#134 番外編 MOON-ほしへ- ②
「あなたたちは、いずれ来る世界を担う『選ばれし者』なのよ」
我が国の中でも、一部の者しか持ちえない能力
第二次世界大戦後、世界を相手に最後まで勇敢に戦い抜いた我が国
しかし、その結果は『敗戦』
あの小さな『島国』が世界の頂点を手にした
それから数年
我が国は、自らの国に閉じ籠り時を重ねてきた
「そのためには、今を耐え己を磨く事があなたたちのすべきことよ!」
ある種の『プロタガンダ』ともいえるその言葉によって
国内から、かき集められた子供たち
数十人居た子供たちも今は僅か五人に減っていた
子供にとってこの実験強化は、著しいストレスとなる
それを耐え、乗り越えられるものはさらに限られる
残された子供たちの中から選ばれるのは『ただ一人』
全ては我が国の栄光ある未来の為に―
「おはよう・・・」
おどおどとした口調で挨拶してきた少女
ウサギのぬいぐるみを大事に抱えながら見つめてくる
「・・・・・・・」
私はそんな彼女を疎ましく思っていた
誰の言葉に対しても、ただうつむいて聞いているだけ
私に話し掛けてくるようになったのも『先生』の命令に過ぎない
「あの・・・・・」
抱きかかえたウサギの耳が、わずかに揺れる
「今日は、第2実験だって・・・」
聴こえるかどうかもわからない、控えめな声
「そう・・・・・」
振り向きもせず第2実験場に歩を向ける
この子とは、ここに来た時からこんな付き合いだ
ここに来て既に4年が過ぎた
12歳になった私は4年の間に『サイコメトリー』(精神透視術)の
能力があることが判明していた
始めの頃は『色』として
それは次第に『模様』として感情を示し
今では『声』として『観える』ようになった
でも、この子の『感情』だけは『色』としてしか見えない
おそらくこの子には、そういった能力があるのだろう
だからこそ、私の『監視役』として傍に居るんだ
ずっとそう思っていた
第2実験場
この施設は特殊な電磁波を発していて
外部からの干渉は遮断されている
そして、ここで行われることもまた
外部には漏れることがない
つまり、ここで起きることは誰も知ることが出来ないのだ
私達5人は、ここで極秘の実験を受けている
『パイロキネシス』(瞬間発火)
『サイコキネシス』(遠隔制御)
『イグニッションパワー』(借力制御)
そして私が持つのは
『サイコメトリー』(精神透視)
ただ、この子がどんな能力を持っているのかは誰も知らなかった
後ろから付いてくるこの子を眺めながら思う
この子は何のために選ばれたのか、と
その答えが解るのはその日の夜の事だった・・・




