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その時、唐突にそれまで主を引き寄せていた実の足が止まった。
──なんだ?急に岩を引っ張ってるみてぇに……
次の瞬間、実の体はとてつもない力で上空高くに跳ね上がっていた。
──なんてこった、全然本気じゃなかったってことかい……。
実の体はそのまま海に叩きつけられ、衝撃でいくつかの臓器が破裂した。
実は、己の命が長くない事を悟った。
そのまま、どんどんと主によって船から引き離されていく。
へのこ筒で針糸が繋がっているせいで、逃れることができなかった。
「親父ーー!?」
船上からその光景を見ていた一光は、助けに行くことも叶わず、ただ父の名を呼び続けることしかできなかった。
「一光ーーお前じゃーー!お前がいつかワシの代わりにコイツをとってくれやーー!」
実は己に残された命を振り絞るように、息子に自らの仇討ちを託した。
闇夜で、父の表情は見る事ができなかったか、憑き物の落ちた、解放されたような安堵の笑みを浮かべていたように思えた。
「親父ーー!!」




