#139 番外編 MOON-ほしへ- ⑦
「よう、昨日もそうして空見てたよな?」
誰かが声をかけてきた
私は、30年ほど眠っていたらしい
先日『先勝真理』と名乗った女性が教えてくれた
私は、大事なものを失った
たった一人の友達
「何か見えるのか?」
いつの間にか一緒になって空を見上げていた
確か彼は、通うことになったこの学園のクラスメイトの一人
「月・・・」
昼間の空に、うっすらと見える月
私は、月を観る度思い出していた
大切な友達と語った夜の事
「あの月に行けたらいいのにね」
「月に行ったら何をするの?」
空に輝く月を眺めながら訪ねた
「お願いをするの」
「お願い?」
彼女の望み
『いつまでも一緒にいられますように』
それは叶わぬ望み
彼女はもう、いないのだから・・・
「月、好きなのか?」
なぜ、話しかけてくるの?
私は独りで居たいのに
「別に・・・」
私はその場を後にした
私にとって学園は、退屈で窮屈な場所でしかない
授業を受けても、何の足しにもならない
みんな私に、奇異な視線を向ける
私は能力のほとんどを失った
でも、わずかな感情の揺らぎは解る
『厄介ごとには関わりたくない』
ほとんどの人はそう思って、他の人との間の距離を取る
突如、転入してきた私に対してもそうすることで日常を送る
だから私は、独りで居ることを選んだんだ
関りを持たなければ誰も悲しまないから
そして今日も部屋へ帰る
そこは、私に与えられた場所
誰も居ない、誰も来ない
何もない、何もしない
ただの空間
「退屈しないのか?」
いつものように空を見上げていると
また、声をかけられた
彼の事は聞いている
『月真優気』
この学園においての特異点
『トラブルメイカー』
「たまには、前を見て笑ったらどうだ?」
視線を合わせない私に、凝りもせず話しかけてくる
『だから』なのだろうか?
特異点故に、珍しいものに目がないのだろう
「笑ったら、辛いことも忘れられるぞ?」
言うに事欠いてそんなことを言ってきた
「忘れられるわけ、ない!」
そう言い捨てて、その場を後にした
忘れられるわけがない
私にとってその悲しみだけが唯一、全てを置いてきた過去との繋がりなのだから




