13話:襲われた後の馬車
ブラウと名付け終わり、俺達一行はフェルメニア王国へと向かっていた。
次の街を経由していくのだが、王都までは馬車で一日掛かると言う情報を得ていた。
なので、今回も野営をする事になった。
「良い天気だなぁ~」
舞がそう言って空を仰いでいた。
「そうね。こんなにも天気が良いとピクニックに来た気分ね」
「そのピクニックは多分田舎だけどな」
俺は母さんにそう答えた。
「田舎は空気が澄んでいるからいいじゃないか」
「父さんと母さんの実家が田舎だからだろ……」
そう。父さんと母さんの実家がある場所は田舎なのだ。コンビニに行くのだって車で二十分はかかるのだ。
「田舎だっていい所じゃない」
「そうだぞ」
「そうだよお兄ちゃん」
「うっ……なんで俺が悪者っぽくなるんだ」
事実を言っただけだろ……
それから数時間後。
「ねぇ、何か聞こえない?」
舞が急にそんな事を言った。
俺達は一度馬車を停車させて耳を澄ます。
それでも何も聞こえない。
「なにも聞こないぞ?」
父さんと母さんも「聞こえないな」「聞こえないわね」と言う。
「確かに森の方から聞こえたんだって! 何か悲鳴みたいな声が! お父さんとお母さんは歳だから聞こなかったと思うけどお兄ちゃんは聞こえたはずだよ!」
舞に歳だからと言われた二人はしょぼんと落ち込む。
「そんな声どこからも──」
聞こえない。俺がそう言おうとした瞬間、微かにだが声が聞こえた。
「聞こえたでしょ!」
「聞こえたな。悲鳴みたいな声だ」
「父さんも聞こえた」
「母さんもよ」
全員聞こえたようだった。
「どうするんだ?」
「助けに行かないと!」
助けに行くと言っても、相手が盗賊だったりしたらと考える。
そんな俺の肩に手が置かれた。見ると父さんだった。
「元々覚悟はしているんだ。どの道地球には戻れない。ならこの世界の住人として生きて行くべきなんだ。だから、命を奪うという覚悟を決めなければならない」
父さんの言葉に母さんも頷いた。
「……分かったよ。まずは助けに行くのが先だよな」
「そうだ」
俺達は馬車を端に停め、悲鳴が聞こえた方向へと急いで向かった。
向かった先に合ったのは──死体だった。
体の至る所が切り裂かれており、腕や足も落ちていた。
他には馬車の残骸が至る所に散らばっていた。
「うっ……」
舞が口元を抑えた。舞だけではない。父さんも母さんも俺もその臭いから口元を覆った。
「酷い。何があったんだ……?」
長い時間見たくはない。だが何があったかは分かるはずだ。それにまだ死んでから数日経ったのだろう。
詳しくはないのでそこまでは分からなかった。
「……親父、少し調べよう」
「そう、だな」
二人して倒れている人の傷を見る。
「この傷跡は……獣か?」
「恐らくな。この引き裂かれた跡は獣か魔物に違いない。盗賊ではないのは確かだ」
身元が分かるものが無いか探すことに。
「母さんと舞は周囲を警戒していてくれ」
「……そうさせてもらうわ」
「……うん」
それから探していると見つかった。
「こいつらって……」
「奴隷商人、か……」
奴隷商人のようだった。
多分街道で襲われ、そのまま馬車で逃げようとしたが無理だったってことか?
推測だが、その方が確率が高い。
「これだけで分かればいいか。でも……」
「わかってる」
死んでいる人をそのままにする訳にもいかない。
「伊織、埋めてやろう」
「ああ」
父さんと二人で掘った穴に遺体を並べる。
「確か死体はそのままだとアンデットになるって書いてあったよな?」
「ああ……俺がやるしかないよな」
「すまない」
「しょうがないよ」
俺は一体一体燃やしてから埋めてやった。
そして、四人で黙祷を捧げた。
「……声の正体を探さないとな」
「う、うん」
こうして辺りを探す事になった。




