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「おう、こりゃあ何の騒ぎだ?」
一瞬にして、船室に緊張が走る。
丹後であった。
押黙る船員たちの畏怖に満ちた沈黙を目の当たりにするだけで、彼がこの船の絶対的権力者であることが伺える。
二人を取り囲むように並び立つ船員、そして正面に設けられた空間。
この2つの要素から丹後は容易に回答を導き出す。
「……なんだ。種飛ばしか」
そう言って、こちらに向かって歩んでくる。
彼の進行方向にいた船員たちは、自ずと道をあける。
「懐かしいな。まだ続いてやがったのか」
そう言って、二人の前に対峙すると、周りを囲んでいたギャラリー達に向かって投げかけた。
「この中で一番は誰だ?」
やがて、船員の中から答える者が現れる。
「……そっちの新入りで、さっき記録更新されました。9mです」
それを聞いた丹後は
「そうか。まあまあイキのいい奴がいやがるじゃねえか……」
と、不遜な微笑を浮かべた。
「参考までに教えておいてやる」
そう言って、踵を返す丹後。
「現役時代の俺の記録は、23.8mだ。ま、まだまだ衰えちゃいねぇがな」
──に、にじゅ……?いくつだって……?
突きつけられた、あまりに途方もない数字に、船員はおろか、先程まで余裕を浮かべていた佐郷までもが冷や汗を浮かべている。
「まあ、せいぜい男を磨くことだ。出港まで時間がねぇ、キッチリ準備してかかれよ!」
船長の激に、全員一致でオスと答えた。
「やれやれ、とんでもねぇ船に来ちまったぜ」
そう、山峯が呟くと、佐郷は答えた。
「ああ。とんでもねぇオッサンだ。だが、いつかは追い抜いてやるさ……」




