9話 夕涼み会:前編
「夕涼み会」……それは、果てなき灼熱の支配(真夏日)に抗う者たちが、黄昏の刻(夕暮れ)に集いし禁忌の儀式。
日中の太陽神がもたらす猛威を一時的に封印し、来たるべき夜の帳を迎え入れる…
つまり、**「夏の夕方にみんなで集まって、涼みながら出店や盆踊りを楽しむ最高にエモい夏」**のことである。そんな最悪の儀式が今宵、この
幼稚園でも、始まろうとしていた。
◇◇◇◇
ヒグラシが鳴き始めた。
先:「皆さん。集まってくださーい。」
は:「ほらみんな早よ集まって!先生困って
はるやろ!」
(はるか、張り切ってる姿が妹にそっくりだな…)
先:「ありがとうはるかちゃん。」(爽やかスマイル)
さ:「ねえモアちゃん。あの先生、イケメンだね。
さくら、好きになっちゃいそう。」
(さ、ささ、さくらさん!!やだ、見捨てないで…
お願い、俺も将来あれぐらいになるから!)
モ:「あーしはしんすけ君の方がイケメンっしょって
感じだけど、さくらちゃんはとおる君より先生
ガチ推し系?」
(モア様ナイスだよ!アンタと友達でほんとに良かった。ギャル怖いって思ってて本当にごめん!)
さ:「うーん…。先生の方がカッコイイけど、
とおる君はとおる君で、いっぱい良いところ
あるんだ〜。だから、どっちも大好き!」
(やっぱりあのイケメンはライバルだ!許さん!)
し:「なあ、とおる〜。女子は何話してんだ?」
俺:「しんすけ…俺はお前が羨ましい…。」
し:「お、おい!…何を…聞いたんだよ…。」
徹と真佑は夏なのに、震えていた。
◇
先:「じゃあ、お化け屋敷からやりましょうか。
この前決めたペアに分かれて下さい。」
俺:「よ、よろしくね。さくらちゃん。」
さ:「さくらのこと守ってね、とおる君!」(破壊力抜群の笑顔)
俺:(あぁーさくらちゃん!やっぱ好きだな。)
「命に代えても護るよ。」
さ:「えへへ、さくらもとおる君のこと、とっても
大好きだよ〜。」
(しまった!心の声と言おうと思ったことが
逆転した!さくらちゃん恐るべし…)
先:「じゃあ次、モアちゃんとしんすけ君!」
し:「モア、おお俺から、は、はは、離れるんじゃ
ないっ…ぞ!」(震える声)
モ:「ありがと…しんすけ君…」(耳真っ赤)
(まじで結婚してほしい2人尊い!!)
?:「南無阿弥陀仏!南無阿弥陀仏!ギャー!」
部屋の中から声が聞こえた。途端、急に静かになった。
(え、大丈夫なのこれ?本物出てない?!先生も
様子見に行っちゃったよ!)
先:「ごめんごめん、皆生きてるから大丈夫だよ。」
(え、ちょ待っ…)
先:「じゃあラスト、2人共いってらっしゃい。」
◇
俺:「さくらちゃん。大丈夫、大丈夫だよ。俺が
ついてるからね…。」
さ:「グスッ…さくら、おうち帰りたい…グスン…」
(あーあ、俺のさくらを泣かせた教師は後で
ア◯パンチのフリして全力で殴ろ。
てかさくらちゃん、ずっと俺のスモックの裾掴んでるなー…。)
俺:「怖かったら……手、繋いでもいいよ…。」
さ:「あ、ありがと…グスン…。さくら、ちょっと
元気出た。グスッ…ありがとうとおる君!」(今世紀最大のエンジェルスマイル)
俺:「どういたしまして。」(顔真っ赤)
その時、かわいい園児のやり取りを邪魔するかの
ように、お化け役が出てきた。
化:「やっと…目、合わせてくれたね…。」
(いやお化けの領域超えちゃってるよ!!現実世界の恐怖に片足突っ込んでるよこのお化け!)
さ:「キャーーー!!」(後ろに倒れる)
俺:「大丈夫かさくら!立てるか?」
さ:「今ので、さくら腰抜けちゃった…とおる君、
先逃げて…。」
化:「早く逃げなきゃ、食っちゃうぞ!」
俺:「さくらを置いて逃げる程、俺はバカじゃない!
それに約束したろ?俺が絶対護るって…だから
二人で逃げるぞ!さ、早く背中に。」
さ:「ありがとう…グスン。とおる君、大好き。
将来絶対結婚しよ!」
(ありがとう、お化け役の園長先生…あなたの
おかげて俺はライバルに勝ったぜ!…へっへっへ)
徹はさくらをおんぶして逃げようとした。その時…
徹は躓いて転んだ。
化:「まずそっちのお嬢ちゃんからだ!グヘヘ…
いただきまーす!」
俺:「さくらちゃん、危ない!」
俺はさくらちゃんを庇うようにして、さくらちゃんに抱きついた。
(ゲームオーバーか…さてそろそろお化け役の人も
助けてくれるだろう………あれ、ウソ、、コイツ
人じゃない…本当に俺たちを喰うつもりだ!
クソッ…誰か、助けて…)
?:「大いなる光で照らし、すべての罪を滅ぼして成
仏させたまえ…光明真言光明真言…破ッ!」
化物は、またたく間にサラサラと消えてった。
?:「ふーっ。間に合った…。2人共、大丈夫かい?」
(あ、貴方はまさか…寺生まれのTさ……)
さ:「先生!!うっ、うわぁぁぁぁぁん!怖かった…
さくら、怖くて…グスン。本当に死ぬかと
思ったぁぁぁ、うわぁぁぁん!」
俺:「先生!ありがとうございました!…本当に…
本当に良かった…うえぇぇぇん!…グスッ…」
(幼児化してメンタルが弱くなった)
先:「2人共…怖かったね。もう大丈夫!僕が悪いの
やっつけたからね〜。」
◇
先生は俺たちのことを、めいいっぱい抱きしめて
優しく言ってくれた。先生がいなかったら、俺たちは神隠しに遭っていたかもしれない。そう聞かされたときは、さすがに鳥肌がたった。でも本当に、
さくらが無事で良かった…本当に。
先生に感謝しなくては。でもさくらを抱きしめた
ことは許さないもんね!ふんだ!
―――次回、夕涼み会:後編
そして、先生との別れ?!―――




