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トラブルメイカー -To Love Maker-  作者: TAMA-RUN
129/167

#129 ボーイ・ミーツ・ガール 13

休日の昼下がり


冬の割には人通りも多く

行く先々は人であふれかえっていた


どこへ行くでもなく

俺たちは二人並んで街中を歩んでいく


空を見上げれば、分厚い雲の隙間から所々に陽が差し込んでいるのが解る


「雪、降るかな?」

隣で歩いていた彼女も、同じように空を見上げていた


「降ったらどうする?」

「ん・・・・・」

尋ねると何やら考え込みだす


街中には、きらびやかな電装と

それに彩られる木々が立ち並び

この時期定番の『クリスマスソング』が流れ続けている


「雪合戦!」

突然、叫ぶように言う


「あ?」


「雪が降ったら、みんなで雪合戦しようよ!」

両手を握り締めながら瞳を輝かせる


「そりゃ、積もってからだ」

雪が降りそうだとはいえ、こんな街中が雪で積もることはないだろう


「学校の校庭で、真由美ちゃん、蘭ちゃん、月乃ちゃんに、春香ちゃん達も!」

そんな様子を思い浮かべているのか、その表情はころころとよく変わる


「一応、タケルも入れてやれ」

その話題に乗っておく


12月24日―

世間で言う『クリスマスイヴ』


そんな日を、俺はコイツと過ごすことになった


あの夏に、突然意識を失った彼女

彼女が実は『3年前から眠り続けている存在』だと俺たちは知った


本当の彼女は、ベッドの上で今も眠り続けている

ここに居るのは『嘘』の彼女


現実から逃げ出して

自分の想いを満たすために

自分の現実を放棄した


『彼女は此処に居るべきではない』

彼女を知る者が告げた言葉


なら、彼女は『何処へ』行けばいい?


彼女の現実は、辛いものだ

自分の意思で動くこともままならず


時折来る身体の痛みに耐え

近しい者の時間を奪いながら

ただ、部屋の窓から観える景色に想いを馳せるだけ


彼女は、それに耐えきれなかった

だから『嘘』の彼女は、此処へ来た


「ねぇ!」


突然、腕を引っ張られて思考が現実へと返る


「コレ、一緒にやろ!」


彼女の指さしたのは、プリント式のシール機

手軽に出来るアクセサリーだ


「・・・・・」

暫くそれを眺める


「・・・・・ダメ?」

珍しく控えめな態度


「やってやるよ」

「やたっ!」

手を叩いて喜ぶ


機械の中は狭い

ふたり入っただけで動きが取れないほどだ


「撮るよ~!」


程なくしてできたシールを

嬉しそうに眺めている彼女を見てふと思う


「お前は、それで良いのか・・・?」


なぜだろう?

行き様の無い感情が込み上げてくる


「ありがとね」

彼女がポツリとつぶやいた


嬉しそうなのにその表情かおは、どこか寂しそうで

そのまま消えてしまいそうだった


そんな彼女の手をつかんで言ってやる


「それで良いのか?」

その問いに身体をビクンと反応させる彼女


「黙って居なくなるってのか!?」

感情と共に、つかんだ手に力が籠る


「だって・・・」

「全部無くなっちゃうんだよ!?」

いっぱいに溢れる涙が、光にきらめいて舞い散る


「わたしは、此処に居られないんだよ!?」

「本当の場所に帰らなきゃなんだよ!?」

泣き顔を見られまいと、俺の胸元に顔をうずめる


「だったら、最初から無かった事にするしかないじゃない・・・!」

「全部、嘘なんだって受け入れるしかないじゃない・・・!」


そんな彼女を強く抱きしめてやる


「うぁぁぁぁ・・・・」


溢れ出す感情を止められずに、彼女はただ泣きじゃくっていた


『彼女を行かせるのか』

『彼女を引き留めるのか』


どちらを選んでも何かを失うのは判っているのだとしても

俺は、選択しなければならない





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