泊することができた。
生き残りは丹後一光を含めた船員数名程度、船の状態から、生還は奇跡と賞された。
しかし、ただ一人尊敬し、目標としていた父を失い、丹後は、己を見失っていた。
無気力にいきる日々が続いたが、一時たりとも、父の最期の言葉が耳から離れることはかった。
海の主を仕留める。
やがて一光は父親の復讐に生涯を捧げる決心をした。
それからというもの、彼の心には鬼が棲みついているようだった。
彼は取り憑かれたように、屈強な船員を掻き集め、危険な海域に赴くようになった。
海の主の生態は全く知られていなかった。
唯一、分かっているのは嵐の夜に、危険な海で出会ったという情報だけ。
一光は、その情報のみを手がかりに30余年、漁を繰り返した。
丹後の駆る船は、近隣の漁師から畏敬を込めて、男船と呼ばれるようになっていた。




