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その時だった。
船体を揺るがす程の衝撃が襲ったのは。
それも、一度や二度ではない。
──何だぁ?
この期に及んで、他の漁船にでも衝突したのかと考えたが、それにしては頻度が不自然だ。
それは、例えば海中から巨大な生物に攻撃を受けているような……。
もしやと思い、実はソナーを確認した。
かろうじてだが機能していたそれには、有り得ないサイズの魚影が写り込んでおり、船の周囲を巡回しているようだった。
──なんてこった!現れやがった。
その時、彼は既に正常な判断力を失っていたのかも知れない。
息子と、船員の命よりも、己の悲願の成就を優先しようとしていた。
彼は船長の任務を放棄し、しまってあったへのこ筒──自身の陰茎に装着した竿を固定する、伝統的漁法に用いられる釣具である──一式を取り出した。
来たるべき日の為に、それらは完璧な手入れがなされている。
彼は着用していた六尺褌を脱ぎ去り、手際よくへのこ筒を装着し、釣竿を固定した。
実のそれは、まだ見ぬ強敵との戦いに備えるかのように、固く隆起している。
──待ってやがれ。俺が伝説に終止符を打ってやる……
彼は夜間における視認性の確保の為にと思い付き、懐中電灯二本を頭に巻きつけた。




