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異世界コンニビ1号店  作者: 音音
第1部 世界は飢えている

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痺れ芋⑫

 

 燃料問題は、意外と近くに解決策があった。

 籾殻と、二人が持ち込んだ痺れ芋である。




「薪のかわりに、殻を固めたらどうだろうか?」

 ピーの遠慮と迷いの混じった声に、ミサキは首を傾げ、ヤーモは頷いた。


(殻って何? 玉子の殻?)


 オムレツに使った玉子の殻はあるが、十個分である。ミサキが話の要領を掴めずにいると、ヤーモとピーが頭を下げてきた。

「女神様。我儘なのはわかってます。玄米の殻持ち帰らせてくれないでしょうか?」 

 ヤーモの言葉に、あ! 籾殻のことかとミサキは納得する。確かに収穫した後に籾殻の山が出来ていた。

「好きなだけ持ち帰って貰って良いよ。ただ、いれる袋が…… うん。あった気がする」

 ミサキはお店と家のゴミ袋の在庫を考えて、

 確か八十リットルサイズの厚手のビニール袋が、いつまでも売れずに埃を被ってお店の棚にあったと思い出してホッとする。


「良いんですか!!」

 喜びの声をあげたのはピーで、ヤーモも隣で激しく頷いている。

(え? 袋ぐらい用意するよ?)

 さすがに籾殻を袋か何かに入れずに運ぶのは難しい。


「大切な肥料まで分けてくれるなんて……女神様はお優しい」

 涙をこらえているのか、腕で目元を隠す二人に、ミサキは籾殻のほうか…… と思い、確かに肥料にしようと思えば肥料になるのかな? と思う。

 ミサキは、そういったことに詳しくないし、積まれた籾殻も放置したままで何もするつもりもなかったので、全部持っていってもらっても問題無いくらいである。





「え…… すごいね」

 目の前で繰り広げられる魔法に、ミサキはポカンと口をあけて見入る。


 ヤーモが痺れ芋を宙に浮かせてすりおろすと、そこにピーが魔法で水を入れる。

 すると、ピーとヤーモのどちらかが魔法で加熱したのか湯気が出始めた。

 そこで、ピーが魔法で籾殻を運んで混ぜていく。


(すり下ろすのがなに魔法かわからないけど、水魔法と火魔法? そして、風魔法……かな?)

 少し前に、全身粉まみれになった風魔法とは違うな? とミサキは思うが、粉にするのと、ただ運ぶことの違いは大きいのかもしれないと考えた。

 ヤーモがピーに視線を送ると、ピーは籾殻を運ぶのをやめる。

 ヤーモの頭上でぐるぐると大きな球体の形で動いていた痺れ芋をすりおろして水を加え加熱したものと籾殻が混ざり合って、だんだんと小さくなっていく。


「すごいね」

「痺れ芋はすり下ろして水を加えて加熱すると固まるので、殻を固めるのに使えると思ったんです。

 普段は、ウーシー液と一緒に木の皮を重ね張りして船の材料に使うんですけど」


(木の皮を重ね張りした船?? え? なんか私が想像していた船と違う?? っていうか、すり下ろして水を加えて加熱すると固まるってこんにゃく芋では??)

 大きさこそ違うが、近所のサヨばあちゃんの手作りこんにゃく芋が美味しくて作るのを手伝いに行ったときに見たこんにゃく芋の見た目が痺れ芋に似ていることにミサキは気がついた。

 ミサキの見たことのあるこんにゃく芋よりも、痺れ芋のが倍以上の大きさがあるが。

 ミサキが、船が想像していたものと違うかもしれないことや、痺れ芋がこんにゃく芋だったことに戸惑っていると、地面に物が積み重なる音が響いた。

 籾殻がレンガブロックのように圧縮して固められたものが積まれている。

 圧縮されていることもあって量は両手で抱えきれる程度の量である。


(いや、そんな事で戸惑っている場合じゃないよね)


「ピーは水も風魔法で運べる? 魔法で水を出せる量は少ないって言っていたから、運べるならバケツに水持ってくるけど」

「運べます。さっきので水を出すのは限界だったので、女神様に感謝を!」


 バケツでピーと水を運んだあとは、二人に持っていってもらう野菜や果物を収穫することにした。

 籾殻の燃料や玄米の米俵や籾殻の米俵を持ち帰ってもらうことを考えると、リヤカーと一輪車を使っても、そんなに沢山は乗せられない気がするとミサキは悩む。

(畑がないとはいえ、やっぱり苗とかも持っていってもらったほうが良いのかな)

 田んぼ予定の沼の周りに植えるのは、田植えなどの体験で行った先で大豆を田んぼ周りに植えていたのを思い出したので、それを持っていってもらうつもりだ。


(大豆ならきな粉になるし、砂糖ないけどきな粉団子にできるし。甘くないけど、きな粉の味が加わるだけでちょっとは違うよね?)


 当たり前のように使える砂糖や塩などの調味料。

 それが、どれくらい恵まれていることなのかミサキは実感する。


「乾燥に強いってなると…… なんだろう?」

 ぐるりと畑を見回す。

(……サツマイモしか浮かばない。)


「今回もサツマイモで。うん。

 そう言えば、大豆って豆まけば芽が出るんだよね? え? 出るよね?」

 疑問に思ったところで、答えてくれるモノはない。



 ◇◇◇◇◇◇


 痺れ芋がある分だけ籾殻を圧縮してブロック状にしてピーとヤーモはリヤカーに積んで持っていった。

 リヤカーの三分の一は籾殻を圧縮してブロック状にしたものが積み上がり、残りの半分は玄米と種籾の米俵。

 こんなにリヤカー大きかったっけ? とミサキが疑問に思うよりも前にバランスよく高く積まれた籾殻のブロックと米俵に意識を持っていかれる。

(え? こんなに積んで動かせるの??)

 リヤカーを引くのはピーのようで、頭の上にザルに入れたサツマイモの苗。

 ヤーモは八十リットルサイズの厚手のビニール袋を片手に三袋ずつの、お腹に一袋の背中に一袋背負って、合計八袋。しかも全て中身がパンパンのためヤーモの姿が……というか、顔だけがやっと見える形である。


 何度もお礼を言う二人を見送り、森のなかに二人の背中が消えたところで、ミサキはピーとヤーモの怪力具合に改めて驚いたあと……

「ヤーモの魔法で団子作れば良かったんじゃない?」

 という可能性に気がついた。

 茹でると言うよりも蒸すような感じに近い気がするが団子になるような気がして、ちょっと自分が頑張った意味は? と、ミサキは落ち込みかけたが、それができるならヤーモかピーが言ってくるはずだから、できない理由があるのかも。とミサキは団子作りの説明は無駄じゃなかった。と自分を納得させた。






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