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男船  作者: 秋山善律
21/35

2-5

 その時、唐突にそれまで主を引き寄せていた実の足が止まった。

 ──なんだ?急に岩を引っ張ってるみてぇに……

 次の瞬間、実の体はとてつもない力で上空高くに跳ね上がっていた。

 ──なんてこった、全然本気じゃなかったってことかい……。

 実の体はそのまま海に叩きつけられ、衝撃でいくつかの臓器が破裂した。

 実は、己の命が長くない事を悟った。

 そのまま、どんどんと主によって船から引き離されていく。

 へのこ筒で針糸が繋がっているせいで、逃れることができなかった。

「親父ーー!?」

 船上からその光景を見ていた一光は、助けに行くことも叶わず、ただ父の名を呼び続けることしかできなかった。

「一光ーーお前じゃーー!お前がいつかワシの代わりにコイツをとってくれやーー!」

 実は己に残された命を振り絞るように、息子に自らの仇討ちを託した。

 闇夜で、父の表情は見る事ができなかったか、憑き物の落ちた、解放されたような安堵の笑みを浮かべていたように思えた。

「親父ーー!!」

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