6話 転入生
新年度―――新年度と言ったら転入生だ。転入生とは、退屈な日常を破壊するために突如として現れた、不可逆的な
「特異点」である。
その身に宿る混沌と、隠しきれない圧倒的王座の
オーラは計り知れない。
そんな新星が今日、俺の幼稚園にやってくるとか…
◇◇◇◇
ゆ:「ねえ、今日転入生が紹介されるみたい!女の子
かな?」
け:「その言葉、煩悩の塊ですよゆうた君。慎んでく
ださい。…そうだ、あなたにも数珠を貸してあ
げましょう!」
(新手の宗教なんだよなコイツ。思想強い子だし。いつか『この世界は2種類の人間が…』とか言い出すよ。『俺か、俺以外』だよこの子。)
モ:「数珠なんでそんなに持ってんだよ。うちらに渡
した分含めて7個じゃん!チョーウケるんです
けどー。」
し:「おいお前らー。もうすぐ朝の会始まるから席つ
けよー。俺たちもう年長なんだぜー。」
モ:「あ、ごめんね。しんちゃんも数珠渡された?」し:「おう。もあのヤツと同じだ…お揃いだな。」モ:「お…お揃いか…やった。」(健気な小声)
さ:「もー。もあちゃん心の声漏れちゃってるよ〜。
良かったね〜お揃いさんで。」
(フワフワの声と笑顔)
俺:「お揃いって、結婚指輪みたいだよな…」
(ごめんな、もあ&しんすけ。おじさん、片思い促進派なのだよ…。もっとイチャラブして!1000円あげるから!)
し:「お前マジで調子のるな!モア困ってんだろ!」モ:(声にならない喜び!)
先生:「はーい皆さん。朝の会始めますよー。席につ
いてください。」
(いいところを邪魔しおって。許せんな!)
先生:「今日は転校生を紹介します。」
ガラガラガラ…廊下のドアをスライドさせて入ってきたその子は、初めて見た気がしなかった。
先生:「自己紹介できる?」
先生が優しく訊いた。その子は頷いて言った。
は:「私の名前は、篠田はるかです。住所は、千葉県
いすみ市8-…」
先生:「あ、それは飛ばしていいよ!!」
(クセ強いの来たな。平気で領域展開してきそうで怖いなー。)
は:「お母さんの仕事の都合でここに来ました。よろ
しゅうお願いします。」
(仕事の都合ってパワーワードだよな。てかこの子何言ってもパワーワードになるよな。)
俺:「よろしくねー。はるかちゃん。お母さんは何の
お仕事してるの?」
は:「とおる君。よろしくな。普通のOLやで。でもな
んかオカンのお兄が 行方不明いうて、こっちの
支部?ってとこ移ったんや。今日は予定あるか
らもうそろそろ迎えに来るで。よかったら会っ
てくれーな。」
(……ん? オカンのお兄が行方不明? それって、
大人の俺のことじゃねーか!)
ガラガラガラ…また廊下のドアが開いた。
母:「はるかちゃん。おうち帰るわ……って、ちょっ
と待って、その隣の男の子、えらいお兄に
似てるなあ!」
(ゲッ!! 思い出したぞ、この人……
俺の妹だ! ってことは、この子は俺の姪っ子!?
え、気まずい……バレたらロリコンて思われる!
それだけは避けたい!!)
俺:「フハハハハ! ウンコウンコー! グヘヘ〜!」(この歳にもなって下ネタか……恥ずかしっ! でもしょうがない、今日は三十路やめる!)
母:「え、性格までそっくりやな! この狂ってる具合
が当時のまんまや!」
(ミスった!! 当時の俺、身内にめっちゃキチガイで 有名人だったの忘れてた!)
母:「ま、ええわ。でも久しぶりにお兄と会えた気が
して楽しかったわ〜。ほんまおおきに。」
は:「オカン、もう行こう。帰ってアイ◯ツごっこし
たいねん! ほなな、とおる君。」
◇
いやいや。まさか姪っ子と同じ幼稚園に通うなんて思ってもみなかったな。てかまずい! キチガイを演じてたから周りから変な目で見られたかも。はるかちゃん…恐るべし…
(後日、僕は知育教室に1週間通った。幸い、僕のキチガイぶりは先生にしか見られてなかったみたいだ。危なかったぜ!)
―――次回、子供の日・チルドレンウォーズ―――




