#136 番外編 MOON-ほしへ- ④
空が紅く燃えていた
止む事なく響く号砲の中
わたしは、マーシャの手を引き森の中を走る
わたし達の居た『施設』は、何者かによって惨劇に呑まれた
事態を理解することもなく、ただその命を絶たれていった
わたしの達は運よく逃げ出せた、のだろうか・・・?
降り続ける雪に方向を失いながらも
ただ、ひたすらに走り続けた
「マーシャ・・・?」
振り向くことなく安否を窺う
「・・・つきの・・・こわいよ・・・」
無理もない
彼女はまだ10歳にも満たないのだから
そしてそれは私も同じ
彼女より二つほど年上だけれども、気持ちは一緒だ
「わたしも、怖いよ・・・」
そう言って、つないだ手に力を込める
「だけど、ここから出なきゃダメ」
宛なんて無い
ただ、少しでも遠くへ行かなきゃダメだ
「オーパ(おじいちゃん)・・・ママ・・・」
ふたりの顔を思い浮かべる
帰らなきゃ!オーパのところへ・・・
きっとオーパが助けてくれる!!
不意に風が吹き抜けた
その風にあおられるように
雪の中へと倒れ込む
「つきの・・・!」
マーシャの声、がかすかに聞こえた
お互いに握っていたはずの手がほどけていた
その手をつかもうと、必死に手を伸ばす
ふたりの指が絡まる
でも、マーシャはその手をつかんではくれなかった
「マーシャ!?」
叫ぶように名前を呼ぶ
握った彼女の手から暖かいものが流れている
あかい、あかい、涙
少し遅れて、銃声が響く
彼女が狙撃されたのだ
「マーシャ!!」
倒れ込んだまま彼女に呼びかける
「つき・・・の・・・」
マーシャも手を伸ばす
気付かなかった・・・
わたしの能力なら、察知出来る筈なのに・・・!?
「どうして・・・!?」
自分に怒鳴りつける
「手を焼かせてくれる」
森の奥から、忌々し気に呟く声
「まさか、あの状況から逃げ出すとは」
言いながら銃口を向ける
「始末しろ」
もう一人が感情もなく命令する
「マーシャ・・・」
こんな状況で、声一つ立てない彼女を抱きかかえてかばう
空気の抜けるような小さな音が、風を切り裂いた




