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男船  作者: 秋山善律
15/35

1-14

「おう、こりゃあ何の騒ぎだ?」

 一瞬にして、船室に緊張が走る。

 丹後であった。

 押黙る船員たちの畏怖に満ちた沈黙を目の当たりにするだけで、彼がこの船の絶対的権力者であることが伺える。

 二人を取り囲むように並び立つ船員、そして正面に設けられた空間。

 この2つの要素から丹後は容易に回答を導き出す。

「……なんだ。種飛ばしか」

 そう言って、こちらに向かって歩んでくる。

 彼の進行方向にいた船員たちは、自ずと道をあける。

「懐かしいな。まだ続いてやがったのか」

 そう言って、二人の前に対峙すると、周りを囲んでいたギャラリー達に向かって投げかけた。

「この中で一番は誰だ?」

 やがて、船員の中から答える者が現れる。

「……そっちの新入りで、さっき記録更新されました。9mです」

 それを聞いた丹後は

「そうか。まあまあイキのいい奴がいやがるじゃねえか……」

 と、不遜な微笑を浮かべた。

「参考までに教えておいてやる」

 そう言って、踵を返す丹後。

「現役時代の俺の記録は、23.8mだ。ま、まだまだ衰えちゃいねぇがな」

 ──に、にじゅ……?いくつだって……?

 突きつけられた、あまりに途方もない数字に、船員はおろか、先程まで余裕を浮かべていた佐郷までもが冷や汗を浮かべている。

「まあ、せいぜい男を磨くことだ。出港まで時間がねぇ、キッチリ準備してかかれよ!」

 船長の激に、全員一致でオスと答えた。

「やれやれ、とんでもねぇ船に来ちまったぜ」

 そう、山峯が呟くと、佐郷は答えた。

「ああ。とんでもねぇオッサンだ。だが、いつかは追い抜いてやるさ……」

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