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男船  作者: 秋山善律
19/35

2-3

 その時だった。

 船体を揺るがす程の衝撃が襲ったのは。

 それも、一度や二度ではない。

 ──何だぁ?

 この期に及んで、他の漁船にでも衝突したのかと考えたが、それにしては頻度が不自然だ。

 それは、例えば海中から巨大な生物に攻撃を受けているような……。

 もしやと思い、実はソナーを確認した。

 かろうじてだが機能していたそれには、有り得ないサイズの魚影が写り込んでおり、船の周囲を巡回しているようだった。

 ──なんてこった!現れやがった。

 その時、彼は既に正常な判断力を失っていたのかも知れない。

 息子と、船員の命よりも、己の悲願の成就を優先しようとしていた。

 彼は船長の任務を放棄し、しまってあったへのこ筒──自身の陰茎に装着した竿を固定する、伝統的漁法に用いられる釣具である──一式を取り出した。

 来たるべき日の為に、それらは完璧な手入れがなされている。

 彼は着用していた六尺褌を脱ぎ去り、手際よくへのこ筒を装着し、釣竿を固定した。

 実のそれは、まだ見ぬ強敵との戦いに備えるかのように、固く隆起している。

 ──待ってやがれ。俺が伝説に終止符を打ってやる……

 彼は夜間における視認性の確保の為にと思い付き、懐中電灯二本を頭に巻きつけた。


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