痺れ芋⑦
(麦を粉にしたのを食べてたって言っていたし、やっぱり粉にするのが一番身近でいいよね?)
だからといって、粉にすることだけを教えて、麦を粉にしたものと同じように水で薄くのばして食べてと説明するのもなぁ~とミサキは悩む。
(栄養はとれるだろうけど…… 栄養はとれるだろうけど。なんかなぁ……)
その食べ方が不味いわけではないのだろうとミサキは思うが、それだけをもそもそと食べるのは味気ない。自分ならそれだけの食生活には耐えられないと思ってしまう。
しかし、ミサキが米を粉にした上新粉で作れるものは団子だけである。
(白米を石臼で挽いて粉にしたら上新粉。
玄米を石臼で挽いて粉にしたらなんていうんだろう)
おばあちゃんを手伝っていたので、ミサキは作り方を、なんとなく知っている。
(団子なら水があれば作れるし、お鍋とかは使っていない鍋を持っていってもらえばいいし。ただなぁ~)
ミサキはおばあちゃんとの団子作りの工程を思い出す。
(洗米はクリミストの魔法使ってもらえば、お米を炊くよりは使う水を少なくできるような気はするけど…… どうなんだろう?)
団子のときのように茹でるより、柏餅を作ったときのように蒸した方が水は使わない気がするが、焚き火で作ることを考えるなら茹でるのが確実。そもそも蒸し器の在庫は一つしかないから渡せないとミサキは悩む。
(最後に焼けばいけるか?)
以前、ミサキが茹でている団子を引き上げるのが早く中が固く粉っぽかったときに、おばあちゃんが団子を焼いてくれたことを思い出し、焼くことで茹でる水を節約できるかなと考えてみるも、それで食べられる状態にならなかったときのことを考えると、なかなか踏ん切りがつかない。
(少し茹でて焼けばいける? うーん……団子じゃないほうが良い? でも、炊くでも、粉にするのでもなく、水をあまり使わない料理って何があるかな?)
玄米を使った水をできるだけ使わない料理であることを大前提とするなら、ゴマみたいに炒ることだけど。と単純にミサキは考えるが……
「玄米って炒ったら、いりゴマみたいな感じで食べられるかな?」
ミサキがこぼしたひとり言をじっとピーとヤーモは静かに聞いている。
玄米を洗わずにただ炒ることだけで食べられるようになるのかが、試したこともなければ調べる手段も無いためミサキはわからない。
(炒れば生じゃなくなるから食べる事ができそうなきがするけど、食べられたとしても煎っただけの玄米をボリボリと食べるの? それって美味しい?
あ、リゾットとかパエリアは?)
玄米を炒ることを考えて、テレビで見た料理番組でリゾットやパエリアは洗米せずに調理していたことがミサキの記憶から引っ張り出てきた。
リゾットやパエリアは炒めた後に水を入れるので、食べられるようになるのが想像がつく。
粉にするときにおばあちゃんが洗米して浸水までさせた米を乾燥させてからしていたことを考えたら、やっぱり、炒めるだけじゃ、ダメな気がすると不安に思う慎重さをミサキは持ち合わせていた。
(パエリアとかリゾットのが良い気がしてきた。となると、たき火だからパエリアよりもリゾットのが失敗しなさそう)
料理番組で作っているのを見たことがあるだけではあるが、なんとかなるだろうとミサキは前向きだ。
(味付けしなければ、お粥みたいなものだよね?)
ミサキはリゾットを食べたことはないので見た目から想像してだした答えだが、そう考えると、粉にするよりも手順の少ないリゾットを教えるのが一番良い方法な気がしてきた。
ミサキは浸水させている玄米を作業の邪魔にならない所に寄せる。
ピーとヤーモに使用する水の量でダメ出しされたので、引き続き浸水しておいて、あとで炊いて自分が食べることにしたのだ。
(リゾット作ったことないけど、まぁ…… なんとかなるでしょう)
母親が島に帰省してくるたびに、なぜかフライパンをお土産の一つに持ってくるので、使っていない新品のものが沢山ある。それをいくつか持っていってもらえばいいかとミサキは決めたのだが、フライパンに油を注いだところで気づいた。
(油。油いるじゃんねぇー)
自分が当たり前のように使っているものが、ピーとヤーモたちのところでは当たり前に手に入らない。
普段食べていたものを聞いた限り、油があるとは思えない。
「二人のとこでは、油って……」
ミサキの問いかけに、ピーとヤーモは首を横に振った。
注いでいるところを見ていたので、少し色のついた水よりもとろみのある液体がミサキが言う油で、それが自分たちの知るものではないことはわかっていた。
(よし。やっぱり粉だよね! 団子の作り方教えて、使う水の量が無理なら麦と同じように食べてもらおう)
切り替えが早いのはミサキの良いところである。




