12話:馬車の購入と名付け
俺達一条家は現在、馬車を買いに来ていた。
「馬車はそこまで大きくしなくてもいいだろうな」
「そうね。余分な出費は避けたいわ」
「うんうん。それがいいよ」
「だな~」
父さんの発言にみんなは同意した。
基本お金の管理は母さんがしている。だから余計な物は買えないのだ。
店員の案内で馬車を一台一台見る。
「これなんてどうでしょうか? 五人乗りとなっており、ドワーフが作った良品です。お値段は百万ルピとなっています」
説明を聞いた俺達は馬車の周りを見て回る。
俺は車輪を見る。
どうやらサスペンションは無いようだな。
まあ、サスペンションという発想が無いのかも知れない。
まあ、自分で作ればいいだろう。
「母さんはどう思う?」
「んー、そうね。大きさも丁度いいし、これにしましょうか。でも少し高いのよね~」
「馬車を引く馬だって買うでしょ?」
「そうだな」
話に父さんも混ざってきた。
「馬と馬車の合計で百二十万って所だろう。父さんは交渉が苦手だからなぁ……」
「そこは私に任せて!」
舞がそんな事を言い、店員のところに向かった。
舞は店員に近寄って話かける。
「すみませ~ん。馬車を引く馬もありますか?」
「はい。ありますよ。一頭あたり二十万ルピとなります」
「そうですか~。馬車と馬を買いたいんだけど、少しでもいいので安くなりませんか?」
舞はそう言って両手を前に組み、あざとい様な表情を店員に向けた。
「うっ、こ、こちらも商売です。定価より安くは──」
「……ダメ?」
潤んだ瞳。
店員には今にも泣きそうに見えたのだろう。
「わ、わかりました! 馬車と馬で百十万ルピでどうですか?」
「本当ですか!? 有難うございます!」
俺達に振り返った舞は、ニヤリと悪い笑みを浮かべ親指を立てた。
店員に気づかれないように俺達も親指を立てた。
母さんが店員に金を渡す。
「い、一括ですか? もしかして貴族様では……」
一括で支払った俺達に驚いたのか、店員がそんな声を上げた。
いやだなぁ~、俺達は貴族ではないのだよ。
父さんが否定した。
「いえいえ。私達は腕に自信がある旅人ですよ」
「そ、そうなのですか」
店員はどこか納得してないように見えるが、聞かれないし別にいいだろう。
「それですぐに用意できる? それと馬はビビったりしないやつを頼む」
「はい! 暫くお待ち下さい!」
そう言って店員は準備に取り掛かった。
それから数十分すると、店の庭に馬車が用意されていた。
「運転は出来ますか?」
店員の言葉に俺達は顔を横に振る。
「わかりました。私が教えます」
俺達は「お願いします」といって習うことにした。
だが、俺達はすぐに運転方法をマスターし、店を後にしそのまま街を出るのだった。
◇ ◇ ◇
現在、俺達はフェルメニア王国の首都へと向かっていた。
そんな道中で、馬車を運転していた俺は尋ねた。
「名前付けてあげる?」
「もちろんだよ! これからずっと一緒なんだから!」
「そうだな。付けて上げないと可哀想だからな」
「そうね。四人だし一人一つ名前を出して多数決で決めましょうか」
舞に父さんと母さんがそう言った。
そして、母さんが言ったように一人一つ名前の候補を上げることに。
馬の毛色は茶色で、性別はオスだ。
それにあった名前がいいだろう。
俺、舞、父さん、母さんの順で候補を上げることに。
「ブラウ。茶色だし『ン』を付けたらそのままだから抜いてみた」
「お兄ちゃんそれは無難だよ」
「だな」
「そうね」
無難なようである。
「なら舞はどうなんだ?」
「ふふん!」
「なに胸張ってんだ。はよ言え」
「もう……名前はスレイプニルよ!」
「「「……」」」
無言になった。
だってどう見たって足が四本しかないのだ。
しかもこの馬は神獣ではない。
「「「没!」」」
「そんなぁ! ならお父さんはどうなのよ!」
「俺か? 俺は──ベ○ータだ!」
「「「サ○ヤ人じゃねーんだよ!」」」
見事なシンクロである。
ホントに勘弁してくれ……
「母さんは?」
俺達の視線が母さんに集まる。
「ユニコーン」
「「「……」」」
どうやら俺以外全滅のようだ。
「……ブラウでいいよな?」
「「「異議なし」」」
こうして名前が決まるのだった。




