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渡された雑誌の処遇について思いあぐねていると、再び別の男から声をかけられた。
得てして、新入りというものはどこにいても注目の的である。
「おう、新入り」
屈強そうな大男である。身長180cm位であろうか。当時としては相当大柄な部類だ。
ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべており、これまで関わった船内の人間とは別な、侮蔑の混じった嘲笑を向けられているように感じる。
「新入りのくせにこの俺様に挨拶もなしとは、いい度胸じゃねぇか」
いわゆる新人イビリと言う奴か。この手の手合いはどこにでも出現する。
「悪いが、ここでは毎日が死にもの狂いだ。お前が背中を預けるに足る資格があるか、試さなくちゃならん」
気がつけば、それまで思い思いに過ごしていた連中がこちらを注目し、期待の眼差しを送っている。
大方、新入りに肉体的、もしくは精神的な屈辱を与え、その後の力関係を明確にしたいのだろう。
「そこでだ。今からお前にはこの場でズリセンをこいてもらい、種の飛距離を測ってもらう。これまでの平均は3M。この数字を下回るようなら悪いがお前を仲間と認めねぇ」
なるほど、そう来たか。
山峯は心中で嘆息した。数々の鉄火場を渡り歩いてきた彼にとっては珍しくない状況であった。
こういった連中を黙らせるには、相手の用意した土俵で、相手の提示したルールに則り、完膚なきまでに勝利する事だ。
「分かった。受けよう」




