#130 ボーイ・ミーツ・ガール 14
クリスマスに雪が降ると願いが叶うんだって―
ふたりで空を見上げて妹が言った
「お姉ちゃんは、どんなお願いをするの?」
瞳を輝かせながら、無邪気に笑って聞いてきた
「わたしのお願いはね・・・」
そんな妹を抱き寄せて言った
「みんなで笑っていられる事」
彼女も、両親も、友達もみんな一緒にいつまでも
「急に言い出したのに、すまなかったな」
真由美に手を引かれてケーキを選んでいる彼女を眺めながら
今回のスポンサーであるタケルに礼を言う
「礼を言う事じゃねぇさ」
「みんな、解ってたからな」
さすがに、長い付き合いの事はあるという事か
「アイツはきっと来るから『もう少し待ってやってくれ』って、みんなに頭下げてたんだからね!」
『委員長』こと、春香が会話に割り込んできた
「少しは、感謝しなさいよ!?」
まるで自分の事のように自慢気だ
「ちょ!?委員長、それは・・・」
『言わないでくれ』と、口止めしておくべきだったか
「このカリは、返してやるさ」
そんなタケルを、素直に誇らしく思う
学校の校庭に、創り出されたパーティー会場
クラスのみんなだけでなく、その家族や友達の姿も見える
『連れて行きたいヤツがいる』
そんな連絡を受けて、開宴を遅らせてまで待っていたみんなにそう言いたかった
(もっとも、一人一人にカリを返せるわけも無く)
最初は戸惑っていた彼女も、真由美たちと笑っている
『全部無くなっちゃうんだよ!?』
彼女が、泣きながら叫んだ言葉
『だったら無かった事にするしかないじゃない・・・!』
『全部、嘘なんだって受け入れるしかないじゃない・・・!』
忘れてしまうことで、全部を置いていこうとした
それが、わたしの罰
それが、わたしの嘘
でも、忘れたくなかった
でも、失くしたくなかった
だって、それだけがわたしの居た証―
「無くなるはずなんてないだろ」
泣きじゃくる彼女を抱きしめながら言った
「お前が現れたあの日から、みんなで過ごしてきた今日まで」
心に刻み付けるように言う
「思い出は一人で創ったんじゃないだろ?」
「お前の思い出は俺たちが預かってやる」
真っ直ぐに彼女を見つめて言う
「だから、無くなったりしねぇよ・・・!」
彼の言葉が、わたしを揺さぶった
「最後の最後まで、持ちきれないくらいの思い出を創れば良いんだ」
そう言って彼女の手を引き足早に移動する
「みんなと一緒にな!」
俺は、残酷なのかもしれない
やがて此処から居なくなるはずの彼女に、辛い想いを強いるのかもしれない
それでも、俺たちが出逢って過ごした今日までの日々は
紛れもない『本当』なのだから
忘れちゃいけないんだ
今夜が最後になるとしても
笑って彼女を見送ってやると俺は決めたんだから




